感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

血液培養のための最適な検査法

2012-09-28 | 感染症

昨日の続き。理想的な血液培養の検査方法はいかなるものか。やや古い文献であるが、古くから推奨される2-3セットの血倍採取や7日間の培養が果たして良いのかどうか、現在よく頻用される自動化システムにおいて検討されている。 培養機器の進歩でほぼ培養日数は5日で十分であるが、抗菌薬使用の増加や真菌感染の増加といった近年の変化でむしろ1-2セットでは菌検出率は以前より減ってきており、基本は2セットではあるが、Sepsis徴候が持続する場合さらに2セットの追加(抗菌薬開始後ではあるが?)を筆者らは勧めている。


まとめ

・1996-97年の8ヶ月で自動機器BACTEC9240を使用し37568の血液培養で評価。
・1970-80年代の手動ブイヨンベースの血液培養研究と比較したとき、血液採取量が1mLあたり増加毎の菌検出の増加率はより少なく、より数の多いセット数が菌検出に必要で、培養はより短い期間が必要だった。
・1970-80年代の研究を元とした現在の血液培養のガイドラインは改訂が必要かもしれない。


病歴の参照
・コアグラーゼ陰性ブドウ球菌は1645血液培養から検出、うち482(30%)が病原菌とされた(病歴などから)
・ビリダンス連鎖球菌は130血液培養から検出、87(70%)が病原菌とされた

血液量と感染菌検出の関係
・培養血液量の増加につれて菌の検出も増加
・しかし、培養された血液のmL当たりの菌検出割合の差は 、Ilstrupらの1983年報告(20 mLと30 mLの血液培養からの収率は、血液10mLより、それぞれ、38%および62%以上大)より少なかった。本研究では、20 mLと30 mLの血液からの収率は、血液10mLよりそれぞれ29.8%、47.2%以上大。40 mL血液培養と30 mL血液培養と比較した場合は収量の増加はそれほどでもなかった (7.2%増)
・感染性心内膜炎患者については、培養血液量に関連する菌検出の割合の差はそれほど顕著でない。


血液培養セット数と感染菌検出の関係
・2セット以上で、菌検出は増加
・1975年にWashingtonは80例の菌血症例で複数セットの血液検体からの累積収量を報告し、80%が1セットの培養で、88%が2セットの培養で、99%が3セットの血液培養で検出された。1975-77年のWeinsteinらの研究でこちらは心内膜炎例を含有したため、2セットの血液培養で菌血症の> 99%が検出されたというものであった。これらの2つの研究で、24時間にわたって2-3セットの血液培養が広く勧められることとなる元となった。
・本研究では、感染性心内膜炎のない患者において、1セット目の血液培養で1 63の血流感染症のうち106(65.1%)で検出され、2セットで131(80.4%)が検出され、3セットで156(95.7%)が検出されたことが観察された。本研究では細菌菌血症と真菌血症の両方が含まれていたという点で、Washington やWeinsteinらによる研究とは異なっていた。


感染菌検出のための培養時間
・興味深いのは、すべての肺炎球菌分離株は24時間以内に回収された、すべてのエンテロコッカス属種の分離株は、96時間以内に回復した。すべての病原体は、2クリプトコックス•ネオフォルマンス株と1Candida切り分け、除いて6日以内に回収された
・感染性心内膜炎のない患者における血流感染症のすべてのエピソードは、6日(⩽144時間)以内に診断された、0.5%(120⩽h)のみが5日以内に検出されなかった。感染性心内膜炎患者における血流感染症のすべてのエピソードは5日(⩽120時間)以内に診断
・これらの所見は、手動ブイヨンベースの培養システムのときには推奨培養期間の7日間とは対照的である


血液培養システム
・以前のマニュアルブイヨンベースのシステムと比べてBACTEC9240システムで使用される培地は、より高感度であり病原体がより少ない血液量で検出される可能性がある。
・しかし本研究で反対のことを観察しているという事実は、いくつかの要因によって説明されるかもしれない。真菌血症などの場合より多くの血液培養が必要なことがある、1970年代と比べると今は広域スペクトラム抗菌薬とくにβラクタム系薬がより容易に利用可能で頻繁に菌血症疑い患者へEmpiricに投与されている、血倍分離菌の時代的な傾向の相違がある。
・以上からは特に感染性心内膜炎のない患者では、血流病原体検出率を増すため、それ以上の連続した血倍が必要であるかもしれない。


筆者らの推奨

BACTEC9240システム使用時、我々は成人患者の血流感染症の検出のために、次の方法をお勧めする:
・静脈穿刺1回当たり血液20mLを採取、好気性と嫌気性用培養ボトルへ均等に分配(すなわち1セットの血液培養)。
・2セットの20-mL血液サンプルが24時間の間に得られるべき。各々20mLの血液は、異なる静脈穿刺から得られるべき。
・敗血症の徴候や症状が持続する場合には、2セットの追加の20mLの血液が残りの24時間かけて別の間隔で得られるべき 。
・血液培養ボトルは、5日間培養とする


参考文献:

Clin Infect Dis. 2004 Jun 15;38(12):1724-30. 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。