感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

リウマチ性多発筋痛症の治療が難渋したらどうするか – その5

2015-05-25 | 免疫

前回の続きで、いよいよステロイド治療のみでは難渋するPMRの治療についてです。グルココルチコイド(GC)が順調に減らせて最初の再燃時では再度GC増量でよいと思うのですが、GCが順調に減らせないときや、何度もGC漸減後に再燃する場合が、悩ましいと思います。ここでMTXや生物学的製剤なども考慮されると思いますが、難治例で最も有望なのは抗インターロイキン6受容体薬治療(トシリズマブ)のようです。日本では保険適応がないこと、高額なことなど問題もありますね。

 

PMR再燃/再発時治療と、GC抵抗性例への治療

 

BSR and BHPR のPMR診療ガイドラインでは、PMR再燃時には、その以前の高用量プレドニゾロンへ増量する。また単回筋注メチルプレドニゾロン(depomedrone)120mg注を用いることもできる。 さらに2回の再発後(MTXなど)DMARD療法の導入を検討、としている。 [Rheumatology (Oxford). 2010 Jan;49(1):186-90. ]

 

・代替的なGC節約薬は、深刻なGC関連副作用をしめしたPMR患者、及び/又は疾患再発に対し長期GC療法を必要とする患者において考慮される。

 

・ GC抵抗性を有する患者のための代替治療法は未だ確立されていない。

・GC抵抗のPMR患者の管理のためのガイドラインが存在しない

・不応性または再発性疾患の管理に対処している研究はない。

 

・MoriらはGC抵抗性例(定義は、初期GC療法(プレドニゾロン15mg/日)に不十分な応答者、または初期療法に反応したが維持用量5mg/日へ漸減時、 または維持療法の最初の6カ月以内に再燃した者)へ、追加のメトトレキサート(MTX、5例)、サラゾスルファピリジン(1例)、およびトシリズマブ(TCZ、3例)の使用は、GC-耐性患者のために有効であったことを示した。  しかし 13から39週は寛解の達成のために必要であった。 

・またMoriらはさらに医学文献の検索にて、PMR患者がTCZ単独で、またはGCとの組み合わせでTCZ治療した13例を同定した(5例が純粋なPMRで8例はGCA関連PMR) うち6例がGC抵抗例でTCZ治療により寛解となった。[Clin Rheumatol. 2014 May 8.]

 

・臨床診療では、 頻繁に再発した患者のサブセットで その結果 GCを漸減することができない、またはGC毒性を有する患者で、MTXを考慮することができる[Clin Exp Rheumatol. 2010 Sep-Oct;28(5 Suppl 61):S172-7.]

・GC温存剤が試験のうち、少なくとも10mg /週の用量で経口または筋注MTXは新規発症PMRに有用であると思われる。 しかし、再発症例 または10mg/日以上の長期プレドニゾン用量で治療した例では、より高いMTX投与量が必要かもしれない。

 

・TNF-α阻害剤は新規発症のPMR患者においては有効性は非常に限られているのとは対照的に、TNF-α阻害薬は、再発性疾患を有する患者の治療に役割を有するかもしれない。

・この点では、2つのオープンラベル研究(以下)では、インフリキシマブまたはエタネルセプトでそのTNF-α阻害がPMR再発、長年の患者におけるグルココルチコイドの要件を低減するのに有効であったことが示されている。TNF阻害剤は、グルココルチコステロイド治療に抵抗性である患者の治療におけるグルココルチコステロイド節約効果を有していた。

・Catanosoらは7.5〜10 mg /日以下にPSL投与量を削減できず、GC関連の副作用を経験したPMR患者での研究で、エタネルセプトの注射25 mgを週2回、24週間、投与した。9ヶ月の試験期間の終了時に疾患再発の経験なく、プレドニゾン1日投与量中央値を削減できた。エタネルセプトはPMR再発例で、安全で有用なGC節約薬であり得ることを示唆している。[Arthritis Rheum. 2007 Dec 15;57(8):1514-9.

・Salvaraniらは、7.5-12.5 mg/日以下にPSL投与量を削減できず、複数の脊椎骨折を経験していたPMR再発の4名の患者のパイロット研究で、インフリキシマブ3 mg/ kgの週0、2、6週で投与した。2名の患者は最初の注入2週間後の臨床的寛解を伴うインフリキシマブに対する完全な反応を示した。ESRおよびIL-6値は正常であった。彼らはPSLを一時中止することができた。[J Rheumatol. 2003 Apr;30(4):760-3.

 

・Aikawaらの99例のPMRのための抗TNF療法の報告と文献レビューした。PubMedで1994-2010年のTNF阻害薬治療されたPMR例の英語論文を検索し、IFXの3研究とETNの5研究を得た。応答までの時間は2‐8週間で、抗TNF治療後GC量減量はすべての研究で観察された。GCを使用しているまたは未使用のPMR患者における抗TNF療法へ良好な臨床的そして検査応答を示した。[Clin Rheumatol. 2012 Mar;31(3):575-9. ]

 

・いくつかの研究は、GC療法中の血清IL-6の持続的に高いレベルは、PMRの再燃と活動の反復のリスク増加とだけでなく、増加プレドニゾロン投与の必要性を伴う長引くコースと、大幅に関連付けられている、ことを示した

・AshrafらはGCA関連症状の非存在下での大動脈炎で生命危機的なPMR症例を報告した。GC治療に応答しなかった耐性PMRでTCZ治療と上行大動脈再建手術で救命処置した。[BMJ Case Rep. 2013 Jun 18;2013.]

 

 

次回からは、巨細胞性動脈炎の治療のまとめ です。

 

 

今回のPMR治療シリーズの参考文献

 

Curr Rheumatol Rep. 2015 Feb;17(2):480.

Ther Adv Musculoskelet Dis. 2014 Feb;6(1):8-19.

Rheumatol Int. 2014 Aug 23.

Clin Rheumatol. 2014 May 8.

Arch Intern Med. 2009 Nov 9;169(20):1839-50.

Rheumatology (Oxford). 2010 Jan;49(1):186-90.

Lancet. 2008 Jul 19;372(9634):234-45.

Lancet. 2013 Jan 5;381(9860):63-72.

Clin Exp Rheumatol. 2010 Sep-Oct;28(5 Suppl 61):S172-7.

J Am Acad Nurse Pract. 2012 May;24(5):277-85.

 


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