感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

リウマチ性多発筋痛症の治療が難渋したらどうするか – その4

2015-05-18 | 免疫

前回の続き。今回はPMRの再燃とリスク因子、ステロイド抵抗性についてです。とくにプレドニゾロン減量速度についてはなるべく早く減らしたいという気持ちはありますが、その加速は再燃リスクが増えるため、加減が難しい所ですね

 

再燃とリスク因子について

 

・単発性PMR患者ではプレドニゾンPSLへの迅速反応はコルチコステロイド(GC)療法の開始後最初の1週間以内に達成され、一般的に48〜72時間以内に達成される。 しかしPMRにおける再燃は一般的でほとんどの患者では長期GC療法を必要とする。

・PMR125人の患者の最近のACR/ EULAR前向き研究では、患者の71%で4週目のGC療法に対する完全な反応の定義を満たした[Arthritis Rheum. 2012 Apr;64(4):943-54. ]

・治療の典型的な持続時間は多くの場合1〜2年より長いとされる

・治療の2年以降の継続的な治療の必要性では、別の診断も考慮すべきで専門家評価のための紹介を促すべき。

 

・10〜20mg/dで開始したPSLレジメンについては以下の中止率があることが報告: 2年後に41-50%、3年後に70%、4年後に82%、そして11年後には91%。

・レジメンは10mg /d以下、または12.5mg/d以下で始めたとき、患者の70%がフォローアップの4年後に治療を中止した。 

 

・再燃は、原因不明の上昇したESRまたはCRPというだけではなく、PMRまたはGCAの発症症状の再発である。

・PMR患者の約半数はGC漸減または中止時に疾患活性の再燃を経験する

・イタリアの2つの施設でPMR 94名の連続した未治療患者の前向きフォローアップ研究で平均39ヶ月間再燃/再発について評価された。患者の50.0%はフォロー期間中に1回の再燃/再発、25.5%は2回あった。[Arthritis Rheum. 2005 Feb 15;53(1):33-8.]

・Hutchingsらの新たに診断されたPMR129被験者の前向き研究では、 3週間の標準治療後患者の26%はまだ近位筋痛を報告し、29%はまだ30分の朝のこわばりを持っていた。患者の55%では、3週間のGC療法に対する乏しいまたは部分的応答を示した [ Arthritis Rheum. 2007 Jun 15;57(5):803-9.].。現在GC抵抗性を発症する危険性が最もある患者を予測することは困難である。

・以前のいくつかの研究では、大幅に再燃したまたは長期のGC療法に関連する臨床的または検査の所見はなかったことを報告している[Ann Rheum Dis. 1993 Dec;52(12):847-50.]。

・Gonzálezらは、 10〜20mg/日の初期プレドニゾン投与後、1mg /月未満の漸減率が1mg/月より大きい漸減率よりもより少ない再燃と関連していたことがわかった。 [J Rheumatol. 1999 Jun;26(6):1326-32.

 

・ロチェスター疫学プロジェクトの人口ベースのリソースを使用しPMRのコホートで5年間の追跡をした。再燃はPMR症状の増悪と発生後少なくとも30日でGC用量の調整(>= 5 mg)の発生として定義された。より高用量の初期GC量とより速いCS漸減率が、その後の再燃の有意な予測因子であった。初期GC用量の各5 mg /日の増加は再燃リスクの7%の増加と関連していた。再燃危険性は、よりゆっくりの漸減に比べ、中間速度で2倍(HR2.19)、より早い速度で4倍(HR4.27)高かった。〔J Rheumatol. 2005 Jan;32(1):65-73.

 

・2つの研究では、 15mg/dで使用開始のプレドニゾロンは8-10mg/日 の維持用量まで、そして2ヶ月ごとに1mgのその後の減少で治療中止到達 まで 緩やかな漸減が続くとのレジメンを採用。これらの研究ではいずれも、試験期間中の疾患活動性の最適な制御を示した。 [Arthritis Rheum. 2007 Jun 15;57(5):803-9.

・これらの知見は、10mgの安定したプレドニゾン1日用量は、最初の寛解後に達成された後、さらに、投与量の減少を1mg /月未満であるべきこと、を示す (例えば、1 mgを2ヶ月ごとに)。

 

・Hernández-RodríguezらはPMR治療の英語記事を検索し30の研究(13件のランダム化試験と17の観察研究)を分析した。PMR定義基準、治療プロトコル、およびアウトカム指標は試験の間で広く異なっていた。10mg/dより多いPSL開始用量はより低用量よりもより少ない再燃と短い治療期間に関連していた。15mg/ dかそれ以下のPSL開始用量はより多い開始用量よりもより低い累積GC投与量と関連。15 mg/ dより多いPSL開始用量はより多くGC関連有害作用と関連していた。 より遅いPSL用量漸減(<1mg/月)はより速い漸減より 少ない再燃とより頻繁なGC治療の中止に関連していた。 経口または筋注MTXの最初の追加は10mg /週またはそれ以上の用量で有効性を提供した。インフリキシマブは初期同時治療として有効ではなかった。[Arch Intern Med. 2009 Nov 9;169(20):1839-50.]。

 

GC抵抗性の定義も定まっていないが、Moriらは : 初期GCレジメン(PSL15mg/d)にあまり反応しない人たち、または最初のレジメンに反応していたが、5mg/維持用量に漸減時か、維持療法の最初の6カ月以内の日のGC再燃を経験した人たち。 と定義 [Clin Rheumatol. 2014 May 8.]

・上記にてMoriらはGC-耐性PMRの治療結果を評価した、23人の患者のうち、9人がGC耐性例であることが判明し、PMR活動性スコアとそのコンポーネント、特に上肢上昇能力(EUL)のベースライン値は、GCの反応者と比較してGC-抵抗性患者で有意に高かった。

・いくつかの治療前のパラメータは、GC抵抗性の発症のリスク因子として示唆されている。

 再発は女性においてより頻繁に発生し[Ann N Y Acad Sci. 2006 Jun;1069:315-21.]、女性および加齢はより長いGC療法を必要とする危険因子であると報告された [J Rheumatol. 1999 Sep;26(9):1945-52.]。さらにベースライン時CRP及びESRなどのような炎症パラメータレベルの増加は、GC療法の延長と再燃/再発の危険因子として報告されている [Rheumatol Int. 2013 Jun;33(6):1475-80.]。

・多変量解析を使用して、Cimminoらは最近のPMR患者は12.5 mg /日のPSLの初期投与量で治療した場合のGCに良好な反応を予測する唯一の要因は、体重が軽量であることを示した(反応者67.4kg 対 非反応者78.5kg)  [BMC Musculoskelet Disord. 2011 May 14;12(1):94.]。

・前向きコホート研究では、Binardらは、病気の再燃の診断が、PMR-AS値≥9.35 と、2回の医師訪問の間のそれらの変化 ≥6.6、に強く関連付けられている、ことを示した [Arthritis Rheum. 2008 Feb 15;59(2):263-9.]。PMRの活動性を監視し、個別の患者のための臨床的および治療的決定を行う際に、このスコアリングシステムの有用性を示した。

 

・いくつかの研究は、GC療法中の血清IL-6の持続的に高いレベルは、PMRの再燃と活動の反復のリスク増加とだけでなく、必要プレドニゾロン投与増加を伴う長引く治療期間と、大幅に関連付けられていることを示した。

・持続的に高いCRPおよびIL-6レベルが有意に再燃/再発のリスク増加と関連した。具体的には、治療の最初の年の間にIL-6の持続的に高いレベルを有する患者は、最も高い相対リスクを有していた。[Arthritis Rheum. 2005 Feb 15;53(1):33-8.]

・未治療および治療PMR患者で少なくとも24ヶ月のフォローアップ期間中に、臨床転帰とその実現可能性のある血清可溶性IL-6受容体との関係を評価した。再発数とベースライン時および治療の1,3、および12ヶ月後のsIL-6R濃度の間で有意な相関関係が認められた。高いsIL-6Rレベルは再発の10.1倍に増加したリスクをもたらした。 [Arthritis Rheum. 2008 Aug 15;59(8):1147-54.]。

 

・陽電子放射断層撮影法(PET)によって無症候性大血管の血管炎を有することが示されていたGC耐性PMR患者のレター報告がある。 GC抵抗性疾患を持つPMR患者の3分の1はPETでsubclinicalに大血管の血管炎をベースとしていることが示された[Rheumatology (Oxford). 2008 Jun;47(6):926-7. 

・いくつかの前向き研究は、再評価したPMRの患者において最終的な診断は患者の2-30%の間は関節リウマチRAを持つものとして、後日診断されている[Scand J Rheumatol. 2011 Jan;40(1):57-63. ]

・フォローアップの平均7.8年にわたり、コントロール群の19.5%と比較して、PMRは患者の23.2%にて癌を発症した。悪性腫瘍のリスクは診断後最初の6カ月間にPMRの患者で増加した(ハザード比1.69、95%信頼区間1.18-2.42) [Ann Rheum Dis. 2014 Oct;73(10):1769-73.]

・これらからGCに対して臨床反応がないか、または部分的にしかない場合や、炎症のマーカーは持続的に上昇したままのときは、 他の診断を考慮すべきである。

・多発筋痛症状を呈する患者での他の疾患条件を除外する慎重な評価の重要性を強調

 

 

次回につづく。

 


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