感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)の治療について まとめ - その1

2015-05-29 | 免疫

前回まではリウマチ性多発筋痛症の治療に関してまとめましたが、今回からは巨細胞性動脈炎の治療に関してです。以前は側頭動脈炎といわれていたもので、頭蓋内動脈以外の血管病変も知られるようになり、このように呼ばれるようになっています。

最近も高齢の方で、側頭動脈生検で巨細胞の存在と炎症細胞浸潤から、診断に至った例があり治療開始となりました。過去に高齢の方へのGCA例でステロイドが高容量かつ長期化していろいろ感染症を引き起こし、たいへんな経過を経験しましたので、やはりなるべくステロイドは少なめかつ長期化は避けたいところです。GCA治療に関して最近の文献をまとめました。

 

まとめ

 

導入治療:ステロイド

 

・個々のケースは大きく変化し、そのためグルココルチコステロイド(GC)の正確な用量および治療期間は、疾患の症状およびGCの有害な影響の両方を考慮して、個々の患者のニーズに調整する必要がある

・視力喪失は、治療の開始前に発生した場合、ほとんどは改善しない。よってGC治療は、側頭動脈炎の診断が確立されたらすぐに開始すべき

・リウマチ性および動脈性病変の程度、一般的な健康状態、ESRとCRP値、および併存疾患、の評価に基づきGC投与量の選択は疾患の重症度に依存する。

大血管血管炎の管理のためのEULAR勧告[Ann Rheum Dis. 2009 Mar;68(3):318-23.]では、プレドニゾロンの初期投与量は1mg/ kg /日(最大60 mg /日)で初期高用量は1か月維持し、徐々に漸減。 また免疫抑制剤は、大血管の血管炎などの補助療法に使用するために考慮されるべき(level of evidence 1A, strength of recommendation B

巨細胞性動脈炎の管理のためのBSRとBHPRガイドライン [Rheumatology (Oxford). 2010 Aug;49(8):1594-7.] では、GCAの臨床的疑いが発生したときに高用量のGC療法が直ちに開始すべき(C) でGCの推奨開始用量は以下のとおり:

•合併症のないGCA(顎跛行または視覚障害がない): プレドニゾロン40~60 mg/日

•視覚的損失進展または一過性黒内障(複雑性GCA): 経口ステロイド薬の前に静注メチルプレドニゾロン500mg~1gを3日間

•視力喪失の完成 :反対側の眼を保護するために、プレドニゾロン60mg/日

GCの減量は、臨床症状、徴候及び活動性疾患を示唆する臨床検査値異常のない状態でのみ、検討すべき(C

減量レジメン:

•症状や検査値異常が解決されるまで 40~60 mgのプレドニゾロンは継続(少なくとも3〜4週間)

•その後用量は2週間毎に10mg減量、20 mgまで

•その後、2-4週毎に2.5mg減量、10 mgまで

•その後、1-2ヶ月毎に1mg減量、再発しない間

 

・この血管炎では一般的に、初期の用量はプレドニゾロン40-60 mg/日相当の間の量で、単一または分割投与で、3-4週間である。重篤な虚血性合併症のないGCA患者では40 mg /日の初期プレドニゾロン用量で急速な疾患の改善を経験する。重度の虚血症状のいずれか、特に視覚損失、を呈するGCA患者では、より高用量プレドニゾロン60mg/日またはメチルプレドニゾロンパルス療法(1g/日、3日間連続)が使用される。そして続けて 3-4週間はプレドニゾロン60mg/日が通常は推奨される。[J Rheumatol. 2005 Jul;32(7):1186-8.]

 

・徴候や症状が解決し、CRPとESR値は少なくとも50%下落したら、すなわち2〜4週間後に(稀により長くかかるが) プレドニゾロン投与量は漸減を開始することができる。しかし、別の示唆される戦略では、ESRおよびCRPレベルが正常に戻るまで漸減開始を待つこと。

 

・Mazlumzadehらは、小さな無作為化二重盲検比較試験で、 高用量メチルプレドニゾロンパルス静脈内(IV)による治療は治療のより短期間化を誘導するかどうか検討した。メチルプレドニゾロンパルス(15mg/ kg理想体重/日を3日間)または生食が治療開始時に投与され、40mg/dのプレドニゾロン内服が続いた。IV-GC群で10/14、対照群で2/13で、36週目にはプレドニゾロン量は5 mg /日以下になっていた(p=0.003)。IV GC治療群で持続的な寛解がより多くあった。78週での平均プレドニゾロン1日用量はより少なかった(p=0.0004)。経口プレドニゾロン累積投与量の中央値はIV GC群で5636 mg、対照群で7860 mgであった(p= 0.001)。[Arthritis Rheum. 2006 Oct;54(10):3310-8.

・プラセボ対照試験の[28]では、しかし、 3日連続で15mg / kgのメチルプレドニゾロンボーラスと続いて 40 mg/日で開始用量プレドニゾロンは、 プラセボと比較して、 34週にて、大幅にプレドニゾロン5 mg/日未満の投薬量と関連していた。[Arthritis Rheum. 2006 Oct;54(10):3310-8.]

しかしながら、サンプルサイズが小さく(27名)、また累積グルココルチコイドの用量を計算するときに、初期高用量メチルプレドニゾロンを考慮していなかった。このように、初期の高用量グルココルチコイド治療は、意味のあるグルココルチコイド節約効果を持っていないようである。

・Chevaletらは、より大規模の164名で、低用量のメチルプレドニゾロンパルス(240mg i.v.)の付加的な利益につき検討したが、1年後のGC累積投与量は同一であった(p= 0.39)。またCRP正常化の期間、GC抵抗性およびGC関連副作用に有意差は観察されなかった。[J Rheumatol. 2000 Jun;27(6):1484-91.] GCパルス療法は疾患経過を変えず、GC節約効果を達成するために失敗した。しかしメチルプレドニゾロンの独自な240 mg点滴投与は、この用量はおそらくあまりにも小さかった。

・MPパルスは、GCAの複雑性の病態に限定されるべきと思われる。

 

視覚的虚血症状を呈しつつあるGCA患者で不可逆的な視力喪失の発生率を低下させるのにパルスメチルプレドニゾロン療法は、高用量経口プレドニゾロンよりも良くなるかどうかは調査が必要な問題である。我々の経験では、高用量経口プレドニゾロンの有効性は、静脈内パルスコルチコステロイド療法と同等であった [Arthritis Rheum. 1998 Aug;41(8):1497-504.]

 

隔日のグルココルチコステロイドの投与による治療は、グルココルチコステロイドに関連する副作用のリスクを低減することが提案されたが、 しかし毎日の投与よりも、治療失敗の高い割合に関連しており(20%対70%)勧められない。 15mg/ 8時間おきと、45 mg/日と、90 mg/隔日投与の前向き無作為化試験。 この研究では隔日投与群は連日投与に変更することで大部分が動脈炎が制御された。GC副作用は隔日投与群では稀であった。[Ann Intern Med. 1975 May;82(5):613-8.

 

低用量での初期治療(プレドニゾロン10-20 mg /日程度)は遡及的データに基づき、GC関連の有害事象リスクを低減すると提案されている。より高用量GCに対し より低用量GCで治療した患者において視覚的または神経学的合併症をより多く持っていたわけではなかったとしている。[Ann Rheum Dis. 1988 Sep;47(9):733-9.]

しかしながらそれは自信のある結論に到達するには余りにも少数の患者にて試験されている。今後多施設ランダム化比較試験が最小で有効なGC開始量を定義するために編成する必要がある。

 

次回に続く 


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