感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

熱中症について -その2

2015-07-31 | 内科

前回に続きまして熱中症についてです。今回は罹患リスクと、検査、診断について。因子があるから熱中症の診断に活用するということではなく、因子のある人はこの時期より注意すべきでしょうね。CRPやPCTに関する文献もいくつかありました。とくに熱射病ではこれらは上昇するということ、その値の大きさで感染症と区別できるかもしれないこと。熱射病と中枢神経感染症はもっとも重要な鑑別点で、誤診により死亡率は上がるので、注意ですね。

 

 

熱中症罹患リスク

・精神疾患、アルコール依存症などの既存症、最近または慢性のアルコール消費
・薬物使用(例、利尿薬、抗コリン薬、、アルコール、アンフェタミン、エクスタシー)、
・防護服を着ている(例、運動選手でユニフォーム、ウェットスーツ)
・心臓血管疾患、心拍出量を減少させる脱水、高浸透圧濃度、及び薬物
・労作性熱中症の病歴、不十分な熱順化
・発熱性疾患の最近の存在または病歴
・低いフィットネスレベル
・日焼け
・高い湿球黒球温度指標、高湿度

 

検査

 

・肝機能検査ASTおよびALTは、これらは複数の組織からの放出されるものではあるが、熱中症患者における肝機能の臨床的マーカーとして使用されている。

・肝機能検査の上昇は、最初の損傷後1または2日後に見られる。

・電解質異常、すなわち高カルシウム血症、低リン血症、低カリウム血症、および高タンパク血症なども、また見られている。

・高血糖は、より典型的には、古典的熱中症に関連付けられている一方で、低血糖症はまれであるが、労作性熱中症でより特徴的。

 

診断

 

・体温評価 :コア体温を評価するための明確なコンセンサスは、直腸温測定

・口腔、腋窩、皮膚の検知、および鼓膜の検温方法は、すべての直腸温測定に比べて劣ることが示されている

・これら直腸温以外の体温測定の形態は、熱中症での縮小された末梢循環の結果として、誤って低い測定値を与える可能性がある。

・熱中症の各病態の定義や把握はあまり重要でなく、 徴候の重症度の認識のほうが重要

・熱中症のリスクの環境アセスメントは、温度だけでなく湿度などの熱ストレスの正確な評価のための湿球黒球温度指標(WBGT)を含めるべき

・発汗の欠如に基づいて、熱中症診断を除外しない。

・熱射病は、せん妄、発作、または昏睡などの中枢神経系の機能障害および重度の高体温 (コア体温は、典型的ではないが>40℃)によって臨床的に特徴付けられる。

・しかし神経学的変化と37~40℃の間の体温の人において、疾患の疑いの高い関心を維持しなければいけない。

・熱疲労は、疲労、急速な心拍、多量発汗、嘔吐、脱力にて提示することができるが、起立性に帰属しない中枢神経系症状はない。熱疲労のほとんどの症例は、ナトリウムと水の枯渇が混在している。

 

鑑別診断:薬品関連熱、悪性高熱、感染症、内分泌異常、DVTや肺塞栓症、など

 

・熱射病は複数の臓器不全を伴う全身性炎症反応症候群の形態に分類し、多くの所見で敗血症に類似しうる。敗血症と同様に熱射病患者のほとんどが血行動態応答亢進を示す。

・低血圧またはショックが患者の30%までで発症することがある。

 

・高い血清PCTレベルは任意の細菌感染の証明なく、熱射病で観察することがある。PCTは熱射病に有効な死亡予測因子ではなく、病気の重症度の指標である可能性がある。 [Intensive Care Med. 2008 Aug;34(8):1377-83.]

・入院時のプロカルシトニンPCT値は労作性熱射病の同時感染の診断マーカーの予測因子であるかどうか調べた文献では、随伴感染および非感染患者との間のPCTレベルに有意差はなかった(p=0.712)。労作性熱射病の患者で上昇PCTレベルは、より重要な病理学的状態に関連してた。[Emerg Med J. 2012 Feb;29(2):113-7.]

・熱射病と髄膜脳炎は高熱と中枢神経症状を呈し鑑別すべき疾患である、血漿C反応性タンパク質(CRP)レベルによって区別できるのか調べた文献では、平均の入院時の値は、熱射病群では0.21±0.33 mg / dLで髄膜脳炎における12.9±8.4 mg / dL (pAm J Emerg Med. 2013 Aug;31(8):1176-80.]

 

 

次回に続く


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