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当院外科より切除した虫垂の病理診断で住血吸虫症の診断があったため当科へ相談があった。 組織学的に急性炎症細胞浸潤と、貫壁性の壊死、石灰化した住血吸虫卵による血管塞栓が散在性に観察とのこと。 昔は日本でも地域風土的に住血吸虫症があったが、いまは1976年以来新規感染の報告はないという。一部の高齢者で慢性住血吸虫肉芽腫性炎症として病理学的所見として顔を出すということか。
まとめ
・住血吸虫症は、世界中で二番目に普及している寄生虫疾患である
・住血吸虫虫垂炎は米国、欧州、日本などの先進国では非常に稀である。
・1906年に、Burfield は住血吸虫症に関連した虫垂炎の最初のケースを報告
・ナイジェリアでGaliらによって行わ後ろ向き研究では1000例中27例(2.3%)が組織学的に虫垂に住血吸虫卵の存在を実証した
・香港のChanは、住血吸虫症に起因する虫垂炎の0.15%のケースを示した
・Tarada は、虚血性変化は卵塞栓によるもので、それは粘膜免疫低下により、細菌感染につながると提案
・虫垂炎症状は内腔狭窄や腸壁腫脹、慢性住血吸虫肉芽腫性炎症や、線維化によるもの。これは二次的閉塞および急性虫垂炎につながる。
・住血吸虫虫垂炎は病理組織学的診断である
・Badmosらの報告では、外科的切除例の843のうち35例(4.2%)に住血吸虫症が存在、これらの35の陽性例のうち23例(65.7%) は急性虫垂炎と関連し、残りの12例(34.3%) は炎症に関連していなかった。 このように、寄生虫の存在は、常に急性虫垂炎を生じるわけではない。
・Laduらの住血吸虫虫垂炎の症例報告では、住血吸虫症の存在に関係する具体的な症状を示さなかった、虫垂炎の臨床症状を持っていた、虫垂切除後に検査した便や尿では卵を示さなかった
・Zakariaらの10年間にわたり急性虫垂炎診断のため外科的治療を受けた1600名のレトロ研究で虫垂内腔に寄生虫は88例(5.5%)に存在し、内訳は45(51.1%)が蟯虫症、8(9.1%)は住血吸虫症、23(26.1%)が回虫、7(8%)鞭虫症、5(5.7%)が無鉤条虫、だった。住血吸虫症例8例のうち4人(50%)に症候性であった、これらの症状は急性虫垂炎のために古典的ではなかった。そのわけは住血吸虫症のみに起因する低グレードの慢性炎症のため。
・Hedyaらの3年間の急性虫垂炎のために虫垂切除を施行した251人の病理学的データのレトロ研究では、ヒト蟯虫は4例(1.59%)、回虫は2例(0.79%)、住血吸虫卵は3例(1.19%)、寄生アメーバ症2例(0.79%)であった。
・現在,国内で報告される日本住血吸虫は死卵であり,陳旧性像であるが,門脈系血管と関連のある臓器に分布していることが多い.横山らは,生検病理組織標本の検討で,肝12.7%,虫垂9.0%,直腸5.9%,結腸3.9%,胃0.9%の割合で認められていると報告。
・また蓮田らは,剖検で肝組織標本中に日本住血吸虫卵を認めた症例の各部消化管における虫卵数は,回盲部以降の大腸に多く,下部ほど虫卵数が多い傾向にあったと報告している。
参考文献
Int J Surg Case Rep. 2014;5(3):159-60.
Oman Med J. 2013 Mar;28(2):92-6.
J Egypt Soc Parasitol. 2012 Apr;42(1):157-64.
Case Rep Infect Dis. 2012;2012:896820.
World J Gastroenterol. 2009 Apr 7;15(13):1648-9.
日臨外会誌 69(8),2016―2019,2008
まとめ
・住血吸虫症は、世界中で二番目に普及している寄生虫疾患である
・住血吸虫虫垂炎は米国、欧州、日本などの先進国では非常に稀である。
・1906年に、Burfield は住血吸虫症に関連した虫垂炎の最初のケースを報告
・ナイジェリアでGaliらによって行わ後ろ向き研究では1000例中27例(2.3%)が組織学的に虫垂に住血吸虫卵の存在を実証した
・香港のChanは、住血吸虫症に起因する虫垂炎の0.15%のケースを示した
・Tarada は、虚血性変化は卵塞栓によるもので、それは粘膜免疫低下により、細菌感染につながると提案
・虫垂炎症状は内腔狭窄や腸壁腫脹、慢性住血吸虫肉芽腫性炎症や、線維化によるもの。これは二次的閉塞および急性虫垂炎につながる。
・住血吸虫虫垂炎は病理組織学的診断である
・Badmosらの報告では、外科的切除例の843のうち35例(4.2%)に住血吸虫症が存在、これらの35の陽性例のうち23例(65.7%) は急性虫垂炎と関連し、残りの12例(34.3%) は炎症に関連していなかった。 このように、寄生虫の存在は、常に急性虫垂炎を生じるわけではない。
・Laduらの住血吸虫虫垂炎の症例報告では、住血吸虫症の存在に関係する具体的な症状を示さなかった、虫垂炎の臨床症状を持っていた、虫垂切除後に検査した便や尿では卵を示さなかった
・Zakariaらの10年間にわたり急性虫垂炎診断のため外科的治療を受けた1600名のレトロ研究で虫垂内腔に寄生虫は88例(5.5%)に存在し、内訳は45(51.1%)が蟯虫症、8(9.1%)は住血吸虫症、23(26.1%)が回虫、7(8%)鞭虫症、5(5.7%)が無鉤条虫、だった。住血吸虫症例8例のうち4人(50%)に症候性であった、これらの症状は急性虫垂炎のために古典的ではなかった。そのわけは住血吸虫症のみに起因する低グレードの慢性炎症のため。
・Hedyaらの3年間の急性虫垂炎のために虫垂切除を施行した251人の病理学的データのレトロ研究では、ヒト蟯虫は4例(1.59%)、回虫は2例(0.79%)、住血吸虫卵は3例(1.19%)、寄生アメーバ症2例(0.79%)であった。
・現在,国内で報告される日本住血吸虫は死卵であり,陳旧性像であるが,門脈系血管と関連のある臓器に分布していることが多い.横山らは,生検病理組織標本の検討で,肝12.7%,虫垂9.0%,直腸5.9%,結腸3.9%,胃0.9%の割合で認められていると報告。
・また蓮田らは,剖検で肝組織標本中に日本住血吸虫卵を認めた症例の各部消化管における虫卵数は,回盲部以降の大腸に多く,下部ほど虫卵数が多い傾向にあったと報告している。
参考文献
Int J Surg Case Rep. 2014;5(3):159-60.
Oman Med J. 2013 Mar;28(2):92-6.
J Egypt Soc Parasitol. 2012 Apr;42(1):157-64.
Case Rep Infect Dis. 2012;2012:896820.
World J Gastroenterol. 2009 Apr 7;15(13):1648-9.
日臨外会誌 69(8),2016―2019,2008