感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

胆嚢炎で発症した多発血管炎性好酸球性肉芽腫性

2014-03-31 | 免疫
先日、急性胆嚢炎で消化器科に入院している方で、抗生剤不応、手足のしびれ出現、好酸球数が増加していたため当科へ相談があった。以前にブログに書いたように好酸球増多症の鑑別をすすめることにした。2年前に喘息発作を発症し診断されており、診察では右足や左上肢など複数個所で筋力低下あり。多発血管炎性好酸球性肉芽腫性(EGPA)(以前、Churg-Strauss症候群と呼ばれた)が疑われた。心臓エコーや血清トロポニン上昇もありステロイド治療を急いで導入した。この疾患と胆嚢病変の関連を調べたら症例報告はあるが大変珍しいようだ。


まとめ
・チャーグ•ストラウス症候群(CSA)は抗好中球抗体(ANCA)関連全身性血管炎(AASVs)の中で分類されている
・しかし大規模コホートの2つの最近の研究では、ANCAs(P-ANCAs/MPO-ANCAs)は患者のわずか38%に存在
・ANCA陰性例は心臓と肺の病変を、ANCA陽性例は壊死性糸球体腎炎、単神経炎や紫斑などの小血管血管炎に関連する症状を持っている可能性が高い。
・ANCA陽性とANCA陰性の患者は、2つの異なる臨床サブタイプとして認識される。異なる遺伝的背景を持っているかもしれない
・鼻炎など他のアレルギー症状や、末梢組織好酸球増加に伴い、成人発症の喘息の存在はこの疾患に固有のもの
・通常CSAにて3つの異なる相が認識できる。気管支喘息やアトピー性アレルギー鼻炎などが数年時には数ヶ月先行しうる、そして好酸球性肺炎や胃腸炎などの好酸球浸潤性疾患が発症し、その後、血管炎相に続く 。末梢神経系の関与はこの血管炎相で最も重要な兆候。
・病理学的確認は、壊死性血管炎だけでなく、壊死および優勢な血管外好酸球と関連した血管外肉芽腫の存在 に基づく。
・疾患の組織病理は罹患臓器やフェーズによりさまざま、好酸球組織浸潤に関連したものと、壊死性血管炎に関連したもの。

・1990年に、米国リウマチ学会(ACR)は、CSAを分類するための6つの基準を提案 [Arthritis Rheum 1990; 33: 1094-1100]、
・アレルギー性肉芽腫性血管炎(AGA)の診断基準 厚生労働省、難治性血管炎研究班、2002年[Allergol Int 2007; 56: 87-96]。
・EULARの中小血管炎治療の勧告2008年 [Ann Rheum Dis 2008 Apr 15]
・好酸球や肉芽腫を伴う小血管壊死性血管炎の病理組織学的検証は、確定診断のために不可欠


・CSAで急性腹症の兆候は珍しいが、結果は致命的である可能性があり診断上重要である。胃腸症状は下痢、下血と腹痛、まれなケースとして腸浸潤、潰瘍および穿孔例、他に肝膿瘍と関連した無石性胆嚢炎、皮質壊死を伴う肝梗塞、十二指腸炎が報告。
・CSAの急性胆嚢炎は、結石性や無石性のいずれかとして文献では稀なレポートを通じて報告されてきた。Francescuttiらの症例報告では、摘出胆嚢標本で、胆石がない状態で 胆嚢壁の好酸球浸潤と細動脈周囲の肉芽腫形成を示した。
・Tatsukawaらの症例報告では、胆嚢摘出術の後、病理組織学的検査では、胆嚢壁の侵入の形跡と細動脈の肉芽腫形成を伴う、好酸球を主成分とした著明な炎症細胞浸潤 を明らかにした

・急性無石性胆嚢炎を呈したCSAの事例報告では胆嚢炎後の免疫抑制療法の迅速な管理にも関わらず、生命危機的な消化管合併症を起こし複数の外科的介入を必要とした。

・そもそも無石性胆嚢炎は多因子性病因を持ち胆嚢の急性壊死•炎症性疾患である。 それは、急性胆嚢炎の全症例の約10%を占めている。これは強く臨床状態、最も一般的に糖尿病、悪性疾患、うっ血性心不全、およびショックなど様々な病態に関連付けられている。

・喘息患者において、知覚異常や無石性胆嚢炎などの非呼吸性症状発生を見た場合は CSSの検討も医師に求められる。(喘息治療にステロイドがすでに使用されている場合は好酸球増多症はマスクされる可能性がある)



文献
Best Pract Res Clin Rheumatol. 2009 Jun;23(3):355-66.
J Clin Pathol. 2010 Sep;63(9):848-50.
Can J Surg. 2008 Dec;51(6):E129-30.
Ann Allergy Asthma Immunol. 2007 Jun;98(6):595-7.
Intern Med. 2003 Sep;42(9):893-6.
Curr Rheumatol Rep. 2011 Dec;13(6):489-95.


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