感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

臨床ガイドラインと栄養療法:患者ケアのための、より良い理解とより優れた適用 2

2012-12-12 | 内科
前回の続き。今回はアルギニンなどのpharmaconutrient、ω-3魚油などの抗酸化剤について、PN補充EN 対 EN単独の優劣について、など大変興味のあるところだが、それぞれ結論はまだ難しいようだ。



薬理学的栄養剤の使用

・ガイドラインでわずか2つのグレードA勧告のうちの一つが、外科ICUのためアルギニン、グルタミン、ω-3脂肪酸、抗酸化剤などを補充した免疫調節経腸製剤が主要な待機手術に使用されるべき
・ICU集団におけるアルギニン含有栄養の使用は論争の的である。メタ分析を含めいくつかの報告でアルギニン投与群は標準群と比較して有意に高い死亡率を示した。 2群間患者背景でAPACHEIIスコアに有意差があったとこの研究は批判されたが、入院時APACHE IIスコアは両群に差がないのでこの批判は誤りである。
・Galbanらのすべて敗血症の患者群での研究では、アルギニン含有栄養投与群はコントロール群よりも有意に低い死亡率をもっていた。直接感染に関連した死亡でもアルギニン群で有意に少なかった。 この研究へのHeylandらの批判は、死亡率の効果はわずかAPACHE IIスコアが10~15を持つ患者にのみであり高いスコアの患者ではこの栄養の効果は意味を失っているというもの。
・カナダの臨床実践ガイドラインのアルギニン含有剤使用のメタアナリシス分析で、ICU滞在期間、入院期間、機械換気期間は有意に減少したことがわかった。
・これら論争から本ガイドラインでは、内科ICUにおけるアルギニン含有栄養はグレードB勧告、外科ICUでの使用はグレードA勧告とした (重度敗血症患者での使用は慎重に行うべきであるという規定を追加した)


魚油使用の安全性

・ガイドラインでもう一つのグレードA勧告は、呼吸不全患者における魚油の使用、である
・急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や重症急性肺損傷患者は、抗炎症性脂質プロファイル(例えば、ω-3魚油、borage油)と抗酸化物質、によって特徴付けられる経腸栄養剤が投与されるべき
・しかしこの勧告の公表数ヶ月前に臨床ネットワーク(ARDSNet)は魚油の安全性への懸念からNHLBIを通じて研究助成金打ち切りの相談をした。2009年夏、このグループによるEDEN-オメガ研究の一部が無益な理由で打ち切られた。魚油/borage油のサプリメントを受けた群は高い死亡率を持っていた。 調査員の解釈では、ボーラス注入が簡単に異化を受け破壊をもたらしたこと、大量ボーラス投与が脂肪吸収不良につながりこれが有効性の欠如に関連した、などの可能性を指摘。


補充経静脈栄養PNの使用

・最も論争の分野の一つはすでにENを受けている患者における補足PNの使用に関してである。
・ガイドラインのEN投与の項で、ENの臨床的利点を達成するため最初の週の間に目標カロリーの50%~65%以上を達成するよう勧告(グレードC)。単独ENの7~10日後、目標カロリー条件を満たすことができなかった場合にのみ、さらに補足的PNの追加を勧告 (グレードE)。 7~10日経つ前のPN追加は、転帰を改善せず患者へのリスクを高める可能性がある (グレードC)。 
・この勧告は、PN補充EN対 単独ENの5つのPRCTsと、Heylandらの2003年のメタ分析に基づく。 メタ分析ではPN補充群で死亡率がより大きく、有意にコストが増した。 熱傷患者研究では、PN補充群で死亡率が有意に増加した。
・欧州の栄養ガイドライン(ESPEN)では、累積エネルギー赤字が入院期間、感染症、全体的な合併症、および機械的人工換気の期間増加と相関するとするVilletらによる研究を踏まえ、単独ENにて24時間までに目標エネルギーの80%以上を満たさない場合はPN補充を行うことを推奨している。
・Glue Grantの大規模多施設試験で重症外傷患者でのPN使用の評価をした。PN使用は感染のリスク増加と関連していた。EN単独群と比較して死亡率は高かった。
・四つの大規模な国際的な研究グループが設計されており、PN補充EN 対 EN単独の無作為化ふるい分け評価研究が開始されている

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