感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

骨粗しょう症と腹痛: iliocostal syndrome

2015-03-25 | 内科

最近の外来で、急な体幹部痛(体幹の前後とも広範囲に)あり後に下位胸椎の圧迫骨折発生であることがわかった例がありました。最初はのちに原因と分かった胸椎の局所痛の訴えなく2回のXP検査でその変化がわかりました。別の症例は、極度の背側弯を伴う骨粗しょう症の方で急な左腹部痛の訴えで受診されました。疼痛は左腸骨稜上端あたりにあります。幸い以下に紹介しますClinical pearlsの文献を読んでいたのでiliocostal syndromeが浮かびました。当然、肋骨と骨盤の間は狭く1横指くらいしかありません。この方も背部痛の訴えはありませんでした。前者は急性脊椎骨折に伴うもの、後者は多発脊椎骨折から背側弯により最下位肋骨と骨盤がぶつかることによる症状ですが、いずれも背部痛以外の症状を示し診断候補としてまず他の疾患を考えてしまい、なかなか骨粗鬆症関連症状であると想起しにくいと思われます。

 

 

まとめ

 

・サンプル症例: 72歳女性の右上腹部前方の腹痛例、疼痛は1日中持続性で時間が進むにつれ悪化、“深い灼熱痛”、横臥位になるとよりまし。外傷の既往なし。背部痛はない。病歴は骨粗鬆症あり。

 

・骨粗鬆症患者では(しばしば潜在性)脊椎圧迫骨折の累積効果は、多くの場合、 最も低い前部肋骨(第10肋骨で、一般的には腋窩中線で、その最も下の点)と腸骨稜のトップの間の距離の狭小化につながる。

・この狭小化は座ったり立った位置で患者にて容易に身体診察検査で指によって距離(横指で)を測定することができる。

・無症候性患者においてであっても この測定は無症状の圧迫骨折の存在診断に役立つ手掛かりである。 2 横指以下の距離は骨折確率を増加させ、そして4 横指でそれらが事実上除外される (陰性尤度比0.1)。

 

・上記症例では、距離が1 横指以下で、圧痛は第10肋骨の先端に局在するとき iliocostal症候群の臨床診断(別名“ribs on pelvis syndrome”)は、自信を持って確立できる。

・治療は、姿勢の訓練(骨盤と肋骨との接触を回避するため)および他の物理療法で、これらが有効ではない場合には、麻酔薬およびコルチコステロイドの局所注射は、時々有益であり得る。

 

・Simpson らは4年前から原因不明の慢性の右下腹部痛のある88歳女性例を報告。疼痛は横臥位で悪化し、まっすぐな立位や座位で軽減する。食事や排便と関連なし。XPではL4-5、L2-3の著しい椎間板変性症あり。4年間、PPIや鎮痛剤などの処方で経過した。筆者らのケア下に入った後、触診にて圧痛のない胸椎と腰椎の後弯に留意した。診察からは主に右側に彼女の骨盤に衝突する胸郭という点でribs-against-pelvis(RAP)症候群が示唆された。

・日常活動にてより多くの衝突を生産するので、痛みは一日の後半では、通常より悪い。

・疼痛について、姿勢を改善するための理学療法での作業は、いくつか救済を示した。

 

・背部と腹部の痛みの類似の症候群は、骨盤の上後方に第12肋骨の接点において骨粗鬆症患者に発症するかもしれない 。

 

・背部痛を訴える例は、検出された臨床的な脊椎骨折においてでは、すべての脊椎骨折の1/3未満を占めるにすぎない。残りは潜在性である。しかし顕在性もしくは潜在性であっても脊椎骨折は重要な健康への影響を示し、身体診察で潜在性骨折を検出することは患者ケア向上において課題の一つである。

・身長の減少または背側弯の著しい亢進は脊椎骨折の存在を示唆している

 

・Greenらはどの身体所見的な兆候が、骨密度測定への早期紹介のために、または潜在性脊椎骨折のスクリーニングツールとして有用であるかを調べた。単一の所見で骨粗しょう症や脊椎骨折を診断したり除外したりはできなかったが、大きな陽性尤度比を示したのは、体重<50kg(LR 7.3)、歯の数<20(3.4)、肋骨·骨盤距離が2横指幅未満(3.8)、後頭部と壁の距離>0㎝(4.6)、背部隆起(3.0)。

 

 

 

参考文献

Mayo Clin Proc. 2013 Jan;88(1):106-12.

Am J Med. 2003 Aug 15;115(3):233-6.

JAMA. 2004 Dec 15;292(23):2890-900.

J Am Geriatr Soc. 2004 Jun;52(6):1039.

 

 


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