感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

臨床ガイドラインと栄養療法:患者ケアのための、より良い理解とより優れた適用

2012-12-11 | 内科
当院栄養サポートチーム:NSTから院内勉強会として“感染症と栄養”についてお題をいただいた。これだと漠然として広いので、おもに敗血症と栄養について考察すすめている。 急性期疾患の栄養ガイドラインとして米国の経静脈経腸栄養ガイドラインASPENが有名であるが、あと欧州とカナダのものもあり3大ガイドラインといわれているらしい。ASPENは2009年が最新であるが、まだまだ研究途上のものが多く、各項目のエビデンスレベルも今ひとつなのが現状。 この論文はこのASPENガイドラインの問題点をレビューしたものである。  経管栄養後の胃残量が多いと良くないと思っていたが逆だったんですね。


まとめ

病的肥満重症患者における減カロリー食の寛容性

・ガイドラインでは、危篤状態の肥満患者で、経腸栄養(EN)と減カロリー食を考慮すべきである、ことを推奨している。
・BMI]>30の肥満のすべてのクラスは、経腸栄養療法の目標の60%~70%を提供すること。重量ベースの方程式では実際体重(ABW)/ Dにて11~14 kcal / kg程度、 または理想体重(IBW)/ dにて22~25 kcal / kg程度
・間接熱量測定使用は、カロリー要求のより正確な測定を提供し、測定された安静時エネルギー消費量の60%~70%で摂食目標を設定するのが適しているだろう。
・蛋白質は、BMI 30-40の肥満者のため、2.0gタンパク質/kg IBW/ dで、BMI>40の肥満者に>2.6gタンパク質/kg IBW/dが、提供されるべき
・これらの勧告の強さは歴史的なコントロールとレトロスペクティブなデータに基づいて、Dグレード
・窒素バランスを達成するために、上記のような十分なタンパク質量が必要。BMI>50の超肥満者へのタンパク質量を定義するデータはまだない
・外科的または内科ICUで危篤状態の肥満患者は痩せた対照群と比較すると、肥満が、感染、ICUと入院期間、多臓器不全、および機械換気期間の増加に関連付けられている。
・古くからの生理学的研究でできる限り十分なタンパク質が提供されれば、カロリー制限は脂肪量を減少させ、除脂肪体重は維持できることを示唆。 Elwynの研究で、エネルギー摂取量を60%未満へ減らし、タンパク質摂取量は2.2g/kg /日に増やすと中間または正の窒素バランスをもたらした。 Hill と Church研究で総カロリー摂取量は20kcal/kg /日と低減できる限り低くして、体脂肪量減少させることができた。
・著者らは、病的肥満の患者ケアの悪影響から、十分なタンパク質量が提供されている限り、病的肥満重症患者の減カロリー食のガイドライン勧告は適切であるとを解釈した。


経管栄養ENの許容度に関して胃残留ボリューム用プロトコルの効果

・ガイドラインのトレランス(不耐性)の項で、腸運動性のための確認は経腸栄養の開始前に必要ではないことが推奨。しかし経腸栄養が開始されれば患者の腸管認容性を監視する必要がある。
・ENの不適切な停止を回避(長期にわたる腸閉塞を回避)するため、胃残留量500mL未満で不耐性の他の徴候のない人に対してのEN中止を回避することを勧めている。
・この胃残存量カットオフ値500 mLに上昇が推奨されると大いに論争の的になった。
・この勧告は3つのレベル2試験(小規模ランダム化)と1つのレベル1試験(大規模な無作為化)に基づいている
・二つの前向き試験があり、Powellらの研究で胃残量チェックなし群とルーチンチェック群を比較し、誤嚥性肺炎発生率は2群間で有意差はなく、チューブ詰まりはチェックなし群で10倍減少した。 Reignierらの研究でチェックなし群で不耐性頻度は低く注入した経腸栄養量は大容量で、ルーチンチェック群と比較して嘔吐や人工呼吸器関連肺炎の発生率に差はなかった。
・EN投与容量を増加させることは、むしろしばしば肺炎の発生率を減少させることに注目する。
・Meissnerらの研究で、麻薬拮抗薬のナロキソン使用した経腸栄養群をコントロール群と比較している。大幅に注入EN量を増やすことに成功した。その結果、肺炎の発生率が55%から36%へと有意に低下した。
・Taylorらによる研究で、胃内残存量の増加を伴う積極的なプロトコルの使用は、より保守的なプロトコルと比較して注入された目標カロリーの割合を2倍にすることに成功し、その結果、肺炎の発生率はそれぞれ、63%から44%に減少した

次回ブログに続く)


参考
Crit Care Clin. 2010 Jul;26(3):451-66.


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