現在、某医学雑誌のリウマチ特集号のためサルコイドーシスについて執筆中。サルコイドーシスの肺外病変とりわけ骨関節系の病変はあまり知られていないが、結構多いのかも知れない。指の腫れや痛みで当科外来来られる方も多いので、鑑別の一つとしてサルコイド指炎についてまとめてみました。
(→ サルコイドーシスのリウマチ性徴候 も)
まとめ
・サルコイド骨病変はPerthes(1920)とJungling(1928)によって、"結核性骨炎tuberculoid osteitis "と最初に記述された。
・サルコイド骨病変はサルコイドーシスを持つすべての患者のわずか1%~15%で発生し、通常は無症候性である。半数近くは疼痛やこわばりを訴える。 指炎sarcoid dactylitisは、サルコイドーシス全患者の0.2%で発生することが報告。
・手や足の小管骨が選択的に関与している(症例の90%)。 頭蓋骨、肋骨、鼻の骨、長骨または他の骨が影響を受ける可能性もある。
・指炎患者のほとんどは、いくつかの臓器の関与に活動的な全身性サルコイドーシス(慢性肺病変または多臓器性)を持ち、慢性的な皮膚病変、特にループス凍瘡lupus pernio伴っている。
・指炎は脊椎関節症等でみられるソーセージ様指に似ている。 影響を受けた指を取り囲む軟部組織の腫脹、紅斑性皮膚、または圧痛によって特徴づけられる。 中手指節MPや遠位指節DIP関節は保持されている。
・重症例の場合には進行性の骨や隣接する関節の変形が発生する可能性があるものの、骨サルコイドーシスのアウトカムは通常は良好。
・指炎を有する患者はまた、異栄養症などの爪の異常を有していてもよい。遠位指節病変は爪ジストロフィーを伴うことがあり、いくつかの例外を除き、サルコイド爪ジストロフィーを呈する患者は骨の関与を持っている。 よってサルコイド性疾患の診断を行う場合、例えば、乾癬性関節炎などの爪に影響を及ぼす他の条件を除外することが重要。
・併発するサルコイド皮膚病変は、通常、急性の結節性紅斑、または慢性のループス凍瘡lupus pernio、結節性病変、またはプラークplaque病変のいずれかで提示される。
・病理:ほとんどの場合、指骨の周囲の軟部組織が肉芽腫に侵略され、骨吸収は、二次的に発生する。
・手の単純X線撮影では、最も頻繁に軟部組織の腫脹と嚢胞性病変または骨皮質欠陥で、嚢胞性骨病変は、ミエローマ骨などと同様に皮質のpunched out領域として現われる。
指節骨における皮質と骨軸の“Tunneling“は 骨の特徴的な格子状・レース状の骨梁パターンを生む。骨膜と皮質骨の境界は保持される。稀に硬化性または破壊的病変をしめす。
・指病変患者の多くが肺病変を持つため、胸部X線検査にて、両側性肺門リンパ節腫脹を確認する。
・鑑別:ソーセージ様指は反応性関節炎、乾癬性関節炎、屈筋腱鞘の感染症、及び痛風などいくつかの既知の原因を持つ
・治療:サルコイド骨病変の治療は困難で、長時間高用量グルココルチコイド療法が必要になることもある
参考文献
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