感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

Gemella morbillorumについて

2013-11-07 | 感染症
血液培養チェックでGemella検出例があった。聞きなれない菌名ため、文献を調べた。
Mandellでは簡潔な記載のみで、S.morbillorumは一旦はviridans streptococcusであると考えられていた。それは血液寒天培地上にてβ-溶血を生成せず、特徴的な血清型抗原を欠いているため、および腸球菌や肺炎球菌の生化学的特性を持っていなかった。この菌はGemella 属(G.morbillorum)の2番めの種として再分類された。G.bergerie, G.haemolysans, G.morbillorum, G.sanguinisはヒトへの感染と関連がいわれている。これら細菌のための感染症と治療の一般的な原則は、緑色レンサ球菌viridans streptococciの場合と同じである、  との記載だった。



まとめ

・Gemella属について。1938年Thjotta & Boeにより慢性気管支炎胞者から分離されたもので,染色上グラム陰性に染まる双球菌とされ,ウサギ血液寒天平板上で発育におくれて溶血を示すことから, Neisseria haemolysansと命名されBergey's Manual(7th. ed., 1957)に収載
・その後Bergerはこの菌および新たに分離した5株の生化学的性状を再検討し,チトクロームオキシダーゼ陰性,カタラーゼ陰性で,その呼吸系が青酸に抵抗することから,その属性に疑義をもちNeisseria科の中に新しい属としてGemellaを,種名としてGemella haemolysans を提唱した。ちなみにGemellaとは小さい双子という意味。
・その後研究が進められて、Bergey's Manual 8th.ed(1974)でこの菌はFamily Streptococcaceae,Genus Gemella,Species Gemella haemolysansと分類された。

・G.morbillorumは、以前Streptococcus morbillorumとして知られたこの生物の最初の記述は1917年にTuncliffによってなされた
・1988年Schleiferらの報告後、この菌はDNA相同性、生理学的性質および16SRNAカタログに基づいてGemella属に移された

・Gemellaは、通性好気性グラム陽性球菌
・Gemella morbillorumは嫌気的条件下でより良い成長をしめす微好気性グラム陽性球菌である
・しばしば隣接する菌と平面で対をなして配置し双球菌を形成、または四分子、短鎖または不規則なクラスタに配置
・S.viridans同様にこの菌は、血液寒天培地上でOC-溶血を示す、そして栄養要求streptococciと同様に遅い成長を示
・コロニーの形態に基づいて それは、当初S.viridansと識別するかもしれない、その後正常細菌叢として報告してしまう
・その薄い細胞壁のため、簡単にグラム染色で脱色され、 したがって、グラム陰性としてみなされうる。双球菌の一方が陽性,他方が陰性に染まる例も観察される。

・中咽頭、消化管、上気道と女性生殖器管の粘膜の正常常在菌
・G. morbillorumが原因の感染症はまれ、ほとんどが心内膜炎
・Gemella属種による感染症の臨床的意義は、 Arizaらは頭蓋内化膿から生物を分離した80年代前半まではあまり注目されてなかった
・G.morbillorumの分離株は、軟部組織膿瘍、髄膜炎、心内膜炎、敗血症性ショック および関節炎 の症例には発見
・菌血症と感染性心内膜炎は報告されている
・肺や胸膜感染症のまれな原因である

膿胸
・類似した微生物学的特性を持つ緑色レンサ球菌が胸膜膿胸、肺の病因に関与してきたが、膿瘍ではG.morbillorumの存在はほとんど報告されていない
・これまでG.morbillorumと肺膿瘍、および/または関連して胸膜(胸部)膿胸のいくつか報告された症例は8例
・G.morbillorumによる胸膜肺感染症は、喉頭切除、食道狭窄と嚥下障害など、頻繁に吸引を多用する状況に関連付けられる。 他のレポートは、不良な歯の状態、以前の歯科装具挿入関連での菌血症を示唆。
・肺および/または胸膜のG.morbillorum関連した感染症の予後は早期かつ適切な治療で一般的に良好
・過去の臨床検体から分離された種は、ペニシリンGおよびアンピシリンに非常に敏感。しかし、最近のデータは、ペニシリンやマクロライド耐性を示唆。

大動脈弁心内膜炎
・G.morbillorumによって引き起こされる心内膜炎の15症例が報告されている
・患者の年齢は19から84歳 (平均56.3)
・歯科衛生の不良、歯科処置、大腸疾患や処置、がその素因
・ステロイド療法、糖尿病と肝腎機能障害も、この菌による感染性心内膜炎にかかりやすくな
・人工弁と人工血管もまた、影響を受けうる
・G.morbillorumによって引き起こされる心内膜炎のほとんどすべての報告された症例は細菌学的に抗生物質ペニシリンとアミノグリコシドの組み合わせで治癒されている
・わずか4以前のケースは、弁置換術により治療
・医療や外科的治療後の再発の他のケースが報告されていない

脳膿瘍
・Gemella morbillorumはほとんど脳膿瘍の原因でなく、文献の見直しでわずか8症例を集めることができた
・報告症例での感染源同定は、患者62.5%にて病歴中で歯性感染症や歯科処置を明らかにした
・報告された症例の大半は第三世代セファロスポリン(セフォタキシムまたはセフトリアキソン)とメトロニダゾールの組み合わせで治療された。 いくつかのレポートは、バンコマイシン、クリンダマイシン、アモキシシリン-クラブラン酸 などの他の抗菌薬使用を記録している、 gemella属の多様な抗菌薬感受性を示す
・メトロニダゾール感受性はgemella属感染症の治療における論争であるものの、その幅広い抗菌活性、優れた組織浸透性、適度な副作用と低コストは、gemella属の脳膿瘍でその使用を正当化
・髄膜炎のために抗生物質治療の3週間後に脳膿瘍をきたした報告もあり、菌の完全撲滅を見越して、6週間周期を下回らない、または、CRPが正常レベルに下がるまでで継続すべきである


参考文献

感染症学雑誌(0387-5911)56巻8号 Page715-723(1982.08)
Scand J Infect Dis. 2005;37(5):378-81.
Jpn Circ J. 2001 Nov;65(11):997-1000.
Turk Neurosurg. 2012;22(3):374-7.

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