感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

リウマチ性多発筋痛症の治療が難渋したらどうするか – その3

2015-05-15 | 免疫

前回のつづきです。PMR治療でステロイド治療のみでは副作用が懸念され使いにくいとか、再発などで長期使用となりそう、などで他の薬剤を併用することを考えると思います。これまでの文献ではこのあたりはどういわれているのでしょうか。

 

 

他の治療薬

 

・代替的なコルチコステロイド節約薬は深刻なコルチコステロイド関連副作用を経験する巨細胞性動脈炎(GCA)またはリウマチ性多発筋痛症(PMR)を有する患者において、及び/又は起因する疾患の再発に対して長期のコルチコステロイド療法を必要とする患者において考慮される。

 

・GCAおよび高安動脈炎などの血管炎、ならびにPMRでは、グルココルチコイド(GC)療法が選択の治療。しかし、これらの疾患における追加の免疫抑制療法のための2つの状況/疑問がある。すなわち i)グルココルチコイド単剤療法に治療抵抗、 ii)グルココルチコイド治療の合併症のようなグルココルチコイドの温存を求める状況。[Clin Exp Rheumatol. 2010 Sep-Oct;28(5 Suppl 61):S172-7. ]

 

メトトレキサート

 

・PMRの初期治療のためのメトトレキサート(MTX)の有効性は、さまざまの結果が示されている

 

・MTXのGC節約効果を調べるために、いくつかのランダム化、二重盲検、プラセボ対照試験を実施されている。

 

・24名のPMR患者は、1年間の無作為化前向き研究で検討された。GC単独群とMTX併用群(MTX10mg筋注)。

MTX群は有効性の損失なしに、1年間PSL使用量は有意に減少あり(3.2 vs 1.84 ; p <0.0001)。また、骨密度はGC群にてより大きく減少した。[J Rheumatol. 1996 Apr;23(4):624-8.]

 

・オランダでの6名のGCAと40名のPMR患者にて無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した研究。GC単独(20mg/dから開始、効果みて漸減)とGC+MTX(7.5mg/週)。21名の患者は、2年間追跡または投薬中止後少なくとも1年間追跡された。両群で寛解達成までの期間、寛解期間、再発数、または累積プレドニゾン用量に差はみられず。 [Ann Rheum Dis. 1996 Apr;55(4):218-23.]。

 

・イタリアの5つのリウマチクリニックでのPMR新規診断72名でのGC単独(25mg/dから開始、24週以内に0へ、しかし再燃時調整)とGC+MTX(10mg/週)併用のランダム化二重盲検試験では、MTX群では28/32名で、PSL単独群で16/30で76週目にはPSLを投与されてなかった(リスク差は34%ポイント)。MTX群で15/32で、PSL単独群で22/30でフォローアップ終了までに少なくとも1回の再燃を示した(p =0.04)。プレドニゾン用量中央値は、MTX群で2.1g、PSL単独群で2.97g(p =0.03)。以上からMTXを少なくとも10mg/日の用量で少なくとも1年間投与した場合、より短いGC治療とGC温存 と関連していた [Ann Intern Med. 2004 Oct 5;141(7):493-500.]。

 

・上記試験に登録された57名PMR患者はさらに5年後に再検討された。MTX併用群は、より低いESR、CRP値、ステロイド治療率(31 vs 39%)、PSL平均累積投与量(2.6 vs 3.2g)、PMR再燃(30 vs 44%)。 GC関連有害事象の率と重症度は、MTX群とPSL群で同様であり減らさないことも分かった。 [Clin Exp Rheumatol. 2008 May-Jun;26(3):395-400.]

 

・これら諸研究での結果の違いは、より以前のオランダでの研究でのMTXの有効性の欠如は より低いMTX投与量、治療の期間が短く、研究プロトコルを完了できなかった患者の数が多い(48%)、患者の15%は通常は疾患活動性を制御するためにより高用量のプレドニゾンを必要とするGCAを有していた、等によって説明することができる。

 

・これらの研究は、GCの応答者の相当数(GC療法によく反応し、MTXを使用せずに、GCの削減を容認患者)が含まれている可能性があり、 これはMTXのGC節約効果の過小評価につながる可能性がある。

 

・特に、大血管の血管炎の影響を受けているPMRまたはGCA患者のサブセットでは、血管炎でのMTXの有効性を支持する[Clin Exp Rheumatol. 2010 Mar-Apr;28(2):288-9. ] 

 

・MTX療法の中止は、暫定的に6〜12のヶ月、GC治療中止後試みることができる。

・遅延的効果により、疾患の発症におけるGCの代替としてMTxの単独使用は推奨できない。

 

 

 

アザチオプリンや生物学的製剤

 

・アザチオプリン(AZP)(50mg)も小さな無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験において評価されており、ステロイド節約効果を有することが見出された。主要エンドポイントは52週後の平均プレドニゾロン用量で、AZP群(PSL1.9 mg)、プラセボ群(4.2mg)であった(p<0.05)。しかしAZPは有害事象頻度の増加と関連。また研究では高い脱落率を有し(65%が試験を完了)、結果は慎重に解釈する必要がある[Ann Rheum Dis. 1986 Feb;45(2):136-8.]

 

・イタリアでの無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験では、新規PMR診断の40例でのGC節約剤としてのインフリキシマブ(IFX)の有効性をテストした(IFXとプレドニゾン治療vs プラセボとプレドニゾン治療)。[Ann Intern Med. 2007 May 1;146(9):631-9.] 両群間で第52週を経て再発のない患者の割合(主要エンドポイント)、再発数、プレドニゾンの投与期間と累積投与量、プレドニゾンの治療中止率、の差は観察されなかった。

・TNF-α阻害剤は新規発症のPMR患者においては非常に限られた有効性を有することを示唆。

 

・Macchioniらは、新規診断されたPMR患者でGC-ナイーブの2名にトシリズマブ(TCZ)治療(8mg/ kg体重)を開始した。1名は第2回のTCZ投与後も臨床的応答の欠如ありGC療法を必要とし、もう1名はTCZによく反応した。両患者ともよくTCZを認容した。 [Semin Arthritis Rheum. 2013 Aug;43(1):113-8. ]。

 

・他の可能な治療薬は、グルココルチコステロイド及びCD28媒介性T細胞の共刺激を調節する組換え融合タンパク質アバタセプトの新たな製剤を含む。[Clin Immunol. 2008 Jan;126(1):38-47. Epub 2007 Oct 22.] 

 

 

次回につづく


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