
前回に続きまして、帯状疱疹に関してです。今回は眼部帯状疱疹についてと、顔面帯状疱疹後の後頭神経痛についてです。発表症例は三叉神経第1枝領域の病変と結膜炎、動眼神経障害、帯状疱疹回復後の後頭部痛残存がありました。顔面の帯状疱疹をみたときは眼科チェックをすること、脳神経障害がないかみること、後頭神経痛がでるかもしれないこと、などがポイント。
まとめ
・水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)は第5脳神経の三叉神経の眼神経枝(V1)で再活性化されると眼部帯状疱疹(HZO)が発生する。眼部帯状疱疹は帯状疱疹全症例の約10-25%を占める。HZOの頻度は胸部デルマトーマのみの発生に次いで2番目に多いとされる。 三叉神経の3つの神経では第1枝が最もVZVに関連し、第2、第3枝より20倍以上頻繁である。
・うち一部の患者はまた、結膜炎、角膜炎、ブドウ膜炎、および眼頭蓋神経麻痺を発症することがある。
・眼病変は、抗ウイルス療法使用なしではHZ患者の約50%に起こる。眼病変は三叉神経第一枝(眼神経)帯状疱疹の患者の70%以上で発生しうる。
・鼻毛様体神経枝は眼球を神経支配するのでこの神経が影響を受けているときは最も深刻な眼病変が発生する。古典的には、鼻先端の病変(Hutchinson's徴候)は眼病変の臨床予測因子であると考えられてきた。しかし陽性Hutchinson's徴候を有する患者は眼病変の2倍の発生率を持つ(50-85%の眼病変を予測)が、徴候のない患者でも3分の1は眼病変を発生させる。
・Edellらの64人のヘルペス性眼疾患のための(40 例の眼部帯状疱疹(HZO)と24例の眼単純ヘルペスウイルス(HSV)感染)の医療記録レトロスペクティブレビュー。HZO患者の73%は60歳未満で、そのうちの90%は免疫応答性であった。HZOのうち4名(10%)が免疫不全者で3名はHIVに起因する。HZO患者は眼HSV感染者と比べて有意に高齢。
・直接眼病変が明確に年齢や、性別、または疾患重症度とは相関していない。
・免疫不全者、特にHIV感染者は、通常人口よりも眼部帯状疱疹を発症するリスクはより高い。さらに、このような患者はより深刻な視覚的続発症を発症する。
・眼部帯状疱疹例のほとんどは古典的なデルマトーマ性の発疹(額と上まぶたの皮膚に)を形成するが、しかし少数の患者では角膜などに主に限定される眼科所見のみを有しうる。
・HZOの疾患スペクトルの研究では、報告された眼科特徴は、 蓋浮腫、眼瞼下垂、瘢痕蓋奇形、強膜角膜炎、末梢潰瘍性角膜炎、神経麻痺性角膜炎は、併用緑内障、二次細菌性角膜炎とドライアイ、視神経炎と点状表層角膜炎、および滑車神経麻痺でkeratouveitis、が含まれる。
・Yawnらの医療記録見直しに基づくコホート研究では、全HZ症例のうち、184例(2.5%)は眼病変を持っていた。うち12例(6.5%)が眼合併症時点で免疫抑制状態だった。一般的な眼合併症は 角膜炎(n=144、76.2%)、 ブドウ膜炎/虹彩炎(N=88、46.6%)、 結膜炎(n =67、35.4%)であった。強膜炎/上強膜炎は、眼病変伴うHZを有する個体の10.6%に発生した。
・再発性角膜炎(全体の6.9%)および再発性虹彩炎/ブドウ膜炎(7.4%)は珍しくはなく、初期エピソードから3カ月以上経って(範囲3.1-13.0ヶ月)発生した。
・ほとんどがHZ眼病変からの完全な改善をしめしたが有害アウトカムは6人(3.3%)で日常活動を障害する弱視が含まれた。
・眼科帯状疱疹後に単一の脳神経麻痺、それは第3、第4または第6脳神経が関与することはしばしばあり、常にではないが自然軽快性の病態である。
・脳神経障害の機序は明らかではない。帯状疱疹での神経損傷の病因は、ウイルスの逆行性播種によりまたは活発なウイルス複製により引き起こされる血管障害によって直接的に細胞変性損傷などが考えられている。
・眼部帯状疱疹の、珍しいが重篤な合併症はzoster髄膜脳炎である。髄膜脳炎の正確な発生率は不明である。
・眼科帯状疱疹2250例の大規模なレビューでは、眼筋麻痺は症例の13%で発生、第3神経が最も頻繁に関与(47%)していた、続いて第6神経(14%)。
・HZOアウトカム研究の一つはコペンハーゲンのGlostrup大学眼科学部からのもので、 HZO110例が7年間にわたって観察され、6例(5.5%)は非疼痛性神経学的合併症を持っていた。内訳は、第3神経麻痺が3例、そして第4神経麻痺、髄膜炎、第3及び第7神経麻痺および6週間後に脳炎と反対側の片麻痺、が1例ずつ。
参考文献
Eye Contact Lens. 2013 Jul;39(4):311-4.
Mayo Clin Proc. 2013 Jun;88(6):562-70.
Acta Ophthalmol. 2008 Nov;86(7):806-9.
Am Fam Physician. 2002 Nov 1;66(9):1723-30.
顔面帯状疱疹後の後頭神経痛について
・後頭部の痛みは患者受診のための主な理由の一つで、これは、緊張性頭痛、片頭痛、または後頭神経痛によって引き起こされうる。
・後頭神経痛は通常、後頭神経の頚部筋肉の痙攣または外傷により誘導され得る疼痛症候群である。
・後頭頸部ヘルペスは頸椎神経C2、C3の関与と皮膚水疱面の疼痛を伴う後部頭皮の皮膚病変に代表されるヘルペス感染誘発症候群である。
・頸椎神経C2、C3枝は時々顔面神経と交通し、加えて顔面神経症状を引き起こす。
・これを説明しうるものとして、三叉神経求心枝 とC1-C3脊髄神経求心枝は 収束して、この収束は後頭部への水疱病変を伴う三叉神経領域から疼痛を参照
・脳神経とC1 -C3脊髄神経の 解剖学的継続 に起因する。
・三叉神経からの小径求心性のほとんどは、下降する三叉神経管にて尾側に走行し、C2レベルのニューロンのプールにシナプスする。C2、C3、およびC4の小さな繊維は、二次ニューロンの同じプールに上昇する。
・Kiharaらの報告した後頭神経痛の患者例では顔面ヘルペス病変が続発した。疼痛は右の大後頭神経分布に局在し同領域の触診にて疼痛を再現した。その数日後に右顔面の皮膚の発赤水疱病変が出現し(上顎神経と下顎神経領域)帯状疱疹と診断された。この症例は、顔面ヘルペス病変とC2、C3領域の疼痛の組み合わせを表す。
・抗ヘルペス薬投与にて、皮膚病変は改善したが顔面に感覚障害が残った。後頭部痛は逆に徐々に治療後に消失した。
・Filadora らは数名の帯状疱疹症例を報告。うち1例は、化学療法を受けている非ホジキンリンパ腫の40歳女性でC2-C4皮膚分節の疼痛を伴う水疱を発生しアシクロビルにて皮疹は改善したが、三叉神経の第二および第三枝の深刻な疼痛を持つようになりAHNの診断をされた。ガバペンチンにて完全な疼痛緩和を報告した。
参考文献
Headache. 2006 Nov-Dec;46(10):1590-1.
Reg Anesth Pain Med. 1999 Mar-Apr;24(2):170-4.