感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

common variable immunodeficiency患者の感染症アウトカム :免疫グロブリン療法との関係

2012-09-19 | 感染症
昨日のブログでも紹介しましたが、いま当科でcommon variable immunodeficiencyの方で、発熱をきたして入院しています。血倍で陽性シグナルは出ましたが、まだ培養で細菌は同定されていない段階ですが。 免疫グロブリン補充療法を始めたばかりで、今後用量をどう考えて行ったらいいのか、ということでこの文献を読みました。  
大雑把にいうと、結論は免疫グロブリン補充療法は、みんな同じ目標トラフ値を目指すのではなく、年間中等症感染が2回以下になるよう、感染エピソードごとに徐々に補充量を増やしていく、という方法を進めています。



まとめ

・1施設22年間の90人のCVID患者の前向きコホート研究
・免疫グロブリン製剤は特定トラフIgG値達成よりも、むしろ感染症に応じて調整された
・感染フリーの期間を達成するための免疫グロブリン製剤用量を決定し、得られたトラフ値を分析
・結果は、ブレイクスルー感染を防止するIgGトラフ値範囲は5-17g/L、免疫グロブリン投与量は0.2-1.2g/kg/mo
・免疫グロブリン補充の目標は、特定IgGトラフ値を達成することではなく、臨床転帰を改善することである

・過去の文献で、補充療法の有効性は、血清トラフIgGレベルを高め、重度のおよび中等度感染症の発生率を減らすことにつながった感染予防の研究で証明されてきている。 またN数はすくないが、ブレークスルー感染を防ぐために、各患者は、個々のターゲットのIgGレベルを維持するため個々の免疫グロブリン投与量を必要とすることを示唆する文献もある
・ほとんどの公開されているガイドラインでは、400 mg / kg、3~4週間毎の用量で、8~6 g / L辺りのトラフIgGレベルを達成すべきとしている。 しかし主に専門家の意見や、限られたデータの系統的レビューに基づいている。

・本研究では、管理方針は、特定のトラフのIgGレベルの達成ではなく、感染エピソードを持つに従ってリアルタイムに免疫グロブリンの投与量を調節すること。
・IgGの初期用量は、(慢性肺疾患のない患者のために)0.4 g/kg/mo を設定 (気管支拡張症のため0.6 g/kg/mo)
・用量はブレークスルー感染症をきたしたときに調整される。
・感染症エピソードは、軽症、中等症、重症でスコア化(それぞれ1,2,3点)

・全体的な細菌感染症の頻度は低かった(患者/年あたり2.16感染症)
・平均の細菌感染症スコアは患者/年あたり4.7(範囲;0~32、中央値;4)
・大多数(86%)が呼吸器系感染
・任意の期間では、平均トラフIgGレベルは、免疫グロブリンの補充用量と強く相関していた(PR2、0.33、P <0.0001)。
・患者•期間ごとの感染スコアと平均トラフIgGとの間には弱い関係があった (PR2、0.007、P =0.02)、が、その当時の免疫グロブリン補充用量との間にはなかった
・免疫グロブリンの補充用量に対するトラフIgGレベルの回帰係数は0.82 (免疫グロブリン補充用量が0.1g/kg/mo増加するたびに、トラフIgGは0.82g/ L増える) (ただし気管支拡張症患者では回帰係数は0.41)

・ブレークスルー細菌感染を防止するトラフIgGレベルおよび免疫グロブリン補充用量を決定するため、感染フリーの定義が決定: 3つの閾値 (年間の感染症スコア <4.5、<2.5、0 )
・個々の患者におけるブレイクスルー感染を防ぐために必要な免疫グロブリンの補充用量は、3つの感染症閾値は0.2~1.2 g / kg /moまで大きなばらつきがあった
・ベースライン時(開始)の血清IgGレベルと、患者が感染フリーだったIgGレベルまで増加量の間には強い相関があった (年間≤4.5感染症スコアの感染閾値。スピアマン順位相関は=-0.58、P≤0.000001)。
・3つの異なる閾値が使用され同様の結果が得られたが、4.5の感染症スコアは(年間2回の中等度細菌感染症に相当)感染予防の定義として妥当に思える

・この研究では、最小限の感染負担を維持するためのトラフIgG値および補充療法用量が個々に固有のものである、という臨床的見解を支持する


参考
J Allergy Clin Immunol 2010;125:1354-60.

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