感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

繰り返す肺炎球菌性感染症

2013-02-26 | 感染症
神経内科より感染症診療相談。40歳台になって最近数年髄膜炎繰り返し、すべてPSSP検出。2年前にニューモバックスをうっている。どのように対処するか。 幼少期に詳細不明ながら頭蓋底腫瘤指摘され生検手技で頭蓋骨などに部分欠損あり、またヒスチオサイトーシス疑いにて短期間ステロイド使用歴もある。  まず免疫グロブリンや補体価などチェックと、脾臓の有無、背部正中線の皮膚のチェックなどか。 タウートランスフェリン測定はSRLではもうやっていないとのこと。


文献メモ

・肺炎球菌菌血症は、肺炎、中耳炎、乳様突起炎、副鼻腔炎、および心内膜炎など連続性または遠隔病巣を持つ
・様々な基礎疾患を有する患者で重篤感染:脾臓摘出術または無脾症の状態、多発性骨髄腫、低ガンマグロブリン血症、アルコール依存症、栄養失調、慢性肝疾患、腎臓疾患、悪性腫瘍、糖尿病
・人工内耳児では、細菌性髄膜炎の発生率は高くなる
・肺炎球菌性髄膜炎の二番目エピソードを示した小児では先天性免疫欠乏症のスクリーニングを行う
・肺炎球菌は髄液漏の状態で頭蓋底骨折負傷患者での髄膜炎の最も一般的な病原体
・頭部外傷およびCSFリークが再発性細菌性髄膜炎の重要な素因
Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 7th ed.

・S.pneumoniaeは19-59歳と60歳以上の成人年齢における細菌性髄膜炎の最も多い原因
・乳児期の肺炎球菌ワクチン普及は90%以上で、S.pneumoniaeによる侵襲性疾患の発生率が減少している
・肺炎球菌ワクチンは、髄膜炎など、侵襲性肺炎球菌疾患のすべてのタイプの発生率を減少させる効果を持つ
・23価ワクチンPPSV23は、特に高齢者や、肺疾患、鎌状赤血球症、脾臓摘出後など脾機能低下者に薦められる
・小児へは副作用発生率が低く90%の血清型をカバーする7価conjugatedワクチンが薦められる。
Emergency Medicine Clinics of North America - Volume 26, Issue 2 (May 2008)


・再発性化膿性髄膜炎は一般的には髄液漏によるもの。 くも膜下腔と非無菌性の空洞又は皮膚洞との間の解剖的交通。 閉鎖不全からの皮膚洞は傍髄膜の感染源となり得、腰部から後頭部の正中線を探すべき。 わずかな異常であることもあり、毛髪とか局所性母斑が手がかりになることも。
・先天性または後天性(外傷や医原性)の脳脊髄液関門欠陥。 
・一般的ではないが、免疫不全患者(無ガンマグロブリン血症または補体欠損症)で再発性髄膜炎菌性髄膜炎が発生することがある。 
・髄液性鼻漏のある患者ではCSF様液体を確認し、β-2トランスフェリンをテストする。頭蓋底の高分解能CTやMRIで明らかに異常のない場合、コントラストCT脳槽撮影はCSFリーク位置を検出するのに役立つかも。
Neurologic Clinics - Volume 28, Issue 4 (November 2010)


・侵襲性肺炎球菌疾患IPDのリスクは、先天性または後天性免疫不全、異常な自然免疫応答、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、または機能的または解剖学的無脾症(例:鎌状赤血球症や先天性または外科的無脾症)
・IPDのケースの大半は、一般集団におけるIPDのリスク増加(関連付けられている基礎疾患または他の危険因子を持つ人(例えば、アルコールの大量摂取や喫煙)で発生
・PPSV23は、様々な基礎疾患を持つ高齢者の免疫応答性と大人の間で、IPDの予防のための約50%から80%の範囲の効果の見積もりを示唆。 しかし、効果は免疫不全患者、または非常に高齢者の間で実証されていない。
・6件のRCTが含まれている最近のメタアナリシスは、肺炎球菌菌血症に対する複合PPSV23効果を、わずか10%と推定し、 非常に広いCIであった。
・再接種のためのACIPの勧告は、1997年勧告から変わらない。 機能的または解剖学的無脾症の19-64歳のためと、免疫不全条件を持つ人のために、PPSV23の2回目は最初の投与5年後に推奨
MMWR September 3, 2010 / 59(34);1102-1106


・≥19歳の成人で免疫不全状態、機能的または解剖学的無脾症、脳脊髄液漏、または人工内耳例で 以前PPSV23の≥1回投与を受けた人は、最後のPPSV23を投与された≥1年間後に、PCV13を投与されるべき
・PPSV23の追加投与を必要とする人のため、最初のその用量はPCV13投与後に8週間より早くならない、そしてPPSV23の最近の投与後少なくとも5年間は与えてはいけない
MMWR. 2012 Oct 12;61(40):816-9.

・ペニシリン G またはペニシリンV の経口投与は、機能的/解剖学的無脾症の小児患者において肺炎球菌による疾患を予防する目的で推奨されている(Red book)。肺炎球菌感染に対する抗菌予防は、多糖体ワクチンが無効と思われる無脾症小児患者(例:2 歳未満の小児患者または強化化学療法または細胞減少療法を受けている小児患者)にとくに有用である。ただし、薬剤耐性 S. pneumoniae の出現が抗菌予防の効果に及ぼす影響は不明である。

・免疫グロブリンの筋肉内投与あるいは静脈内投与は、重度の細菌感染を繰り返している [1 年間に重度の細菌感染症(例:菌血症、髄膜炎、肺炎)を 2~3 回発症している]HIV感染小児患者を含む先天性/後天性免疫不全疾患小児患者において、肺炎球菌感染を予防するのに有用であると思われる(JAMA 1992;268:483–8.)。成人の HIV 感染患者において肺炎球菌による疾患を予防する目的で免疫グロブリンを静脈内投与することに関しては、データが不十分である。

・脾摘後感染症(OPSI)は5%の生涯リスクと、年間0.23-0.42%の推定発生率。 即時の抗菌薬投与や集中治療を必要とする緊急事態。静脈内免疫グロブリン投与は有用かもしれない。 肺炎球菌がシリーズ症例報告の血液培養分離株の50~90%を占める。あまり一般的ではないが他の細菌、Babesia or Ehrlichiaも原因となる。いくつかの介入によりOPSIはある程度まで予防可能かもしれない:予防接種、予防的抗菌薬、stand-by抗菌薬、患者情報シート、医療警告bracelet。
Clin Microbiol Infect. 2001 Dec;7(12):657-60

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