くろにゃんこの読書日記

マイナーな読書好きのブログ。
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ドラキュラ紀元  キム・ニューマン

2004年10月13日 | ヴァンパイア系列
「ヴァン・ヘルシング」を見て、読む気になりました。
映画とは全然関係ないんだけど、醜悪なドラキュラもいいかな~と。
なにせ、ブラム・ストーカー「ドラキュラ」が好きなだけに、その続編と言われてもね~、ずっと食指が動かないでいたんです。
映画をみて、話がドウコウ言う前に、その世界にどっぷり浸る快感に毒されました。

本書はブラム・ストーカーファンには評価が二分しているようですね。
私は「いいぞ、面白い!」派なんですけど。
評価が別れる原因は、本書がストーカー「ドラキュラ」世界のパラレルであるということの切り替えがうまくいくかどうか、ということろにあるんじゃないかな。

裏表紙には、「ドラキュラ」の続編と紹介が載っていますが、それは勘違いの元です。
ホントのところは、「ドラキュラ」でヴァン・ヘルシング一派によって滅ぼされるはずの伯爵が、逆に彼らを打ち負かし、イギリスをドラキュラの血筋で満たし始めるというものです。
冒頭は、ヘルシング一派の一人、精神科医のドクター・セワードの蝋管による録音からです。
それだけで、おおっ、と思ってしまう辺りかなりなマニアよね。
本書のいいところは、ヴァンパイアが市民権を得ていることかな。
それもこれも、ドラキュラ伯がビクトリア女王と結婚して、
女王自身も不死者になったからなんだけれど。
ヴァンパイアに転化していない人間は温血者(ウォーム)と呼ばれ、新たに死の接吻を受けたものは新生者(ニューボーン)、不死者(アン=デット)ととして何世紀も生きている者を長生者(エルダー)という風に3種類の人間(?)が微妙な関係を築きつつ生活を送っています。
そんなおり、娼婦を生業としている新生者が銀のナイフで殺されるという事件が立て続けに起こります。そう、切り裂きジャック事件です。
その事件に興味を示したのは、秘密の闇内閣ディオゲネスクラブ。
その組織の一員である温血者ボウルガードが切り裂きジャック事件の犯人探しを命じられ大いなる陰謀に巻き込まれていくのです。

クライマックスでの女王のお姿にはビビリました。○○マニアですか?
ビビッたといえば、串刺し刑の描写もすごかった。
「白檀の刑」を読めなかった私としてはすこし苦痛でした。

虚構と実際の事件、架空の登場人物と歴史上の人物、
という風に入り乱れて物語は展開していきます。
バランス感覚のよさに舌を巻きます、ちょっとでもさじ加減が狂えば、
面白さも半減していたことでしょう。
ヴァンパイアの捉え方も、怪物としてではなく人間として扱っていて新鮮さを覚えました。

本書を読む前にブラム・ストーカー「ドラキュラ」は、絶対に読みましょう。
完訳詳注版が水声社から出ています。
「ドラキュラ」だけでなく、短編「ドラキュラの客」とともにフォークロアの短編も載っていてお勧めです。

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