くろにゃんこの読書日記

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血の伯爵夫人 エリザベート・バートリ

2005年05月16日 | ヴァンパイア系列
たまには違った趣向で。
ゆきさまの新しいHPに、記事を書いたのですが、もったいないので、こちらにもアップさせてしまいました。

桐生操も小説にしているし、澁澤龍彦も「世界悪女物語」というエッセイの中で取り上げているという、歴史上の人物について紹介してみたいと思います。
串刺し公ヴラド・ツェペシュと並び称される、吸血鬼の元祖というべき人物で、いたいけな女性を<鉄の処女(アイアン・メイデン)>と呼ばれる拷問器具を使って600人も殺害したとされています。

彼女は、ハンガリーのトランシルバニア地方の名家の生まれ。
トランシルバニア各地に半独立の領主国を持ち、歴代の枢機卿やハンガリーの大臣をも輩出しているほど。
しかし、エリザベート10歳のとき、農民一揆によりエリザベートを残す他の家族がすべて死亡。
その後、名門貴族ナダジー家のフェレンツと15歳で正式に結婚。
夫は戦場に出ることが多く、チェイテ城には不在がち。
このころから、魔女としての頭角を現し始める。
エリザベートが40歳の時、夫が死亡。
盛りを過ぎたエリザベートは永遠に若くあり続けるために若い女性を拷問器具にかけ、血を抜きとり、その血で満たされた浴槽に浸ったという。
告発を受け、エリザベートのいとこであるサルーゾ伯爵にエリザベート・バートリの逮捕が命じられ、逮捕される。
やがて魔女裁判が行われ、有罪となるが、王室とも血縁関係にある人物を処刑することはできず、チェイテ城に終生監禁されることになる。
小さな食事の差し入れ口を除くすべてを塗り固められた寝室に。
その3年半後に彼女は死亡。享年54歳であった。

と、一般的には、そう知られていますが、ちょっと穿った考え方をしてみますと、とてもきな臭い。
エリザベートは、未亡人で、自治領の領主であったわけです。
それも、かなり広大。
ハンガリー国王は、面白くなかったでしょう。
中世ヨーロッパの貴族間では、拷問器具はポピュラーであったわけですし、エリザベートも持っていたに違いありません。
本当に血の殺戮をしていたかどうか、怪しいところです。

このように考えるようになったきっかけは
アンドレイ・コドレスク「血の伯爵夫人」を読だことにあります。
よく知られている事柄も、ひとつ違った見方をすることで、大きく変化する典型といえるでしょう。
血の伯爵夫人と恐れられている彼女が、本当は、旦那様を愛する、一人の女性であるとしたら、なんと悲しいことでしょうか。

注)これはくろにゃんこ個人の見解であり、歴史的事実に照らし合わせたものでないことをご容赦ください。

血の伯爵夫人 (1)
血の伯爵夫人―エリザベート・バートリ
世界悪女物語 文春文庫

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとうございました (ゆき)
2005-05-17 00:26:33
うちだけなんて、そりゃあ、もったいないことでございますう!

これ、読みたくなったよ、「血の伯爵夫人」。

この人、私しらなかったなあ。



話は変わるけど、私は澁龍よりも、その親友の種村季弘さんのが好きなんだけど、彼もドラキュラもの書いてるけど読んだ事ありますか?私はないのよね、読みたいとおもってるんだけど。
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種村季弘さん (くろにゃんこ)
2005-05-17 10:26:12
の本は、多分、翻訳したものを読んでいると思いますが、はっきりと思い出せない。

種村さんも怪しい本が多いですよね。

澁龍さんもアレですし・・・

そうか、親友だったんだ。

類は友を呼ぶ、なるほど。
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オヤジ、万歳! (ゆき)
2005-05-17 23:52:00
シブタツと種さんは、ヨーロッパの怪しい世界が好きで、ジャンル的にも似ていて、学生時代からの仲良しだから、並び評される事が多いけれど、まったく違う資質の書き手だと言われているの。

「吸血鬼幻想」「ドラキュラ・ドラキュラ」とかも書いてるけど、

私が初めて読んだのは実は「書物漫遊記」ですんごく面白かった。

実話の中にさりげなくフィクションを織り交ぜている、独特のエッセイ。この漫遊記シリーズこそが種村の神髄だと言われるほど、とても面白いんです。お固いような感じがするけど、このおじさん、むっちゃおもろいですよ。(笑)

ラッシュの電車の中で読みながら、隣の見ず知らずの人に「やっだー、ちょっとここ読んでみてよー!」と笑いながら語りかけたい衝動にかられるほど。読んでいると自分までオヤジになった気になってくるのはやばいですけど。
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オヤジになる本か (くろにゃんこ)
2005-05-18 09:22:28
種さんは、どちらかというとドイツ文学の翻訳者という印象が、私は強いんですが、エッセイも楽しそうですね。

渋龍のエッセイはいくつか読んだことあるけど、カルト的なファンがつくのもうなずけるよね。

とにかく怪しい。

では、どのように資質が違うのか、漫遊記シリーズに挑戦してみよう。
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