くろにゃんこの読書日記

マイナーな読書好きのブログ。
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ジーヴズの事件簿 P・G・ウッドハウス

2005年08月01日 | P・G・ウッドハウス
比類なきジーヴス」「よしきた、ジーヴス」は、ともに国書刊行会からの出版でしたが、「ジーヴズの事件簿」は文芸春秋からの出版です。
もちろん、翻訳者が違いますので、多少の違和感は否めません。
国書版を先に読んで、大笑いしてしまった方は(私も含めて)、最初の一文に「え?」と思うかもしれないですけど、読んでいくうちに、国書版のイメージと文春版が統合されてきますから、安心して読み進めてください。
どっちにしても面白いことに変わりありませんし、文春版を読むことで、よりいっそうウッドハウスについての知識も増すというもの。
国書版では、知りえなかった新事実にもめぐり合えますから、国書版を読んだ人も文春版を読んで損はない、いえ、必見アイテムといっても過言ではないでしょう。
「ジーヴズの事件簿」は国書版「比類なきジーヴス」収録の短編12編に加え、5編の短編が収録されています。
今回は「比類なき」以外の短編をご紹介。

「ジーヴズの初仕事」
ジーヴズとバーティの出会いが描かれている短編。
出会ったその日から、ジーヴズとのワードロープ対決はあったのね。

「バーティ君の変心」
この短編は、注目に値します。
なんと、ジーヴズの一人称で描かれているんです!
さらに「よしきた、ジーヴス」で、演説を嫌がるバーティのトラウマとなった「ブライトン近郊の女子校事件」の顛末がわかります。

「ジーヴズと白鳥の湖」
アガサ叔母さんからの呼び出しに、相変わらず嫌といえないバーティ。
結婚後のビンゴも登場しますが、相変わらずのビンゴです。

「ジーヴズと降誕祭気分」
「比類なきジーヴス」のなかで狂人というレッテルを貼られ、めでたく婚約解消となったバーティでしたが、今回、名誉挽回の機会が訪れます。
「よしきた、ジーヴズ」の登場人物、タッピーも出てきます。
吊り輪渡りの逸話にうらみ骨髄のバーティ。
バーティのちょっとしたいたずらが、全てジーヴズの思惑通りに。

特別収録作品「ガッシー救出作戦」
この短編は、ジーヴズものではなく、ガッシーもイモリ愛好家の愛すべきガッシーではなく、バーティの従兄弟のガッシーです。
でも、アガサ叔母さんは健在で、「ジーヴズと駆け出し俳優」に、もしジーヴズの頭脳がなかったら・・・という物語。
英国帰国後のバーティの運命や如何に、と想像して笑いましょう。

巻末のイーブリン・ウォーと吉田健一のウッドハウス讃も大変興味深いし、英国ウッドハウス協会のトニー・リンク氏による序文も、ウッドハウス初心者(私を含む)には、とてもありがたい。
なぜかといえば、ガッシー・ディというものを教えくれたから。
これから2月14日は、ウッドハウスの著作を思い出してニヤニヤ笑うことにしよう、
と心に決めました。
本書に収録された短編が、国書刊行会「それゆけ、ジーヴス」に収録される可能性も無きにしも非ずですが、森村たまき訳のちょっと飛ばした翻訳で、もう一度楽しめるとしたら、それはそれでうれしいなと思います。
国書刊行会「それゆけ、ジーヴズ」、文藝春秋ウッドハウス選集2、3ともども、出版が待ちどおしいですね。

ジーヴズの事件簿 P・G・ウッドハウス選集1


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
やっと、読めました。 (nanika)
2006-05-31 00:51:33
くろにゃんこさんの一連のウッドハウス評を読んで以来、ずっと狙っていました。

面白かった。

まだまだ他の作品にも挑戦します。
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是非、読んで (くろにゃんこ)
2006-05-31 08:24:03
この前「ウースター家の掟」を図書館から借りたんですけど、時間がなくて読めなかったんです。

一度返却して、もう一度予約を入れました。

文春版もいいですが、国書版もよいですよ。

古本では創土社「スミスにおまかせ」筑摩書房「マリナー氏ご紹介」があります。

まだこっちは私も読んでいませんが、図書館にはあります。

図書館の本は逃げないから、ゆっくり読んでいきたいです。
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噂に違わず (きし)
2006-07-04 18:57:09
面白かったです。

国書版もとても気になるワタクシです。古本のほうも…。

くろにゃんこさん、コメントありがとうございました。私も失礼してTBさせていただきます。
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国書版 (くろにゃんこ)
2006-07-05 08:50:37
「ウースター家の掟」の裏表紙を捲ったところに、「ウースター家の掟」の後「でかした、ジーヴス」以下続巻となっており、ウッドハウス・コレクションは、さらに充実される模様。

それだけ読まれているということでしょう。

ジーヴスは、ミステリ要素がありますので、日本人には馴染みやすいユーモア小説なのかもしれません。

イギリス的なユーモアは、日本人にはあまりウケがよろしくないという常識(?)を打ち破った、記念すべきシリーズなのは確かです。

私的には、ジーヴスだけでなくエムズワースももっと読みたいと思っているんですけど。
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