ドラゴン・スナイダー、42歳。
セバスチャン・クラークが助かったのは、彼のおかげだった。セバスチャンはある夜、アーヴィンと彼につきあい、夜のカフェで次の著作について熱弁した。ちなみに三人とも、酒は飲めない。ドラゴンはセバスチャンの話にただ聞き入っていた。話が終わり、終夜営業のカフェから出て、彼らが駐車場の暗がりに入った時だった。数人の男が、セバスチャンに襲いかかった。ドラゴンは反射的に、ひとりの男の手をとってひねりあげ、青い目を燃やして「この馬鹿が!!」と叫んだ。それだけで、相手はひるみ、大慌てで逃げて行った。
ドラゴン・アイズは夜にも光る。左手のやけどの痕がまたずくずくと痛んだ。
ドラゴンは変わり始めた。
アーヴィン・ハットンは常にドラゴンのそばにいて、ドラゴンが暴走するのをひきとめていた。
ジョン・レインウォーターは、ドラゴンに命じられて、山にこもり、不思議な仕事をしていた。
セバスチャン・クラークは二冊目の著書に着手した。
その頃、篠崎什から手紙がドラゴンの元に届いた。中には一編の詩が書かれていた。
篠崎什はドラゴンの正体を見抜いていたのだ。
ドラゴンは初めて、自分の力と、使命を確信する。
ドラゴン・スナイダー。炎の鞭の竜。
彼は、「馬鹿め」と言うだけで、相手を砕くことができる。
人類よ。わたしは、おまえたちを、炎の地獄で焼くために来た。