ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

腹水が大量に貯留し卵巣がんが強く疑われる初診患者さんへのアドバイス(私見)

2012年02月11日 | 婦人科腫瘍

卵巣がんの場合(子宮頸がんや子宮体がんとは違って)、初診時すでに進行例である場合が多く、手術を先延ばしにするとその間にさらに進行してしまい、全身状態が悪化して手術どころではなくなってしまう可能性もあり、なるべく早急に、腫瘍マーカー、MRI、CT、PET-CT、全身状態の一般的検査などを実施し、手術可能な状況であれば、なるべく早急に手術を実施する必要があります。

手術の方法は、子宮摘出+両側付属器摘出+大網切除に加え、転移巣、播種巣の可能な限りの摘出、後腹膜リンパ節廓清(生検)が行われます。初回手術でそれだけの手術を一期的に実施することが困難な場合は、まず最初は試験開腹を行い、腫瘍の生検で卵巣がんの病理組織型、臨床進行期の診断を確定し、化学療法を数コース実施してから、本格的な腫瘍摘出手術を実施する場合もあります。

手術は、婦人科腫瘍専門医が実施することが望ましいとされてます。婦人科腫瘍専門医は、各都道府県のがん診療連携拠点病院および地域がん診療連携拠点病院などの大きな病院に勤務してます。

ただ、大学病院やがんセンターなどの大きな病院では、地域の多くのがん患者さん達が集まって来るので、予定手術が数カ月先までびっしりつまっていて、いくら必要だからと言っても、1日がかりの卵巣がん手術を新たに早急に組み入れることが非常に難しいのが実情です。そこで、すぐに手術したいのはヤマヤマだけどスケジュール的に難しいので、とりあえず、手術までの数か月間に術前化学療法を実施して時間稼ぎする場合も少なくありません。術前化学療法が予想以上に奏功し、がんが著明に縮小したり、腹水や胸水が消失したりするような場合も少なくありません。

セカンドオピニオンも非常に大切ですが、時間との勝負という側面もありますし、どの施設で治療を行うにしても、治療は卵巣がん治療ガイドラインの最新版に沿って行われるので、婦人科腫瘍専門医や修練医が勤務していて、多くの婦人科悪性腫瘍手術が行われている病院なら、診断、治療方針、予後などは大きな差がないと思われます。

もしも他の手術のキャンセルなどがあって、すぐに手術できる枠が急にできて、本来なら数カ月先になるところを、担当の先生の特別の計らいで、1~2週間先に手術の予定を組んでくださったような場合は、これぞ天の恵みだと幸運に感謝して、そのありがたい提案を受け入れた方がいい場合ももしかしたらあるかもしれません。

担当の先生とよく御相談になってください。


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