ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

産科/検討進む医師の集約化

2007年02月16日 | 飯田下伊那地域の産科問題

たかだかこの半世紀間だけを見ても、日本における分娩場所のトレンドは、自宅分娩中心から始まって、何度か大きく変化してきました。トレンドが大きく変わる変革期では、それまでの安定した体制が根底から崩れて、多くの人達が戸惑い、一時的な混乱も止むを得ないことだと思われます。

日本の他の地区と全く同様に、当医療圏においても、自宅分娩が中心で地域の産婆さん達が大活躍した時代のあとに、非常に多くの開業助産所、開業診療所、病院産婦人科(私立、日赤、公立)が共存した時代が続きました。その後、代が変わって、最近数年間は6施設(3診療所、3病院)で地域の分娩を担ってきました。

そして、今また、我々は時代の大きな変革期を経験しつつあり、みんなで暗中模索しているところです。

一体全体、この先、時代はどのように変化していくのだろうか? 我々自身がどのように変化していけばいいのだろうか? いろんな人たちが、各々の立場から、いろんなことを言ってますが、何が正解なのかは誰にもわかりません。これから、誰も経験したことがない新しい時代が始まります。

****** 毎日新聞、長野、2007年2月15日 

産科/検討進む医師の集約化

(略)

 飯田・下伊那地域では05年秋、分娩を扱っていた6施設のうち、松川町の下伊那赤十字病院など3施設が06年春から分娩を取りやめた。この3施設の分娩数は年間800件。大量の「お産難民」が出る可能性があった。地域で懇談会をつくり知恵を出し合った結果、診療所と病院の連携システムが導入された。

 妊娠中の検診は診療所、出産は飯田市立病院という役割分担を行うことで同病院の負担を軽減。同病院の医師や助産師、分娩台の数も増やした。同病院の産婦人科長、山崎輝行医師は「システムの開始から1年。トラブルはなく成功したと言える」と話す。  

 県などでは国の方針に基づき、産科・小児科の集約化を検討している。各病院にいる小児科医や産科医を地域の拠点となる病院に集め、そこで治療などを行うという。飯田・下伊那地域の取り組みがモデルケースとされている。検討委員会の関係者は「現状のままでは産科医の負担は増す一方。いずれ、島根県の隠岐島のように、お産が出来る病院が消滅する。余力のある今だからこそ、医療資源を集約化する必要がある」と説く。

(以下略)

(毎日新聞、2007年2月15日)


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18 コメント

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今後、産科医療は困窮を極め、産科医の皆様の御負... (暇人38号)
2007-02-16 07:53:04
心が折れそうなときは決して無理をせず、一旦産科医療より離れてお休みください。
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この59歳の先生のお体は大丈夫なのでしょうか? (子持ちししゃも)
2007-02-16 12:27:00
24時間365日働いているなんて!!
使命感よりもこの労働状態の放置についてもっと取り上げてほしいです。
いったいお1人で何人の外来と分娩をこなしているのでしょうか?
もうすぐ退職だから、とか患者さんをおいていけないとかの使命感で頑張っていらっしゃるのでしょうが、ご自分のことを大切にしていただきたいと思います。
院長も、病院の存続を心配するよりもすることがあるのではないでしょうか?
きちんと労働の対価はあるのでしょうか?
この記事だけでも、もう存続は無理だと思いますが。
後任の特攻隊希望の産婦人科医師などいません!
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中村先生は、一度倒れて死線を彷徨われています。 (県内一産科医)
2007-02-16 13:43:05
教授も含め、産科復帰は止めたのですが、振り切って現場復帰されました。さすがに分娩数は制限していますが。
ケーシーだの赤ひげだの、正直言ってうんざりです。使命感をもって産科医療に取り組んできましたが、その結果は訴訟と逮捕、毎日新聞を始めとする不勉強なマスコミからの一方的な非難(ゴルフに行くために土日を避けて陣痛促進剤を使うとか)です。
中村先生のように取り組んで来た医師たちの使命感をことごとくへし折っておいて、「産科の医師が足りない」「集約化は困る」と言われても。
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 「心あるお産を求める会」って、いったい何を求... (東京メガテリウム)
2007-02-16 15:26:40
 それを台無しにして産科崩壊への流れを固めている原因の一翼を「心ない患者etc.」が担っているんだという実態をまず考えてもらいたいと思うんですけど。
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そういえば、ゴルフ三昧の産科の先生って見たこと... (暇人28号)
2007-02-16 15:33:39
そういえば、ゴルフ三昧の産科の先生って見たこと無いですね、っていうか、いけないでしょう。普通。病院付近から離れられないし、そんな時間あったら体を休ませたいんじゃないでしょうか。
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患者も行政も欧米型にdryになってるんだから、医者... (Richard)
2007-02-16 17:57:40
患者も行政も欧米型にdryになってるんだから、医者も、もっとdryになった方が良いと思います。
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長野県の実情を考えれば、オリンピックのおかげで... (委員長)
2007-02-16 18:32:45
長野県の実情を考えれば、オリンピックのおかげでちゃんと高速道路があるんだし、飯山日赤で分娩をやる必要はないでしょう。むしろ妊婦健診やがん検診は各地域できちんとやって、分娩自体は長野市まで来てもいいんじゃないですか?中村先生が命をかけておられるのは本当に頭が下がりますが、本当に命がけでいいんでしょうか。先日、自殺しかけた人を助けようとして亡くなった警察官がおられました。あの場合、警察官という職業上、ああせざるを得なかったのかもしれない。でもそれとは、こちらの状況は全然違うと思います。他のやり方もありうるんですから。大変失礼ながら、そこまでする必要はないと私は感じています。
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飯山日赤より、信州大が小児科医師を引き上げて、... (子持ちししゃも)
2007-02-16 22:11:13
中村先生は、死ぬくらいからだを酷使された後も現在の現場をお1人で文字どうりに死守されているとの報告がありましたが、先生は、死ぬまで産科を続けるおつもりなのでしょうか?
その悲壮な覚悟を、院長はじめ、住民は理解していないと思います。
いまさらお産をやめられないから、と死に急いでいるようにも感じられます。
過労のために、拘禁状態・うつ状態になっておられて、安全な医療供給体制ではないことを客観的に判断できないのではないでしょうか?
中村先生お1人が犠牲になればよいことではなく、その周辺の産婦人科医師も同じような非人間的な勤務を当然として要求されて、なんの改善もされなくなり、後輩が産科を辞めていく悪循環が続くのではないでしょうか?
小児科医師不在の状況でもお産をとり続けるのは、自ら自殺希望されているように痛ましい姿です。
お近くの先生方、どうぞ説得なさってください。
「住民のために、命を懸けた本物の医師」などどマスコミに礼賛されて祭り上げられるのだけは、阻止してほしいと切に思います。

ここまで頑張られた志の高い医師の最後が、過労から来る事故や訴訟でないことを祈っています。
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ここが出ていたので書き込みいたします。 (がんばらないでください)
2007-02-17 01:23:01
http://www.asahi.com/life/update/0216/015.html
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本当だ、朝日新聞に取り上げられている。 (暇人28号)
2007-02-17 07:44:09
でもね、朝日新聞って本当に信用できないんです。結局左巻きの人たちですから、安倍政権を倒す材料なら何でもいいんですよね。毎日と一緒でマッチポンプなだけ。

しかもその論調も「大臣がこの程度の認識では思いやられる」ってものですが、その前に朝日新聞を始めとした各種マスコミが行ってきた不当な医者たたきも大臣の発言と根は一緒。医師たちはそのことに今だに怒りを覚えています。

少なくとも、それに対するしっかりした謝罪がないと話が前に進みません。
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