ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

新潟日報:守れるか「地元でお産」

2006年05月29日 | 地域周産期医療

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この新潟県の地元紙の記事を読んで、新潟県においても産婦人科医不足はかなり深刻な状況にあることがよくわかった。新潟市の下越病院、上越市の新潟労災病院、糸魚川市の糸魚川総合病院などなど、県内各地域の中核的な病院が相次いで分娩受け入れ困難な状況に追い込まれているようである。

****** 新潟日報、2006年5月25日

守れるか「地元でお産」

専門医が激減 確保に奔走

 今月19日。糸魚川市が開いたマタニティースクールで、妊婦たちが母乳育児の利点を学んでいた。熱心に聞いていた同市本町の安田ケイ子さん(30)は8月、同市の厚生連糸魚川総合病院でお産を予定している。

 「赤ちゃんの来る日が楽しみ」とほほ笑むが、不安もある。同市の産婦人科で出産を受け入れているのは同病院だけだが、医師を派遣する富山大が、現在2人いる常勤医を来年度から1人に減らすことを決定。「お産のできる産婦人科」は、存続の危機にある。

 「糸魚川でお産ができなくなったら、親せきもいない上越市に行って産まなければならなくなる」と安田さん。

 医師を引き上げる理由として富山大医学部の斎藤滋教授は「産婦人科医のなり手が激減した。医師の勤務希望が都会に集中していることも大きな要因」と話す。2004年度に導入された臨床研修制度の影響などもあり、同大の産婦人科医局への入局は3年間ゼロ。20人いた同科の医師は11人にまで減った。

 産婦人科医不足は全国的な傾向だ。新潟市の下越病院や上越市の新潟労災病院が今月末で出産受け入れを停止するなど、「産科」撤退が県内でも相次ぐ。佐々木繁県医師会長は「昼夜を問わないハードな勤務と訴訟リスクの高さで、医学部の学生に産婦人科は敬遠されがち」と指摘する。

 斎藤教授も「教え子を1人医長にして、負担やリスクを一身に負わせることはできない」と強調。医師1人を残す代わりに、新たに1人を独自に確保するよう同病院に求める。病院側は県内外の大学などに打診、医師探しに懸命だ。

 糸魚川市も「市内で出産できなくなれば、過疎化に拍車が掛かる」と危機感を強める。現在も快適な施設を求めて市外のクリニックで出産を選ぶ志向は強く、出産件数は5年前の6割に。市は妊娠から産後ケアまで、糸魚川総合病院と連携したサポート体制をPR、地元出産を呼び掛ける。

 産科の「空白」を埋める人材として注目されているのが、女性医師だ。産婦人科医は他科に比べて女性の割合が高いが、出産や子育てで現場を離れる例も少なくない。

 この4月、新潟大医歯学総合病院に職場復帰した産婦人科医、木戸直子さん(28)は九カ月の息子を育てている。医師の激務がこなせるのは、当直の免除など子育てへの配慮があるからだ。

 「元気な赤ちゃんが生まれれば疲れも吹っ飛ぶ」と笑顔で仕事のやりがいを話す木戸さん。「子育て支援があれば、全国から女医が集まるはず。病院への託児所設置など環境づくりを考えては」とアドバイスした。

 県内の産婦人科医 厚生労働省の調査によると、県内の病院と診療所に勤務する産婦人科医は、2004年で141人。1994年の175人と比べ、19.4%減となった。人口10万人当たりの医療施設に勤める医師数(2004年)も、全国平均の8.0人に対し、本県は5.8人と大きく下回っている。

(新潟日報)


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