ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

日本医学会会長:『妊婦さんは喫煙しないでください』

2006年05月30日 | 地域周産期医療

http://mric.tanaka.md/2006/05/25/_vol_14_mric.html

http://www.lohasmedia.co.jp/

妊婦さんは喫煙しないでください

日本医学会会長
高久史麿

 福島県立病院の産婦人科医が帝王切開の患者さんを死亡させ、3月に逮捕・起訴されたことを覚えていらっしゃると思います。新聞などで、逮捕・起訴に対して全国の医師たちが反発していると報道されましたが、医師たちが何を憤っていたのかという背景まで理解しておられる方は少ないかもしれません。

 実は、地方では、お産を支える体制が崩壊しつつあります。

 そもそも出産は本来的に、母子とも身体生命の危険があるものです。そして異常出産だと、間違いなく患者さんや家族が医師を訴えます。このため、開業医がお産を引き受けなくなってきており、地域の中核病院に患者さんが殺到しています。

 一方、地方では中核病院といえども、産科医が1人か2人しかいないことが少なくありません。起訴された医師も1人で頑張っていました。忘れていけないのは、お産に昼も夜もないことです。産科医が1人しかいなければ毎日当直をすることになりますし、2人いても2日に1回は当直です。医師も人間ですから、せめて1施設に3人いないと体を壊してしまいます。

 小児救急についても同じことが言えますが、とにかく医師を増やす必要があります。けれど残念ながら、激務のうえに訴えられる危険が高いということで、産婦人科を希望する学生が激減しています。

 厚生労働省は、施設ごとの医師数を増やすために、拠点を選んで医師を集中しなさいと言っています。裏返すと、医師のいなくなる施設を作りなさいということです。自治医大でも、2人以下の体制の病院からは医師を引き揚げさせてもらいました。

 結果として、市民病院なのに市民がお産できなくなるようなことが起きます。今でも少子化が叫ばれているのに、さらに少子化を進めてしまいかねません。

 問題を食い止めるためには、国と日本産科婦人科学会などの関連学会が早急に何らかの方策を取る必要があります。私が必要だと思うのは、医師に過失がなくても事故の際に患者へ補償が行われる無過失補償制度の創設と、賠償金の上限設定です。このようなことに関して、日本医学会は産科婦人科学会をバックアップしたいと考えています。

 患者さん側にも、産婦人科医の負担を減らすためにできることがあります。妊娠を考えている女性は、喫煙をやめてください。胎児の重要な臓器は、妊娠に気づかないくらいの早期に形成が始まっており、喫煙は早産・流産のリスクを高める最大の要因の一つです。飲酒もリスクを高めます。やめるのは生まれてくる子供のためです。お願いします。


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