ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

産科施設の減少

2007年02月20日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

都会の状況はよくわかりませんが、地方基幹病院の産婦人科の状況はどこも惨憺たるものです。伝統ある地域基幹病院産婦人科が、次々に縮小・休診となっています。

また、今は何とかギリギリのところで頑張っていらっしゃる産科診療所の先生方の平均年齢も年々高齢化していて、これからの数年間で、その先生方も次々に引退していかれると予想されます。

残り少なくなってしまった産科施設には地域の患者が集中し、激務に耐えられなくなったスタッフが次々に辞めていき、その最後の砦の産科施設もついには休診せざるを得なくなる、という悪循環に陥っています。

業務量が倍増しているというのに、一時しのぎの中途半端な医師の集約化では全く対応できません。誰か1人が激務に耐えられず辞めてしまったら一巻の終わりです。どうせ集約化するのであれば、思い切って医師数を一気に倍増するくらいでないと、今後、地方の産科基幹施設がこの世に生き残ってゆくのは非常に難しいと考えています。

****** 朝日新聞、2007年2月16日

産科医減少「少子化の反映」 柳沢氏答弁に医師反発

 産婦人科医が減っているのは出生数の減少で医療ニーズが低減した反映――。7日の衆院予算委員会での柳沢厚生労働相の発言が、産科医の反発を呼んでいる。訴訟リスクの高まりや24時間態勢の過酷な勤務などに触れなかった答弁が理由だ。「産む機械」発言の余波もあってか、医師らのブログには「このような認識では有効な対策がとられない」などの書き込みが続く。柳沢氏は16日、閣議後の記者会見でこの発言について「訴訟のリスクや勤務状況がきついということはよく承知している」と話した。

 発言は、「産科、産婦人科、外科の医師数が減っているが、なぜか」という質問に答えたもの。柳沢氏は「産科の医師は出生数あたりでは減っているわけではない」「出生数の減少で医療ニーズがはっきり低減していることの反映」などと答弁。産科医、助産師不足の対策には「効率化、ネットワーク化して対応していく」とした。

 この発言を取り上げたブログ「ある産婦人科医のひとりごと」のコメント欄には「(現場を)理解しようともしない」などの言葉が並ぶ。国会中継の録画から議事録をおこしたブログも。医療関係者らが参加する掲示板「m3」などでも批判が続いている。

 確かに産婦人科医1人あたりの出生数は、90年が95人、04年が98人と横ばい傾向にある。だが、日本産科婦人科学会で医療提供体制検討委員長を務める海野信也・北里大教授は「大臣は、分娩(ぶんべん)施設数の減少が出生数の減少率より大きい事実を見落としている」と指摘。「産婦人科が扱う領域は、婦人科系のがんや不妊治療などに広がっているのに、担い手は減っている。お産を扱う医師は、数字以上の激務。実態にきちんと目を向けていただきたい」という。

(朝日新聞、2007年2月16日)

****** Ameba News、2007年2月16日

とある産婦人科医が柳沢厚生労働大臣の無理解を批判

 2月7日の国会審議における柳沢厚労相の発言に対し、とある産婦人科医がブログ上で意見を述べている。

 同ブログ上では、国会審議において柳沢厚労相と枝野幸男議員との答弁が詳細に書き記されている。それによると柳沢大臣は、現在進行中の産科医減少問題は単に分娩件数減少に対応したものであり、今後病院のネットワーク化と医療の効率化により解決可能であると発言したようである。

 その発言に対しこの産婦人科医は、大臣というポストは今まで自分が関係のない分野の問題を突然のにわか勉強で理解しなければならなず、それが故に危機感を持っていないことも仕方のないことだと書いた。

 また、「高度な医療行為を行った場合に残念ながら失敗があった時に医師が逮捕されてしまう時代に、産婦人科のようにリスクの高い仕事をやる人はいなくなる」という発言をした枝野幸男議員に対してこの産婦人科医は「現場の状況をかなり正確に把握してらっしゃるようで、現在の産科で問題となっている諸問題に対して鋭く質問をしていて非常に感心しました」と高く評価した。

 これを受けブロガーたちからは、「なんでこんな人がよりによって厚生労働大臣になってしまったんだ?」、「産婦人科医のやる気をそぐような発言は控えてもらいたい」など、依然として柳沢大臣に対する批判的な意見が多く見られた。

(Ameba News、2007年2月16日)

****** 中国新聞、2007年2月20日

産婦人科医不在の恐れ 福山市民病院

 ▽岡山大が派遣中止通告

 福山市民病院(福山市蔵王町)が、岡山大病院(岡山市鹿田町)から産婦人科医師二人の派遣を打ち切りたいと通告を受けていることが十九日、分かった。期限は三月末で市民病院に産婦人科医が不在となる事態を避けるため、羽田皓市長らが岡山大側に出向いて撤回を要請している。(木原慎二、野崎建一郎)

 医療関係者によると、岡山大病院産科婦人科の平松祐司教授が、市民病院の浮田実院長に文書で通告した。市民病院の産婦人科に勤務する医師は二人で、いずれも岡山大が派遣。今のままでは四月以降の診療が危ぶまれる。今月中旬には羽田市長と浮田院長が平松教授を訪ね、撤回を求めた。

 派遣中止の背景には、大学病院の慢性的な産婦人科医師不足がある。このため福山市医師会が調整に乗り出し、岡山大から派遣を受けている市内の病院間で産婦人科医師を再配置する案も視野に検討する方針。今月末には岡山大関係者を交えた話し合いの場を持つ。

 市医師会によると、福山市内は開業医も多く出産の受け入れ態勢に問題はない。一方、市民病院は年間五十例前後の帝王切開手術を実施。麻酔科が充実し母体にリスクを伴う分娩(ぶんべん)、高度な処置が必要な婦人科患者の診療などを担っている。

 岡山大からの派遣打ち切り通告について市民病院は「県東部の中核病院の責務を果たすため派遣の継続をお願している。医師会とも連携して要請する」と説明している。

 <福山市民病院> 1977年に現在地に開設し、病床数は約400、医師数は約70人。心臓血管外科や脳神経外科など19診療科と県東部では唯一の救急救命センターを置く。ヘリポートを備え、24時間態勢で救急患者を受け入れている。昨年8月には国が整備を進める地域がん診療連携拠点病院の指定を受けた。産婦人科は05年で計216例の手術実績がある。

(中国新聞、2007年2月20日)

****** 紀伊民報、2007年2月18日

出産の取り扱い休止へ 新宮市立医療センター

 新宮市立医療センターは、10月1日から出産の取り扱いを休止する。産婦人科医が3月末で1人になるため十分な医療体制が取れなくなるのが理由という。妊婦の検診と婦人科は従来通り診察を継続するが、出産受け付け再開の見通しは立っていない。紀南地方では田辺市の南和歌山医療センターが昨年9月から産科を休止している。

 三木仁一院長が16日、同センターで記者会見した。これで同市周辺の妊婦は市内に1軒ある開業医か串本町の町立串本病院、三重県紀宝町の紀南病院などで出産しなければならなくなる。

 会見で三木院長は、これまで同科は医師3人だったが昨年12月末で1人が退職、別の1人も3月末で派遣元の奈良県立医大に戻され、医師の補充を断られたと経過を説明。「安全に分娩してもらえる体制ではなくなる。医師確保に努力しているが、全国的に産婦人科医は不足しており、見通しは暗い」と話した。

 すでに出産の予約を受け付けた9月末までの妊婦91人については、4月から半年間、同医大から産婦人科医1人を派遣してもらい、対応することにしている。

 10月以降は、他の病院への搬送が間に合わないなど、緊急時の出産に限り引き受けるという。

 同センターは2001年5月に開業。診療科は内科や外科など18科で、医師43人。うち産婦人科は医師3人で、新宮東牟婁と三重県南牟婁の一部を含む地域の約75%を占める、年平均400件の出産を扱ってきた。

(紀伊民報、2007年2月18日)

****** 毎日新聞、2007年2月19日

隠岐病院:産科医派遣減で説明会 島外出産に17万円助成--広域連合 /島根

 ◇交通費、滞在費など

 隠岐病院(隠岐の島町)で出産リスクのある妊婦の分娩(ぶんべん)が4月から出来なくなる問題で、同病院を運営する隠岐広域連合は18日、町内で説明会を開催。妊婦ら約90人に、島外で出産する場合、交通費や滞在費など17万円を助成することを説明した。

 同病院では、県立中央病院(出雲市)からの産婦人科医派遣が1人減り、4月から1人体制になる。このため同月から院内に助産科を設け、医師と助産師が出産経験のある妊婦の正常分娩のみ出産対応することにした。出産リスクのある初産や経過の良くない人の対応は難しく、約1月前に本土に渡っての出産となる。

 助成は同町内の妊婦が対象。現在、4~9月の出産予定者は約55人で、うち7割前後が本土での出産になる見込みという。同連合では、常勤産婦人科医がいなくなった昨年4~10月も本土に渡る妊婦に17万円を助成している。【久野洋】

(毎日新聞、2007年2月19日)


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30 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
福知山市民病院の産婦人科が撤退するようです。綾... (ibaraki)
2007-02-20 08:58:51
福知山市民病院の産婦人科が撤退するようです。綾部市民病院へ集約するようですが、舞鶴市民病院の崩壊に続き、京都北部の医療情勢は極めて悪化医しています。
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これですね! (僻地の産科医)
2007-02-20 12:50:22
産婦人科医不在の恐れ 福山市民病院
中国新聞 '07/2/20
http://www.chugoku-np.co.jp/Health/An200702200165.html

▽岡山大が派遣中止通告

 福山市民病院(福山市蔵王町)が、岡山大病院(岡山市鹿田町)から産婦人科医師二人の派遣を打ち切りたいと通告を受けていることが十九日、分かった。期限は三月末で市民病院に産婦人科医が不在となる事態を避けるため、羽田皓市長らが岡山大側に出向いて撤回を要請している。
返信する
それにしても、この期に及んで一人医長で産科を継... (暇人28号)
2007-02-20 12:53:12
産科の先生方には「地域のお産を守る」義務も義理も無いのですから、早々に辞めるべきです。大学医局も地域医療を担う義務は無いですから、早々に一人医長の病院からは産科医を引き剥がすべきです。

病院・自治体も自分の面子にこだわって無理なお願いをするべきではありません。

崩壊はすぐそこなんですから。
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>僻地の産科医様 (ハーフドロッポ)
2007-02-20 12:54:59
福山(広島県)と福知山(京都府)は別の自治体です。もちろん派遣元も別大学です。

まあ、それだけ撤退する病院が多いということなのでしょうが。
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あっ!まったく別でした! (僻地の産科医)
2007-02-20 18:41:16
なんてこった。ちょっと恥ずかしいです。。。
すみません。。
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未だに「大学に戻され」なんて大学に対する悪意に... (田舎産科医)
2007-02-20 19:36:06
奈良情報では本人希望らしいですよ。市の側がそれを認めたくないんですね(嘲笑)。
それにしても「緊急時の出産に限り引き受け」たら、だめじゃん。またそんな選挙民向けの格好ばかり取り繕って…その緊急がトラブったら市長が責任取ってくれる、わけないですよね?
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役人の「撤退→集約」という言葉は「玉砕→転進」を... (長野から)
2007-02-21 13:57:06
実際には「全滅→退却」なんだけど、そういった言葉を避けているところも似ている。

「ネットワーク化と医療の効率化」は「絶対国防圏の設定と竹槍訓練の強化」といったところでしょうか。
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しかし、朝日新聞の記事で、こちらのブログタイト... ()
2007-02-21 15:09:06
ブログタイトルのみの記述である本記事では、現場の重みが読者に伝わったものか疑問です。
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「勤務医 開業つれづれ日記」中間管理職です。 (中間管理職)
2007-02-21 18:14:36
いつも大変お世話になっております。

今回、先生のデータもあわせてアップデートさせていただきました。

また、今回から新規、訂正情報がどこか分かりやすくなるように印を付けてみました。御参考になりましたら幸いです。

先生もお体にお気をつけ下さい。

これからもよろしくお願いいたします!!
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はじめてコメントします。 (さくら)
2007-02-21 20:10:35
私の田舎でも去年の3月から産婦人科が休診になったそうです。出産のときは里帰りを考えていたのですが、悩むところです。

ちなみに大分の南海病院ですが、健康保険南海病院の「健」が抜けています。
揚げ足取りみたいでごめんなさい。
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