子宮頸癌は子宮の入り口(頸部)にできる癌で、最近では20~30歳代の若年女性に急増しています。 初期子宮頸癌ではほとんど自覚症状がありませんが、 癌が進行すると不正性器出血や性交渉時の出血などの症状がみられることもあります。
子宮頸癌は他の癌と異なり、定期的な検診で前癌病変のうちに発見することが可能です。前癌病変で発見し、治療を行えば、ほぼ100%完治します。また子宮を温存することも可能なため、その後の妊娠・出産も可能です。
子宮頸癌の原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスです。 このヒトパピローマウイルス(HPV)は性交渉により感染します。このウイルスはとてもありふれた存在で、性交渉の経験のある女性であれば、ほとんどの人が感染したことがあると考えられています。 このウイルスに感染しても多くの場合は、免疫力によってウイルスが体内から排除されます。しかし、何らかの理由によってウイルスが持続感染した場合、長い年月(ウイルス感染から平均で約10 年以上)をかけ、子宮頸癌へと進行する危険性があります。
ヒトパピローマウイルス(HPV)には100以上ものタイプがありますが、全てのタイプが子宮頸癌の原因となるのではありません。子宮頸癌は高リスク型HPVと呼ばれている一部のヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされます。高リスク型HPVは性交渉により人から人へと感染します。 この高リスク型HPVが持続感染した場合、子宮頸癌へと進行する危険性があります。持続感染する原因はまだ明らかにはなっていませんが、その人の年齢や免疫力などが影響しているのではないかと考えられています。
ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染した人の中で、およそ10人に1人がウイルスを排除できず持続感染することがあります。その場合、子宮頸部の細胞に異常な変化を起こすことがあります。この細胞の変化を異形成といいます。異形成になってもウイルスが排除されれば、それに伴い異形成も自然に治ります。しかし、ウイルスが持続感染した場合、異形成の程度が進行することがあります。異形成の程度が軽い場合(軽度異形成)は自然に治癒することが多く、程度が重くなった場合(中等度~高度異形成)は自然治癒しづらくなります。
高度異形成を治療せず長期間放置した場合、病変が進行し子宮頸癌になる恐れがあります。子宮頸癌は早期癌であれば、手術により高い確率で治癒することが可能です。しかし、癌が進行しているほど、手術をしても癌をとりきれなかったり、他の臓器へ癌が転移している可能性が高くなり、治癒が難しくなります。
子宮頸癌は定期的に癌検診を受けることで予防することができます。現在、子宮頸癌検診では細胞診での検査が主流です。しかし、細胞診のみでは検診の精度にやや問題があり、細胞診とHPV検査を併用することで、検診の精度がほぼ100%になり、将来の子宮頸癌のリスクも知ることができます。アメリカの婦人科検診のガイドラインでは細胞診、HPV検査の両方が陰性の場合は、その後3年間は検診の必要がないとされています。従って、子宮頸癌検診では、できれば、細胞診とHPV検査を併用することをお勧めします。(HPV検査の費用は自費となります。)
子宮頸癌検診の結果、精密検査の必要性があると判断された場合、コルポスコープ(膣拡大鏡)検査を行います。コルポスコープ検査で異常が疑われる箇所があれば、その部分の組織を一部採取(生検)して病理専門医が診断します(病理組織診断)。
異形成の病変は、軽度、中等度、高度と長い時間をかけて進行し、上皮内癌を経て最終的に浸潤子宮頸癌になる恐れがあります。異形成/上皮内癌/浸潤子宮頸癌の治療法は病変の進行状態によって異なります。
軽度異形成は、ウイルスが免疫力によって排除されると、異形成も自然に治癒する可能性が高いため、通常、治療の対象にはなりません。異形成がさらに進行した場合には癌への進行を防ぐため、円錐切除術という治療を行います。高度異形成~上皮内癌までの段階であれば、円錐切除術で治癒が可能で、子宮を温存できるのでその後の妊娠・出産にもほとんど影響はありません。
高度異形成~上皮内癌の段階で発見されず浸潤子宮頸癌に進行してしまうと、円錐切除術では病変を取りきれなくない場合が多く、子宮の摘出が必要になります。病巣の大きさ・拡がり具合によっては、子宮だけでなく基靭帯、膣壁、骨盤内リンパ節なども同時に摘出する拡大術式(広汎性子宮全摘術)の必要があります。また、進行、転移の状況、年齢、病理組織型などによって、放射線療法、化学療法などを実施する場合もあります。症例によっては、複数科の専門医が協力して、手術療法、放射線療法、化学療法などを組み合わせて実施する場合(集学的治療)もあります。個別の症例の治療方法につきましては、もよりの婦人科腫瘍専門医とよく御相談になってください。
ところが、4年前軽度の異型性が見つかり外来にてレーザーの処置を受けました。
その後も、検診は欠かさず今年も3月に異常なし次回半年後と言われたのですが、ここ1~2ヶ月生理以外にも生理痛のような痛みがあり、おりものも茶褐色のおりものが時々見られます。
下腹部痛の他に、腰痛も加わってきました。
不正出血、性交痛はないのですが受診の必要があると思われますか。
こういった質問は、こちらで受付はしないのでしょうか。教えていただけますか。
円錐切除の既往も早産の原因の一つですし、円錐切除後に大量出血して子宮全摘となる可能性も全くゼロとは言えません。円錐切除も慎重に適応を決定する必要があると思われます。
担当の先生とよくご相談になってください。
同じく子宮頸がんと診断された場合であっても、臨床進行期(がんの進み具合)によって治療方法、予後が全く変わります。
上皮内癌などの初期がんの段階であれば、円錐切除術などの子宮を温存する治療の選択も可能です。定期健診の細胞診異常でみつかった場合は、(前がん病変~)上皮内がんなどの粘膜内にとどまっている初期病変であることがほとんどです。
しかし、がんの進み具合によっては、広汎性子宮全摘術、放射線治療、化学療法などを組み合わせた非常に大がかりな治療が必要となる場合もあり得ます。
もしも、前がん病変の段階(子宮頚部・異形成)であれば、定期的な経過観察のみでよい場合もあります。
まずは、担当の先生にしっかり病変を評価してもらい、コルポスコープ検査、病理検査、画像診断などの検査で、きちんと臨床進行期を決定することが、正しい治療の第1歩となります。
実は・・・ 恥ずかしながら33歳にしてまだ男性経験がありません。
一般的に、子宮頚がんはSEXで感染するといわれているのに、なぜ自分が??
その後行った、HPV検査では陰性。感染なしでした。
(型まで出ない検査のようで、保険内でした)
処女でHPV陰性なのに、高度異形成のⅢb・・・
そうなってしまう原因って、何かあるのでしょうか?
先生に聞いたのですが、わからないと言われてしまいました。
本を読むと、まれにそういうこともあるとは書いてまりますが
詳しくは書いていなくて・・・
先生は、どう思われますか??
よろしかったら、教えてください。
ちなみに次回は、コルポ診を行う予定です。
「上皮内癌」を想定するような細胞形態であればクラスⅣと判定することになっています。
「浸潤癌」を想定するような細胞形態であればクラスⅤと判定することになっています。
※ なお、このパパニコロ・クラス分類は昔は世界中で採用されていましたが、今となっては、このクラス分類を採用している国は世界中で日本だけになってしまったんだそうです。いずれ日本でも用いられなくなると思います。米国では、細胞診のレポートにクラス分類は用いられず、ベセスダ方式という報告システムが採用されています。
診断はコルポスコープ下の組織診(生検)で確定します。
HPV検査(ハイリスク型)が陰性ということであれば、精密検査では異常なしとなる可能性が高いのかもしれません。
担当の先生とよくご相談になってください。
行い陰性でしたが日本に帰国し細胞診をうけたら いきなり陽性で3Aでした。現地に帰り担当の婦人科医に日本の診断結果を相談すると当地では細胞診でクラスわけをせず陰か陽か2つ分類だけだそうです。今後は日本に帰りクラスわけ細胞診をうけたほうがいいのでしょうか?海外はざるの目があらいのでしょううか?不安です。宜しくご指導下さい
子宮頸部細胞診の判定に、日本では、以下のような日母クラス分類が多く用いられています。
日母クラス分類
Ⅰ: 正常である。
Ⅱ: 異常細胞を認めるが良性である。
Ⅲa: 軽度~中等度異形成を想定する。
Ⅲb: 高度異形成を想定する。
Ⅳ: 上皮内癌を想定する。
Ⅴ: 浸潤癌(微小浸潤癌も含む)を想定する。
しかし、このⅠ~Ⅴのパパニコロウ・クラス分類を採用している国は、今や日本だけなんだそうです。
現在では、ベセスダ・システム(The Bethesda System, TBS)が、アメリカをはじめ、欧米で最も使われている細胞診結果の分類方法で、これが世界標準の細胞診の報告システムとなりつつあるようです。