ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

体重管理XIV 「極端な糖質制限は健康被害をもたらす危険がある」(日本糖尿病学会)

2012年07月28日 | ダイエット

日本糖尿病学会は7月26日に、「極端な糖質制限は健康被害をもたらす危険がある」との見解を示しました。(読売新聞記事より)

ご飯やパンなどの主食を極端に控えるとどうしてもお腹がすいてしまうので、その分の穴埋めとして、チーズ、豆腐、魚、肉などを余分に摂取する食習慣になりがちです。そのような食習慣(極端な糖質制限、脂質・蛋白質の過剰摂取)を続けていると、短期的にはケトン血症や脂質異常症の、長期的には腎症、心筋梗塞、脳卒中、発がんなどの危険性を高める恐れがあるとの調査報告もあります。

同じく“糖質制限食”と称していても、提唱者によって“非常に極端な糖質制限”から“ごく緩やかな糖質制限”までいろいろで、どこまで糖質の量を制限すべきかの明確な基準は未だ定まってないようです。また、糖尿病の重症度や合併症も患者さんごとに異なりますので、患者さんの状況によっては極端な糖質制限食によって健康被害がもたらされる場合もあり得ると思います。誰でも彼でも一律に“糖質制限食”を同じやり方でお勧めするというわけにもいかないと思います。糖質制限食の適応基準、限界や安全性などについて、今後、日本糖尿病学会などでも十分に検討していただきたいと思います。

私自身は糖尿病ではありませんが、ダイエット目的で半年前に糖質制限食を開始しました。最初は極端な糖質制限を行い2カ月間で約10kg減量しました。その後は、リバウンド防止目的で穏やかな糖質制限を続けてます。今のところ体調には特に問題がなく、今後も穏やかな糖質制限食を継続していく予定です。

****** 読売新聞,2012年7月27日

「炭水化物 極端な制限危険」 
日本糖尿病学会 ダイエット目的に
警鐘

 主食を控える「糖質制限食(低炭水化物食)」について、日本糖尿病学会は26日、「極端な糖質制限は健康被害をもたらす危険がある」と警告した。糖質制限食は糖尿病の治療やダイエット目的で国内でも急速に広まっている食事療法だが、専門医の団体が見解を示すのは初めて。

 同学会の門脇孝理事長(東大病院長)は読売新聞の取材に対し、「炭水化物を総摂取カロリーの40%未満に抑える極端な糖質制限は、脂質やたんぱく質の過剰摂取につながることが多い。短期的にはケトン血症や脂質異常症の、長期的には腎症、心筋梗塞や脳卒中、発がんなどの危険性を高める恐れがある」と指摘。「現在一部で広まっている形での糖質制限は、糖尿病や合併症の重症度によっては生命の危険さえあり、勧められない」と注意した。

 一方、同学会では糖尿病の食事療法として、炭水化物を総摂取カロリーの50~60%にするカロリー制限食を勧めているが、この割合を45%程度まで減らせるかどうか検討を始める.

 門脇理事長は「ごく穏やかな糖質制限なら、総カロリーの減少効果が期待でき健康被害も心配ない。来年の治療指針改定で反映させ,極端な糖質制限の歯止めにしたい」と話している。

(2012年7月27日  読売新聞)

****** 読売新聞、2012年7月26日

糖質制限食に賛否両論 

 ご飯やパンなどの主食やでんぷん質の野菜、甘いものを制限する「低炭水化物食」。面倒なカロリー計算がいらず空腹感も少ないため、糖尿病治療やダイエットを目的にした「糖質制限食」など、様々な呼び名で急速に広まっている。医師の間でも賛否両論がある食事療法だが、効果や安全性はどうだろうか。

 (中略)

 糖質制限食は食後、急激に血糖値が上がるのを抑えることで、血糖値の安定を目指す食事療法だ。減量や血糖値のコントロールに効果があるという論文が相次いで発表され、米国糖尿病学会も、2年を限度に減量効果のある食事療法として認めている。

 しかし、どこまで糖質の量を制限すべきか明確な基準はなく、肉類や脂質はいくらでも取ってもいいという極端な方法論や、自己判断で通院や薬物治療を中断するなどの危険なやり方も横行する。過剰な糖質制限で、脂肪が分解してできるケトン体という物質が血中に増え過ぎる危険な状態に陥ったという報告や、死亡率、脳卒中や心筋梗塞などの危険性が高まったという長期の追跡調査もある。

 北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟さんは、1日70~130グラムの緩やかな糖質制限を推奨。「ケトン体の危険性は否定し切れないので、1日50グラム以下の極端な制限はやめたほうがいい。緩やかに行えば健康に心配はないが、血糖値や脂質、尿素窒素などの定期的なチェックは必要」と注意する。腎症を発症している場合は厳禁で、薬物治療を行っている患者は低血糖に陥る危険もある。

 国立国際医療研究センター糖尿病研究連携部長の野田光彦さんは、たんぱく質や脂質を食べる割合が増えるこの療法で長期的に脂質異常症や腎機能の悪化につながる可能性は否定できないと強調。「日本人でも長期的な健康影響を検証する必要がある」と指摘する。

(2012年7月26日 読売新聞)

****** 体重管理グラフ

Graph


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9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
糖質を制限してケトン体が血液中に増えるのは正常... (DR.M)
2012-07-28 17:36:36
釜池先生は2000近い値であったそうですし、私は大体800くらい、江部先生も1000くらいにはなったそうです。肉食を主とした動物の正常値はそんなものです。ライオンやトラは、極端な糖質制限食です。ヒトは消化器構造は、肉食動物です。
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コメントありがとうございます。 (管理人)
2012-07-28 19:42:35
日本糖尿病学会が極端な糖質制限食は危険という正式見解を示し、来年の治療指針改定で極端な糖質制限に歯止めをかけると言明している以上、極端な糖質制限食を自分自身の判断で実践していくのは全く問題ないとは思いますが、これを病院で自分の担当する患者さんには勧めにくい社会状況になってきたと思われます。盲目的に糖質制限食を過信せず、その限界や安全性についても今後十分に検討していく必要があると思います。
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アメリカのジョスリン糖尿病センターも20005年から... (Dr.M)
2012-07-29 15:35:13
それほど危険なレベルとは思えません。http://www.recells.co.jp/message1005-2.html

生命の危険があるというけれどエビデンスは示せていないと思います。現実には今の糖尿病学会の指針通りやっていて、心筋梗塞や脳梗塞で多数の方がなくなっているし、糖尿病とそれによる腎症、透析患者が激増し透析では、腎疾患を超えて半数を占めています。
http://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2012/p12.pdf
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同じく“糖質制限食”と称していても、提唱者によっ... (管理人)
2012-07-29 18:17:15
私自身は糖尿病ではありませんが、ダイエット目的で半年前に糖質制限食を開始しました。最初は極端な糖質制限を行い2カ月間で約10kg減量しました。その後は、リバウンド防止目的で穏やかな糖質制限を続けてます。今のところ体調には特に問題がなく、今後も穏やかな糖質制限食を継続していく予定です。
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いつもブログを拝見しており、どうしても相談した... (なんちゃん)
2012-08-06 15:16:43
7月18日に予定帝王切開で37週6日で出産し、2524gの男の子が産まれました。分娩直後、母体に黄疸症状が出て血液検査をしたところ特に異常はなかったのですが、翌日未明に耐えきれない腹痛があり、CTや血液検査の結果、肝機能障害、血小板減少、腎不全、子宮内出血…などの症状が現れ、放射線科でIVRの処置を受け、輸血と点滴で1週間を過ごし、ようやく歩行できるまでに回復しました。主治医の話では、羊水塞栓、ヘルプ症候群、急性妊娠脂肪肝のいずれかにDICという合併症が起きた状態だと説明されましたが、3つの病態のうちいずれかを断定するには肝生検を受ける必要があるとのことです。ここで相談ですが、回復傾向に向かっている今、止血や再出血のリスクがある検査をわざわざ受ける必要性があるのでしょうか?今後妊娠する予定もないので何度も断っているのですが、今後何かあった時に対処できませんと必ず言ってきます。まだ入院中ですが、普通に生活できるようになり、内科で肝臓エコーを受けたのですが、少し腹水がある程度で肝臓そのものはきれいだし感染症もないと診断され、ビリルビンの数値も4.1でまだ高いが分娩直後に比べるとずいぶん下がってきているし、妊娠性のものであった場合、自然治癒するでしょうと言われました。長文すいませんが、ご意見いただけると助かります。
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HELLP症候群は、溶血、肝酵素上昇、血小板減少を主... (管理人)
2012-08-06 22:29:28
急性妊娠脂肪肝はHELLP症候群の約1/20の発症頻度で、まれな疾患です。急性妊娠脂肪肝の確定診断には肝生検が必要ですが、DICの危険が高い妊婦への肝生検は躊躇されることも多く、また急性妊娠脂肪肝の診断が確定したとしても治療法は急速遂娩(妊娠中断)しかないことから、肝生検実施の正当性に疑問が持たれています。急性妊娠脂肪肝とHELLP症候群とは臨床症状も似ているし、血液検査所見もほとんど同じです。両疾患を臨床的に区別するのは必ずしも容易ではありません。CTや肝エコーでも区別することは難しいです。しかし、両疾患の治療方針は基本的に全く同じですから、両疾患を区別するために、わざわざ肝生検が行われることもほとんどないと思います。両疾患とも、妊娠終了後は急速に症状が改善します。

羊水塞栓症は、分娩中や分娩直後に急激に呼吸困難~呼吸停止をきたし、血圧低下~心停止に陥り、DICがみられ、多くは意識が回復することなく死の転帰をとります。発症後1時間以内に半数が死亡するとも言われてます(母体死亡率は60~80%)。羊水塞栓症の発症頻度は約2~3万(文献により約6~8万)分娩に1例ときわめてまれな疾患です。発症の予測は不可能で、治療法も確立されてないため現在の最新医学をもってしても救命が非常に難しい疾患です。
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丁寧なコメントありがとうございました。 (なんちゃん)
2012-08-07 11:32:10
妊娠の終了とともに症状が改善している中で、両疾患を区別するためにわざわざ肝生検をすすめてくる主治医に不信感が募るばかりです。検査はキッパリと拒否し、退院の手続きを進めたいと思います。
ありがとうございました。
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Unknown (バカな糖質制限)
2013-12-28 23:06:52
人間は完全な炭水化物食性の動物です。

歯の形を見ればバカでもわかることです。

肉食動物たちのそれとは似ても似つきません。

(笑)









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>ライオンやトラは、 (医師(正常な))
2014-06-20 23:03:54
>極端な糖質制限食です。
>ヒトは消化器構造は肉食動物です。

ヒトはライオンやトラではないし
ヒトは肉食動物ではありません。
歯の形を見ればわかると思いますが…。

それでは質問しますが
元来、人類が肉食だったと仮定して
農耕牧畜ができる前の人類は
スーパーマーケットも無いのに
完全肉食として生きていくのに必要な
大量の肉をどうやって手に入れて
いたのでしょうか?

糖質制限健康法はオカルト科学です。

①末期の糖尿病
②命の危険がある超肥満体

この二つに関しての延命方法としては
一時的な効果がありますが

腎不全や骨粗しょう症、精神病など
多くの病気を招きます。

やめた方がいいです。
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