ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

常位胎盤早期剥離による児死亡

2006年09月20日 | 出産・育児

通常、胎盤は児娩出後に自然に子宮から剥がれてきます。ところが、常位胎盤早期剥離という病気では、まだ胎児が子宮の中にいるのに胎盤が子宮から剥がれてしまいます。

胎盤が子宮から剥がれると、胎児への酸素の供給は突然ストップしてしまいます。剥がれる面積が小さいうちは胎児は何とか生きていますが低酸素のため弱ってきます。広い範囲で剥がれると胎児死亡となります。 発症直後に胎児死亡となる例もめずらしくありません。胎盤後血腫のために母体の血液の状態が変化してDICという状態になると、血が止まらなくなり、出血のために母体の生命が奪われることもあります。

常位胎盤早期剥離は全妊娠の0.44~1.33%程度に発症し、母体死亡率は4~10%、児死亡率は30~50%と言われています。自宅で発症した場合や他院からの母体搬送例では、来院時にすでに胎児死亡となっている場合が非常に多いです。

この病気で児が助かるかどうかは全くの偶発性に依存しており、手術の主な目的は母体の救命にあると考えています。

常位胎盤早期剥離がどの妊婦さんにいつ発症するかは全く予測できません。早急に無過失補償制度を整備する必要があると考えられます。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
確かに、早剥の場合は、golden timeは30分で15分以... (befu)
2006-09-20 09:01:31
前立ちの先生の確保、麻酔科医の確保、手術場のセットアップなどなど...そうこうするうちに、この程度の時間は過ぎてしまいそうです。

産科医の先生方の激務に、さらに拍車をかけそうですね。管理人先生もお体に留意しつつ頑張られてください。
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病院側が「○○ちゃんが生まれるまでにおよそ40分の... (やっぱり産科医)
2006-09-21 07:00:09
ただ、やっぱりこれで病院側がお金を払うということになれば、産科医としては堪りませんね・・・。
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20分じゃ、凝固の検査結果も出ないでしょう。燃え... (もういやだ)
2006-09-21 23:36:28
20分じゃ、凝固の検査結果も出ないでしょう。燃え盛るDICでの手術がどんなものか。母体の状態も把握せずに手術しろというのですか。最終的には「胎児より母体優先」が大原則と思っていました。今では違うのですか。「母体だけは」なんとか助けたのに。
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こんな不当な裁判の判決が出る様では、日本で産科... (日本で産科医療は禁忌)
2006-09-22 13:20:27
こんな不当な裁判の判決が出る様では、日本で産科医療をしてはいけません。日本で産科医療は禁忌です。
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