ある産婦人科医のひとりごと

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第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題091~問題100

2007年11月27日 | 婦人科腫瘍

第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題と解答例

【問題091~問題100】

問題091 手術解剖で誤っているのはどれか。
a)仙骨リンパ節は子宮頚癌の所属リンパ節である。
b)子宮底部からのリンパ管は傍大動脈リンパ節に入る。
c)基靱帯の血管部は神経部よりも骨盤底側に存在している。
d)準広汎子宮全摘出術ではリンパ節郭清の有無を問わない。
e)骨盤神経はS2~S4より発する副交感神経である。

問題092 傍大動脈リンパ節郭清の解剖で正しいのはどれか。
a)下大静脈は下行大動脈の左方に位置する。
b)下大静脈の分岐部は下行大動脈の前方(腹側)に位置する。
c)左尿管は下腸間膜動脈の前方(腹側)を走行する。
d)右卵巣静脈は右腎静脈に注ぐ。
e)下腸間膜動脈は下行大動脈の前方(腹側)から発する。

問題093 広汎子宮全摘出術の解剖で正しいのはどれか。
a)膀胱側腔は外腸骨動静脈の内側で基靱帯の足方に位置する。
b)直腸腟靱帯の外側には神経線維は少ない。
c)基靱帯浅層部には神経線維を豊富に含む。
d)膀胱子宮靱帯の前層は神経線維を豊富に含む。
e)直腸側腔は外腸骨動脈の直内側に入って展開する。

問題094 臨床試験について正しいのはどれか。
a)第Ⅰ相試験は前臨床試験である。
b)第Ⅱ相試験は薬剤の至適用量を決定するための試験である。
c)第Ⅲ相試験は薬剤の抗腫瘍効果を評価するための試験である。
d)第Ⅲ相試験は標準的治療法を決定するための試験である。
e)第Ⅲ相試験におけるランダム化は封筒法で行う。

問題095 倫理委員会(IRB)について正しいのはどれか。
(1)IRBは臨床研究の倫理性を審議する。
(2)IRBメンバーは両性で構成されるべきである。
(3)IRBメンバーは医学専門家のみで構成される。
(4)IRBメンバーには一般人を加えない方がよい。
(5)研究施設代表者はIRBの委員長になれない。

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

問題096 臨床試験の実施で正しいのはどれか。
a)承認薬を用いる試験では倫理委員会(IRB)での承認は必要ない。
b)口頭での十分な説明の後、その場で速やかに文書での同意を得る。
c)治療が開始すれば患者の希望によるプロトコール中止はできない。
d)患者の同意、症例登録、治療開始の順番を厳守する。
e)安全性の観点から、治療開始や中止は各医師の裁量で行う。

問題097 臨床試験における同意で正しいのはどれか。
a)臨床試験参加の同意を口頭のみで得た。
b)臨床試験参加の同意文書を家人のみから得た。
c)臨床試験参加の同意文書を本人のみから得た。
d)臨床試験参加登録を行った後に同意を得た。
e)臨床試験参加の同意文書を治療開始後に得た。

問題098 癌化学療法の効果判定基準RECISTで誤っているのはどれか。
a)評価の対象となる病変は測定可能病変のみである。
b)CTやMRIで測定可能病変の最小サイズが定義されている。
c)PRとは病変長径30%以上の縮小が4週間以上のものをいう。
d)PDとは病変長径20%以上の増大をいう。
e)効果を総合的に判断する総合判定基準が設けられている。

問題099 癌化学療法に使用するG-CSF製剤や5-HT3受容体拮抗剤で正しいのはどれか。
a)好中球減少Grade 4が確認されたらG-CSF製剤の投与が必須である。
b)好中球数が5,000/mm3を超えたらG-CSF製剤の投与を中止する。
c)G-CSF製剤や5-HT3受容体拮抗剤は原則的に抗癌剤と同日投与する。
d)有熱性好中球減少症Grade 3では第3世代抗菌剤の投与が必須である。
e)5-HT3受容体拮抗剤は遅発性嘔吐に著効する。

問題100 抗癌剤の毒性が現れやすい臓器・組織で誤っているのはどれか。
a)ドキソルビシン - 心筋
b)エトポシド - 呼吸器
c)イリノテカン - 消化器
d)パクリタクセル - 神経
e)シクロホスファミド - 卵巣

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解答例 (誤答の場合は御指摘ください)

問題091 手術解剖で誤っているのはどれか。
a)仙骨リンパ節は子宮頚癌の所属リンパ節である。
b)子宮底部からのリンパ管は傍大動脈リンパ節に入る。
c)基靱帯の血管部は神経部よりも骨盤底側に存在している。
d)準広汎子宮全摘出術ではリンパ節郭清の有無を問わない。
e)骨盤神経はS2~S4より発する副交感神経である。

解答:c

a)子宮頚癌の所属リンパ節:基靱帯リンパ節、閉鎖リンパ節、外腸骨リンパ節、内腸骨リンパ節、総腸骨リンパ節、仙骨リンパ節

e)下腹神経:T11~L2より発する交感神経。直腸の両側を下降し、仙骨子宮靱帯および直腸腟靱帯の外側を走行し、骨盤神経叢を形成し、さらに膀胱に至り排尿筋を弛緩させる。
 骨盤神経:S2~S4より発する副交感神経。基靱帯の神経部分を構成し、交感神経とともに骨盤神経叢を形成し、排尿筋を収縮させる。

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問題092 傍大動脈リンパ節郭清の解剖で正しいのはどれか。
a)下大静脈は下行大動脈の左方に位置する。
b)下大静脈の分岐部は下行大動脈の前方(腹側)に位置する。
c)左尿管は下腸間膜動脈の前方(腹側)を走行する。
d)右卵巣静脈は右腎静脈に注ぐ。
e)下腸間膜動脈は下行大動脈の前方(腹側)から発する。

解答:e

a)下大静脈は下行大動脈の右方に位置する。

b)下大静脈の分岐部は下行大動脈の後方(背側)に位置する。

c)左尿管は下腸間膜動脈の後方(背側)を走行する。

d)右卵巣静脈は下大静脈に注ぐ。

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問題093 広汎子宮全摘出術の解剖で正しいのはどれか。
a)膀胱側腔は外腸骨動静脈の内側で基靱帯の足方に位置する。
b)直腸腟靱帯の外側には神経線維は少ない。
c)基靱帯浅層部には神経線維を豊富に含む。
d)膀胱子宮靱帯の前層は神経線維を豊富に含む。
e)直腸側腔は外腸骨動脈の直内側に入って展開する。

解答:a

e)直腸側腔は、尿管と内腸骨動脈の間隙を確認し、その間を左右に鈍的に開いて展開する。

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問題094 臨床試験について正しいのはどれか。
a)第Ⅰ相試験は前臨床試験である。
b)第Ⅱ相試験は薬剤の至適用量を決定するための試験である。
c)第Ⅲ相試験は薬剤の抗腫瘍効果を評価するための試験である。
d)第Ⅲ相試験は標準的治療法を決定するための試験である。
e)第Ⅲ相試験におけるランダム化は封筒法で行う。

解答:b

臨床試験:治療効果を評価する目的で人を対象に行う科学的実験。

前臨床試験:動物での安全性や有効性を試す実験。

第Ⅰ相試験(臨床薬理試験):健康な成人ボランティア(通常は男性)に対して開発中の薬剤を投与し、その安全性(人体に副作用は無いか)を中心に、薬剤が体にどのように吸収され排泄されていくかといった「薬物動態」を確認する。

第Ⅱ相試験(探索的試験):比較的少数の患者に対して第Ⅰ相試験で安全性が確認された用量の範囲で薬剤が投与される。その安全性、用法(投与の仕方:投与回数、投与期間、投与間隔など)、用量(最も効果的な投与量)を調べる。第Ⅱ相試験で行われる臨床試験としては、単回投与試験→ パイロット試験→ 用量設定試験→ 長期投与試験が行われます。

用量設定試験:第Ⅱ相試験で行われる臨床試験の試験デザインの1つ。承認申請の効能・効果が期待される適応疾患患者を対象として、主に二重盲検法を用いて、低量・中量・高量の2~3種類の用量の被検薬で、時にはプラセボを対照薬に含め、比較試験を行う。この結果から、被検薬の用法・用量・至適用量幅が設定され、第Ⅲ相試験で検証される。

第Ⅲ相試験(検証試験):従来の治療あるいはプラシーボと新しい治療を比較する。多数の患者を対象に、比較試験(二重盲検試験)で、実際の臨床使用における有効性・安全性を確認する。適応疾患における用法・容量を確認する。

第Ⅳ相試験:市販後調査であり、多くの人々に対し長期副作用、長期効果について検討する。

封筒法:予め組み入れられる群が記入された紙の封筒を決められた順番で破っていく方法。

ランダム化の割付を(センターではなく)各施設で行った場合には、質の高い研究とはみなされません。なぜなら、公正な割付がなされないことが経験的にわかっているからです。治療群と無治療群を比較すると仮定すると、通常医師は治療群に割り当てられることを望みます。また2つの治療法の比較の場合には、通常どちらか自分が優れていると思っている治療法に割り当てられることを望みます。特に重要な患者(有力者や親しい人の紹介患者)、自己主張の強い患者では、優れていると信じている方の治療を割り付けたくなります。このため、封筒法では無治療群に割り当てられた場合にもう一枚封筒を破いたり、勝手に治療群に変更したりということが高い確率で発生します。このため、封筒法を採用して、治療群と無治療群に割り付けると、治療群の患者数が無治療群の患者数よりも多くなります。

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問題095 倫理委員会(IRB)について正しいのはどれか。
(1)IRBは臨床研究の倫理性を審議する。
(2)IRBメンバーは両性で構成されるべきである。
(3)IRBメンバーは医学専門家のみで構成される。
(4)IRBメンバーには一般人を加えない方がよい。
(5)研究施設代表者はIRBの委員長になれない。

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

解答:a

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問題096 臨床試験の実施で正しいのはどれか。
a)承認薬を用いる試験では倫理委員会(IRB)での承認は必要ない。
b)口頭での十分な説明の後、その場で速やかに文書での同意を得る。
c)治療が開始すれば患者の希望によるプロトコール中止はできない。
d)患者の同意、症例登録、治療開始の順番を厳守する。
e)安全性の観点から、治療開始や中止は各医師の裁量で行う。

解答:d

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問題097 臨床試験における同意で正しいのはどれか。
a)臨床試験参加の同意を口頭のみで得た。
b)臨床試験参加の同意文書を家人のみから得た。
c)臨床試験参加の同意文書を本人のみから得た。
d)臨床試験参加登録を行った後に同意を得た。
e)臨床試験参加の同意文書を治療開始後に得た。

解答:c

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問題098 癌化学療法の効果判定基準RECISTで誤っているのはどれか。
a)評価の対象となる病変は測定可能病変のみである。
b)CTやMRIで測定可能病変の最小サイズが定義されている。
c)PRとは病変長径30%以上の縮小が4週間以上のものをいう。
d)PDとは病変長径20%以上の増大をいう。
e)効果を総合的に判断する総合判定基準が設けられている。

解答:a

RECISTガイドラインでは、病変を測定可能な標的病変と腹水や胸水などの非標的病変に分類する。

標的病変の評価(1臓器につき最大5病変、合計10病変までの最長径の和で評価)
完全奏効 CR (complete response):すべての病変の消失が4週間以上。
部分奏効 PR (partial response):ベースライン最長径和と比較して、標的病変の最長径の和が30%以上減少が4週間以上。
進行 PD (progressive disease):治療開始以降に記録された最小の最長径の和と比較して、標的病変の最長径の和が20%以上増加。
安定 SD (stable disease):PRとするには縮小が不十分、かつPDとするには増大が不十分。

非標的病変の評価(測定不要)
完全奏効 CR:すべての非標的病変の消失かつ腫瘍マーカー値の正常化。
不完全奏効/安定 IR/SD (incomplete response/stable disease):1つ以上の非標的病変の残存かつ/または腫瘍マーカーが正常上限値を超える。
進行 PD:既存の非標的病変の明らかな増悪。

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問題099 癌化学療法に使用するG-CSF製剤や5-HT3受容体拮抗剤で正しいのはどれか。
a)好中球減少Grade 4が確認されたらG-CSF製剤の投与が必須である。
b)好中球数が5,000/mm3を超えたらG-CSF製剤の投与を中止する。
c)G-CSF製剤や5-HT3受容体拮抗剤は原則的に抗癌剤と同日投与する。
d)有熱性好中球減少症Grade 3では第3世代抗菌剤の投与が必須である。
e)5-HT3受容体拮抗剤は遅発性嘔吐に著効する。

解答:b

G-CSF製剤の癌化学療法による好中球減少症に対する適応は好中球数が500/μl(白血球数1000/μl)未満の時である。好中球数が5000/μl(白血球数10000/μl)以上で投与中止と規定されている。

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問題100 抗癌剤の毒性が現れやすい臓器・組織で誤っているのはどれか。
a)ドキソルビシン - 心筋
b)エトポシド - 呼吸器
c)イリノテカン - 消化器
d)パクリタクセル - 神経
e)シクロホスファミド - 卵巣

解答:b


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