ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

臨床研修制度の見直しについて

2009年03月15日 | 医療全般

当院では定員を満たした場合、毎年8名の初期研修医(自前6名と大学病院とのたすき掛け2名)が採用されます。1年半の必修研修期間以外に、半年程度の自由選択の研修期間が設けられています。

当院の場合、産婦人科の必修研修期間は9週間と設定されています。今年度は、産婦人科研修をオプションで選択してくれた研修医が2名いましたので、ほぼ年間を通じて常に1~2名の初期研修医が産婦人科で研修してました。来年度も、2年目研修医は計8名の予定なので、ほぼ年間を通じて常に1~2名の初期研修医が産婦人科で研修してくれることになります。

初期研修医といっても、内科、外科、麻酔科、救急、小児科などを一通りローテートしているので、産婦人科に回ってくる頃にはすでにかなりの経験を積んで、非常に頼もしい存在になっています。特に産婦人科入局予定者の場合は、休日や夜間の緊急手術にも、本人の意思でどんどん積極的に参加してくれてます。

2年間の研修期間を終えると、みんな非常にたくましく立派に育っていて、それぞれ希望に胸をふくらませて巣立っていきます。今年度もあと2週間を余すのみとなり、巣立ちの時がだんだん近づいてきました。

現行の臨床研修制度への世間の批判が多いことは承知してますが、研修医自身の現行制度に対する満足度は比較的高いと思われます。今回の臨床研修制度の見直しで、地方の医師不足の問題が解消されるとも思えません。むしろ現行制度の方がいいような気がしています。我々末端の者達には、一体全体、今後どう対応していったらいいのやら、さっぱり見当もつきません。

今回の制度見直しによって、地方の医療現場はむしろ相当混乱する可能性もあります。臨床研修制度を有意義なものにする問題と、地方の医師不足を解消する問題とは、全く切り離して考えるべきだと思います。

臨床研修制度の見直し最終案骨子

新卒医師研修、実質1年に 厚労・文科両省が短縮案

医師の計画配置と公共の福祉

医師のキャリアパスを考える医学生の会
http://students.umin.jp/index.html

臨床研修制度改定における計画配置について

         声明文

                  平成21年2月27日

 昨年9月に設置された森喜朗元総理の自由民主党「医師臨床研修制度を考える会」の提言内容どおり、2月18日に最終回を迎えた「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」に続き、2月26日の医道審議会医師分科会医師臨床研修部会より公表された新臨床研修制度検討にあたってのたたき台の中に、「研修医の地域的な適正配置を誘導するため、人口分布を始め医師養成規模・地理的条件等を考慮した都道府県別、病院別の募集定員の上限を設定する。」というものがあった。これは教育体制の整わない病院にも未熟な医師を強制的に配置し、国民が将来享受する医療の質の低下を招くものであり、「医師のキャリアパスを考える医学生の会」は、絶対にこれを容認できない。

 そもそも医師不足問題と医師の教育は切り離して扱うものであり、臨床研修の目的が「医師としての人格の涵養」、「基本的な診療能力の獲得」であることを見失ってはならない。膨大な医学知識・技術が日々生まれる現在、地域医療の支えとして望まれているのは研修医ではなく、臨床経験豊富な熟練の医師であるのだから、研修医がよい教育を受けることこそ、日本の将来の医療を担う優秀な医師を育てるために必要である。

「研修医はお金をもらって働いている医者なのだから医師偏在問題に貢献すべきだ」(杉野剛医事課長)と、研修医を単純に労働力としてのみ考えている風潮もあるが、卒後数年間にきちんとした指導医のもと充実した教育を受け経験を積むことが、将来優秀な医師となる上で大変重要であるということは、疑う余地が無い。現在の制度下で、公開されている情報を基に医学生が教育環境の整っていると考える病院を選んだ結果、都会・地方にかかわらず教育に力を入れている病院に研修医が集まったのであり、それに国が介入することは、研修医からよい教育を受ける機会を奪うものである。

 「医師のキャリアパスを考える医学生の会」は、都道府県別募集定員の上限設定と病院別募集定員の設定の撤回を要望する。

医師のキャリアパスを考える医学生の会
http://students.umin.jp/index.html