紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

今日は久しぶりにベスト盤ですよ。ベスト・オブ・ファン・モサリーニ~新しいタンゴの世界~

2007-10-18 22:15:28 | ラテン・インストゥルメンタル
クラシックの現代曲が好きな方なら、極度のラテン好きでなくても、その名を聞いた事があるであろう、20世紀最高のタンゴ・コンポーザーにして、バンドネオン奏者と言えば「アストラ・ピアソラ」ですが、今日紹介する、現代タンゴのコンポーザーにして、バンドネオン奏者は「ファン・ホセ・モサリーニ」と言うミュージシャンなんです。

「ピアソラ」程、日本(世界)では、著名ではないが、実はそれに比肩しうるぐらい、ヨーロッパ(フランス)では、良く知られたマエストロ(巨匠)なのです。
演奏技術も本当に素晴らしく、「ピアソラ」と双璧か、実はそれ以上と言っても過言では有りません。

ただ、「ピアソラ」よりも、世間的評価が若干低いのは、「モサリーニ」の奏でる(作る)タンゴの方が、「ピアソラ」の音楽(タンゴ)に対してよりも、少し柔軟な考えを持っており、ネオ・クラシックとも言うべき、現代曲のタンゴ・ミュージックよりも、幾分ポピュラーやジャズよりな曲が多いのが、本格的派の現代タンゴよりも、色眼鏡で見られているからかも知れません。

私にとっては、「ピアソラ」よりも、ジャジーな「モサリーニ」の方が愛聴すべきミュージシャンなんですけどね。
また、1995年に、NHKドラマ「水辺の男」のサウンド・トラックを担当した事があり、多少は聞いた事が有る方が、いるかも知れません。

そう言った訳で、本日は「ファン・ホセ・モサリーニ」の世界へトリップしましょう。

アルバムタイトル…ベスト・オブ・ファン・モサリーニ~新しいタンゴの世界~

パーソネル…1曲目・モサリーニ&アントニオ・アグリ タンゴ五重奏団
      ファン・ホセ・モサリーニ(バンドネオン)
      アントニオ・アグリ(vl)
      オスワルド・カロ(p)
      ロベルト・トルモ(b)
      レオナルド・サンチェス(g)

      2、4、6曲目
      ファン・ホセ・モサリーニ(バンドネオン)
      グスタボ・ベイテルマン(p)
      パトリス・カラティーニ(b)

      5曲目
      ファン・ホセ・モサリーニ(バンドネオン・ソロ)

曲目…1.水辺の男(12:26)
     ①水辺の男Ⅰ
     ②水辺の男Ⅱ
     ③主人公のテーマ
     ④愛のテーマ
     ⑤死のテーマ
   2.ヴィオレント(6:47)
   3.酔いどれたち(5:55)
   4.パロミータ・ブランカ(3:00)
   5.ペドロ・イ・ペドロ(5:37)
   6.ナオミ(8:52)
   7.アレ・エ・ルトゥールⅠ(6:13)
   8.アレ・エ・ルトゥールⅡ(5:10)

原盤…MANNENBERG RECORDS
CD番号…CAC-0018

演奏について…まず、前述の通り、「NHKのドラマ」のサウンド・トラックに使用されたオープニングの組曲「水辺の男」が、流石とも言うべき名曲・名演です。
①水辺の男Ⅰのテーマから、胸が締め付けられる様な、甘く切ない美旋律のメロディが心に残る。
「モサリーニ」のバンドネオン…危険な恋に身を焦がす、危険な炎の様に妖艶です。
②のテーマに移ると、現代タンゴらしい不安げな曲調で展開される。
「モサリーニ」のバンドネオンを取り囲む様に、最も不安なテーマを弾く「アグリ」のヴァイオリンが聴き所。
低音域で曲を推し進める「カロ」の重厚な弾き具合も良いですぞ。
③主人公のテーマは②以上に不安を予期させる。この先にあるのは、やはり悲劇なのか?
僕は彼女の元へは戻れないのか?
④愛のテーマでは、前半はギターの「サンチェス」が主役…これは主人公を待つ恋人の曲なんでしょう。
彼女は、この先にあるのは決して悲劇では無い。…私の愛が、信念が強ければ、何も怖くないし、彼は無事に帰って来る。きっと帰ってくるわ。
後半のピアノのテーマは、主人公が彼女の愛を信じて、無事に帰れると。希望を見出すのだろうか?
⑤死のテーマ…しかし、やはり、貴方は帰って来ないのね…。
あの暗い海の底に沈んでしまったの?この物語は悲劇で幕を閉じた様です。
しかし、悲しくも美しいメロディは感動的な1曲になっています。

2曲目「ヴィオレント」…現代タンゴとジャズの融合がとても新鮮で、驚きの発見が多い曲で、かなり気に入りました。
ギター「カラティーニ」の殴る様な、ラテン・ギター演奏と、これまたアグレッシヴな「モサリーニ」のバンドネオンが、とても緊張感のある名演を作り上げています。
ベースとピアノの重厚な響きが、緊張感の維持に、より一層の効果をもたらしています。

3曲目「酔いどれたち」…ここでは恨み節や泥酔の酔いどれが集まったイメージは無く、とても陽気な酔っ払いたちが集まって、歌でも口ずさんでいるんだろう。
しかし、後半一人の男が…一番の御大(長老)だろうか?
人生のはかなさ、わびしさをヴァイオリンの調べで表現する。
人生とは…男とは…家族とは…生きる事とは…と静かな口調で語り、皆は黙って聞いている。
しみじみと聴かせる演奏です。

4曲目「パロミータ~」は、多分このアルバムで一押しのトラックだろう。
演奏されているのは、実はタンゴでは無く「シャンソン」です。
「モサリーニ」…やはりパリで腕を上げ、認められた男…。
本場シャンソンのテイストを散りばめた、「ネオ・タンゴ」に彼の真髄が見れる。

5曲目「ペドロ~」では、寛ぎと平穏のタンゴが、「モサリーニ」のバンドネオン・ソロで演じられる。
「モサリーニ」は明るめの音色で、前向きな曲調のアドリブ・メロディを弾き、
決して声には出さないが、強い心で希望を持って生き抜こうと決心している。
いつかは幸せに、きっと幸せになれるはず…私はまだまだ頑張らなくては…。

6曲目「ナオミ」…何で日本の女性の名が冠してあるのか?ちと疑問だが…
この曲の肝は、メロディを弓で弾くベースの「カラティーニ」で、これは男なのだろうか?
そうすると、流麗なピアノメロディを紡ぐ「ベイテルマン」がナオミだろう。
そして、この二人の心の揺れを表現するのは…「モサリーニ」のバンドネオン。
男と女(ナオミ)は、この先どうなるの?
私達、分かり合ってたはずなのに…今は貴方が分からない。
どうすれば良いの?別に好きな人が出来たの?知りたいけど、知るのが怖い…。
いや、僕は君を絶対に失いたくないんだ…。
でも、信じてもらえないけど、別の人も好きになってしまった…。
やはり、つらいが君との関係は終わりにしないと…僕はダメな男だね…ナオミ。
やっぱり…そうだったの。分かったわ…さようなら貴方。
そんなダメな男…私からサヨナラしてあげるわ…なんて上手く行くかな?

7曲目「アレ・エ~」、8曲目「アレ・エ~」…7曲目では、ヴァイオリン協奏曲の様な、激しい旋律のテーマと、伴奏なのだが煌びやかなメロディで飾りを付ける「バンドネオン」の見事なコラボレーションが素晴らしい。
8曲目では、ヴァオリンが打って変わり、ピッチカートを利かした不安げな演奏にチェンジする。
温かみの感じられるメジャー・コードと、絶望的なマイナー・コードが、交互に演奏されて、丁半賭博か白黒かの結論を迫られる様な雰囲気の曲です。
しかして、その結論は…最後はまた、ヴァイオリン協奏曲調なのですが、突然切れる様に終わるので…このイプセン的な解釈はどうなるんでしょう?
皆さんの心が決めるんでしょうね。


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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
モサリーニ氏が来日します (小松亮太)
2014-08-30 23:48:04
突然失礼いたします。モサリーニ氏の2014年の来日をお手伝いしています小松亮太と申します。
モサリーニ氏は9月27日から福岡、名古屋、船橋、東京でライヴを行います。ぜひご来場いただければ幸いです。突然のコメント失礼しました。
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