紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

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ライヴ録音のオペラ名盤…アバド指揮/ウィーン・フィル~歌劇「ヴォツェック」

2007-10-14 22:57:37 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
二十世紀オペラの最高峰、「アルバン・ベルク」作曲の歌劇「ヴォツェック」の素晴らしい演奏のアルバムを、今日は紹介しましょう。

「ヴォツェック」とは、まこと愚かな(精神的に弱い)兵士の名前(人)で、悪い医者に実験台まがいの事をされたり、上官と内縁の妻の不倫などでにより、精神的に思い悩んだ挙句、最後には内縁の妻を殺し、自らも気が狂って、池で溺れ死ぬと言う結末、一種排他的なオペラなんです。

しかし、この悲劇は「ベルク」が、キリスト教の「マグダラのマリア」についてのテーゼを追求している事も見逃せません。
また、人間の醜さ、弱さ、いじめ、愛と欲望、嫉妬、等、現代社会の病んでいる様を、20世紀の前半に、早くも抉り取って警鐘としている先見性にも驚くばかりです。
いや、先見性と言うより、「マグダラのマリア」のテーゼからすると、「イエス」の死後から、およそ2000年経った今でも、人間の精神構造の、特に弱い部分と言うのは、殆ど克服されていない、所謂「弱点」として、現代人もいまだ保持している事を改めて追求しているのだと思います。

余り小難しい事を長々述べても、皆様が飽きてしまうと思うので、「ベルク」のこの作品の作曲の意図、(あくまでも私、個人的なの解釈なんですが…)は、これで終わりにします。

さて、このアルバム(名盤)を作った方達ですが、指揮は「クラウディオ・アバド」…現存する指揮者の中では最高のオーソリティです。
受けるオケは、「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」…こちらも世界最高のオーケストラの一つです。

歌手陣について言えば、主役ヴォツェックの「グルントヘーバー」、妻マリーの「ベーレンス」、鼓手長の「ラファイナー」等、オール・キャストがはまり役と言って良いでしょう。

この難解な作品を演じるのには、指揮、オケ、歌手陣共申し分の無いメンバーです。 
難しい作品ですが、是非、皆様に聴いて欲しい(アルバム)です。

アルバムタイトル…歌劇「ヴォツェック」全曲

パーソネル…クラウディオ・アバド(指揮)
      ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
      ヘルムート・フロシャウワー(合唱指揮)
      ウィーン国立歌劇場合唱団 ウィーン少年合唱団
      フランツ・グルントヘーバー(バリトン)…ヴォツェック
      ヴァルター・ラファイナー(テノール)…鼓手長
      フィリップ・ラングリッジ(テノール)…アンドレス
      ハインツ・ツェドニク(テノール)…大尉
      オーゲ・ハウクランド(バス)…医者
      アルフレート・シュラメック(バス)…第一の徒弟職人
      アレクサンダー・マリー(バリトン)…第ニの徒弟職人
      ペーター・イエロジッツ(テノール)…白痴
      ヒルデガルト・ベーレンス(ソプラノ)…マリー
      アンナ・ゴンダ(アルト)…マルグレート
      ヴェルナー・カーメニク(テノール)…兵士

第1幕 第1場…「ゆっくり、ヴォツェック、ゆっくり!」 (8:13)
    第2場…「おい、ここは呪われているぞ」 (6:41)
    第3場…「チンブン、チンブン、聞こえる坊や?」 (8:11)
    第4場…「一体何てことだ、ヴォツェック?」 (7:35)
    第5場…「ちょっと歩いてごらんなさい」 (2:55)

第2幕 第1場…「何て光る石だろう!」 (5:30)
    第2場…「たいそうお急ぎで、どちらへ、棺桶釘先生?」 (8:53)
    第3場…「いらっしゃい、フランツ」 (4:15)
    第4場…「俺はシャツを着ているが、これは俺の物じゃない」(9:41)
    第5場…「ああ!ああ!アンドレス!俺は眠れん」 (4:26)

第3幕 第1場…「しかして、その口に虚偽なかりき」 (2:59)
        「御足許にひざまづき、泣き、御足に接吻し」 (2:03)
    第2場…「左へずうっと行けば町よ」 (4:30)
    第3場…「みんな、踊れ、踊りつづけろ!」 (3:27)
    第4場…「ナイフは?ナイフはどこだ?」 (7:50)
    第5場…「ぐるぐる、ぐるぐる、バラの冠、踊れ!」 (1:40)

1987年6月 ウィーン国立歌劇場にてライヴ録音

原盤…独グラモフォン  販売…ポリドール㈱
CD番号…F64G-20317/8 (2枚組)

演奏について…正直に言って、私は「ヴォツェック」は、このアルバムしか聴いた事が無いんです。

巷では、「カール・ベーム」指揮、ベルリン・ドイツ・オペラ・O、「フィッシャー=ディースカウ」(バリトン)、「ヴンダーリヒ」(テノール)の、夢の組合せ、超名盤が存在するのですが、私は聴いた事が無いんです。

ですから、この盤を他と比べての批評と言うか、感想を書く事は出来ませんので、あくまでもこの盤について、記述して行きます。

一言で言うと、「精緻で非常な緊張感に包まれた演奏」です。

実際は、かなり大編成のオーケストラなんですが、まるで室内楽の如く、締ったタイトな音質で、一糸乱れぬオーケストの統率を、「アバド」が魔法の如くの棒捌きでまとめ上げています。

しかしながら、曲そのものは、非常に緊張感の有る、20世紀クラシック独特のおどろおどろしい曲調で、それを「アバド」が不安感としてを見事に描ききってもいます。

歌唱について言えば、主役ヴォツェックの「グルントヘーバー」は、ノイローゼ男の狂乱ぶりを的確に歌い上げており、マリー役「ベーレンス」の出来も抜群です。

ライヴ録音とは思えぬ程、「完璧」な演奏と歌唱が融合された、この金字塔アルバムは、皆様に絶対にお薦めです。


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