紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

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「コルトレーン」の遺作…「ジョン・コルトレーン」~「エクスプレッション」

2007-11-25 13:43:31 | ジョン・コルトレーン
ハードに真摯に命を削ってサックスを吹き続けた稀代のアーティスト、「ジョン・コルトレーン」の最期の作品…それがこの「エクスプレッション」です。

史上最強のオリジナル・カルテットから、「アリス・コルトレーン」の夫人を含むフリー系のクインテットにチェンジしてから、過激な?演奏内容と長大な演奏時間に変貌して行った「コルトレーン」ですが、ここでの演奏は、正しく悟り、窮め、「グル」になったと言える、静寂の演奏がなされています。

アルバムタイトル…エクスプレッション

パーソネル…リーダー;ジョン・コルトレーン(ts、fl)
      アリス・コルトレーン(p)
      ジミー・ギャリソン(b)
      ラシッド・アリ(ds)
      ファラオ・サンダース(piccolo)

曲目…1.オグンデ、2.トゥ・ビー、3.オファリング、4.エクスプレッション

1967年2月15日、3月7日 録音

原盤…Impulse A-9120  発売…ワーナー・パイオニア
CD番号…32XD-597

演奏について…最も興味深い演奏として、2曲目「トゥ・ビー」の「コルトレーン」のフルート演奏が挙げられよう。
実は、ここで演奏に使われている楽器(フルート)は、無二の親友「エリック・ドルフィー」の遺品なのである。
「ドルフィー」は、このフルートにより、「ラスト・デイト」の「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」での白鳥の歌、絶唱を描ききった(演じきった)が、これは志半ばで命が尽きた「ドルフィー」の無念さが、美しさの中に、介錯された血が、垣間見える様な痛みを伴っている演奏から理解できると思う。
しかし、「コルトレーン」は同じフルート演奏だが、「ドルフィー」の様な、血の匂いがしない。
とてもクリヤーで、無我の境地にいる演奏である。
と言うのも、「コルトレーン」は、遣り残した事が余り無かったからだと思う。
確かに、41歳と言う若さであったが、ジャズと言う音楽形態の中で、死後40年以上経った今でも、未だ誰も到達出来ない高み(極み)へと昇った、稀有のアーティストだけに、彼が存命だったとしても、これ以上にやれた事(演奏)は、もはや殆ど無かったと言っても良いと思うからです。
とにかく、虚飾を廃し、ピュアに音楽(ジャズ)を演じきった演奏は、とめどなく美しいのです。
「サンダース」のピッコロ演奏も、彼に似合わず?静寂の美学伴奏を貫き通しているし、「アリ」の空間的なブラッシュ・ワークも影でいながら、存在感を見せる。
但し、中間で「サンダース」が小鳥が飛翔する様な、自由奔放の見事なカデンツァを奏でています。
「アリス」は「偉人」である夫に対して、恐れを抱かぬのか?唯一自由に、終始アドリブを演奏しているのがアクセントになっている。
いずれにせよ、「コルトレーン」が最終的になろうとしていた、賢者(グル)に近づいた、最も東洋的(インド哲学的)な趣を感じ得る、演奏&曲に仕上がっています。

タイトル曲「エクスプレッション」も、激しさの中に垣間見れる、落ち着きと静寂が、聴いている者を浄化させる。
「アリス」はモードに副って、自由にアドリブを演奏する。
妻で無ければ、出来ないアドリブです。
「ギャリソン」は徹頭徹尾、リズム・キーピングに終始していて、大将を援護射撃している。
終盤では、「コルトレーン」が最後の力を振り絞って、シャウトしまくるのは、大将の務めとして当然なのだろう。
因みに、1曲目以外は「ファラオ」レスなのは、アルバム上、どう言った意図があったのだろうか?
やはり、「トレーン芸術」は、ワンホーン・カルテットが最高のパフォーマンスを形成するのに相応しいと、出た答なのか?

3曲目「オファリング」…このアルバムの中では最もアグレッシブな「コルトレーン」の演奏が見て取れる。
病んでいるとは思えない程、張りのあるトーンで、シーツ・オブサウンドを止め処なく繰り出す。
中間部のカデンツァで、「コルトレーン」とのバトルを受けるのは、タイム感覚が優れた「アリ」で、この二人のデュオは手に汗を握る。
「コルトレーン」は、「アリ」のドラミング・スピードに挑むかの様に、演奏スピードをグングン上げて、シンバルの音が咲き乱れ、テナーの絶叫が乱舞する。
美しく、切ない、そしてとても激しいバトルだ。
最後には、いたたまらなくなったのか、「アリス」がさりげなく助け舟を出す。
これは余計な事なのか?それとも内助の功なのか?

オープニングの1曲目「オグンデ」は、中期の傑作バラードアルバム、「クレッセント」を彷彿させる、抑え目のトーンと紡ぎだす「シーツ・オブ・サウンド」のアドリブが真に美しい、短いが素晴らしい演奏である。
雨だれの様な連弾で旦那をサポートする「アリス」、サポーターとして申し分無い、「アリ」と「ギャリソン」の演奏も良いですね。


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