朝起きて外を確認した時点で予想通り停滞を決定。起きてても寒いので、お茶を飲んでまたシュラフにくるまった。
ずっと寝ているわけにもいかないので、食事を摂ったあと雪洞を掘って遊ぶことにした。軽量化したスコップはとても使いやすい。強度的にも問題ないようだ。雪洞でお茶を飲んだあとはビーコンで遊ぶ。オルトボックス旧タイプ(会長のもの)が一番使いにくいため、これを埋没させて捜索ゲーム。やはりトラッカーがダントツに発見しやすい。ピープスの高いのがとても優れているらしいが、まだ使ったことがない。自分の持っているオルトボックスx1よりもトラッカーの方が使いやすいと思った。とにかく慣れる必要がない。初めて使った人でも確実に使いこなせるところはすばらしいと思う。
夕方リーダーが天気図を取り、強い冬型に変わりがないため翌日撤退を決定。年越しそばを食べたりして、のんびりした大晦日を過ごした。軽くお酒を飲んで、山の話題に盛り上がり、8時くらいにシュラフにもぐり込む。
テントではやはり眠りが浅い。外の声にすぐ目覚める。
「おーい・・・・、おーい・・・・・」
誰かが人を呼ぶ声がする。時計を確認すると0時6分。何事だろうと耳を澄ませていた。
「おーい・・・助けてって声が聞こえたんだよなぁー。おーい・・・」
「そうか?・・・・・・おっ、聞こえた!おーい!!」
「おーい!・・・・・おーい!・・・・・」
その声に緊張感が走ったtが、雪洞で人が埋まったのかなぁなんて考えていた。
「雪崩だっ!埋まっているぞっ!」
飛び起きた!急いでアウターを着込み、靴を履く。インナーの手袋の片方が見つからない。1枚を借りて急いで準備をする。
「すいませーん、出来たら救助活動に手を貸してくださーい!」
外から声がした。
「今すぐ行きまーす!」と声を掛けて、テントを飛び出す。まだ外は吹雪いている。
二次遭難に備えビーコンを身につけ(持っただけでスイッチを入れるのを忘れる)スコップを手に救助の現場へと向かう。自分達のテン場から20mほど離れた、新館の南側だ。すでに十数人の人間がスコップを振り回し、救助活動を初めていた。こんな場所で雪崩に埋まるなんてっ!と信じられない気持ちだったが、自分は南側のテントの救助に向かった。約1.2mくらい掘られ、一人の年輩の人が顔を出していた。となりにもう一人いるようで、必死に雪を掘る。
半分くらい体が見えるほど掘って、3人で引っ張り出そうとしても抜けない。8割方掘ってやっと引っ張りだせた。平らなところへ引き上げ、心肺蘇生を始める。人工呼吸用の補助具は持っていたが、テントに戻ることなど考えられる状態ではない。一刻を争っているのだ(ニュースによると雪崩発生は23時30分頃だったらしい。この時すでに40分~50分ほど経過しており、すでに難しい状態だった)。最初に人工呼吸を始めた人はすぐに気分が悪くなって続けられなくなり、変わって自分が行う。酒の臭いか胃酸が逆流しているからか、かなり臭う。自分も吐き気を抑え、必死に息を送り込んだ。20分くらい続けただろうか、誰かが声を掛けてきた。「もう1時です。救助活動から1時間以上経過しており、2時遭難の危険もありますから・・・・・・」。ここで残念ながら諦める事にした。
この時は夢中で気が付かなかったのだが、埋まった人は7人で、そのうち3人の人(1人は自力脱出)が助かったらしい。それだけが救いだった。意識のない4人を避難小屋まで運びあげ、装備を確認し、それぞれのテントへ戻った。
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