SpiMelo! -Mie Ogura-Ourkouzounov

L’artiste d’origine Japonaise qui mélange tout sans apriori

「卵」のオーケストラ

2022-06-19 10:31:00 | Essay-コラム

今年のパリ市立19区ジャック・イベール音楽院、即興アトリエのファイナルコンサートは、カリブの大フルート奏者、マックス・シラさんがゲストで来てくれたこともあってか、音楽院の発表会的コンサート、という次元を軽く超えたすごいコンサートになってしまった。



こんなコンサート、プロのコンサートでもなかなかお目にかかれないぞ!


(フランスでは、良くも悪くもプロとアマの間にはレッキとした線引きがあるのだ。そんな壁を若い彼らは超えてしまった)





聴きに来ていたうちの相方アタも、「あんたたちのやってることときたら、こりゃあパリ高等音楽院率0%だわ、すごいぜ!」だって。これは不自然なアカデミスムや偽善を超えていた、という彼独特の最大の賛辞である。


私がかれこれ18年前に作ったこの即興アトリエというのが、試験で落ちこぼれた子、すごい才能のある子、問題児、全てありだし、年齢も楽器も様々、しかも生徒だけじゃなくて他の先生たちも参加、受付や事務の人まで乱入する、やる気さえあれば入るのも、また出ていくのも自由(これ大事)、前代未聞、スパイラル的なアトリエなのである。





村上春樹氏の言う、壁と卵という言葉があるが、このアトリエはまさしくひとりひとりが何より大切で、壁を寄せつけない「卵」のためのオーケストラ。


そこには私の音楽的、社会的、教育的な理想のあいだの境界線もない。


今回はいつもの相棒、サックスのアルノーとパーカッションのクリストフ以外に、新任のハープの先生と、音楽院の小学校向けの事業を担当している事務の人がエレクトリックベースで参加。




このコンサートの録画は、アンティーユ音楽の存続に関わる歴史的な記録となった(マックスさんの奥様談ので、覚悟しとけよー、君たち今後有名人やで?!少なくとも海外県では()と生徒たちに言っておきました。




数日後マックスさんに電話すると、奥様と一緒に笑いながら楽しそうに先日のヴィデオを鑑賞していらっしゃるところだった。


マックスさんの奥様、ブリジットさんは、


「あの « ロシェルの住民 » の時ねぇ、私もうマックスが吹いているのか誰が吹いているのか、何がどうなっているのかもう、分からなかったわよ笑。」


私にとっては彼女の言ったことこそ最高の賛辞。作曲者、アレンジャー、指揮者、ソロイストとかいう役割もそこでは境界線が消滅し、ただ渾然一体となっている。皆が音楽をただやって感じていて、ひとかけらのエゴもそこにはない。


また、私はこの曲がメロディーやハーモニー、エフェクトの渾然一体として壁のないところが好きだったから、その感じを表現するためにアレンジをしたいと心から思ったのだけれど、この日の演奏ではまさしく最初にピンと来たこの音楽の性質が、とてもよく伝わってくる。


一体何回アレンジを練り直したことか。


小節を数えるとフィーリングがなくなるので、各自にソロ譜に自分のパートを書き込んでもらった。


しまいには、当日来られなくなったハープの先生の代わりにシンセを取り入れたり、フルートのエフェクトも生徒たちやマックスさんの意見で何度も変容した。最終的に小節を場所を決めてエフェクトは各自がを感じた通りインプロヴィゼーションで入れることにした。何故かというと、やはりこれは全員がメロディーを全ての瞬間で感じながら即興演奏しないと、楽譜を読んでその通り演奏するだけでは何か作った感じになってしまうからだ。


こういうのって、どこかマイルス・デイヴィスがやっていた作曲法に似ている。


そういう生きた作曲では、時間のない忙しい現代によくあるように、12回合わせて、出来たような気分になることは不可能だ。


そういうインスタントで便利な方法から得られるのは興奮と熱狂だけであり、本当の音楽はそれとは別のもっと透明な次元にある、、、


大いなる静けさのなかで。では、マックスさんが「興奮や熱狂だけでカリブ音楽をやってはいけない」という旨のことを話していたと書いたけれど、このカリブ音楽でなくともそうであろう真理を、しっかりとした美しい結果を持って知らしめられた。


それを同じ経験を持って、一番大切な生徒たち、同僚たち、家族たちと共有出来たこと。こんな素晴らしいことがあるだろうか。





偉大で静かなるもの。ただ「自分が動く」ことを超えてそこに到達すること。



この学びを持って迎える次回のコンサートは7月4日、なんと「らるちぇにっつぁトリオ」の3月以来の再会、再演で、ブルガリア🇧🇬はプレーヴェンフェスにて、最終日を盛り上げます💪😆

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