SpiMelo! -Mie Ogura-Ourkouzounov

L’artiste d’origine Japonaise qui mélange tout sans apriori

Belonging~野性

2014-12-09 14:26:02 | Essay-コラム

Un album que j'adore...Keith Jarrett avec son européen quartet"Belonging"
西の横綱のことばかりを話して、東の横綱のことを話さないわけにはいきませぬ。。。
ということで、今回はまたまたキース ジャレットのお話。(前にもコラムで彼のソロコンサートのことを書きましたがhttp://blog.goo.ne.jp/cieuxstage/e/faa3b1b234e7eb775132fee9f71221cd
もちろんソロの完全インプロコンサートやスタンダーズトリオは有名ですが、今回は私の好きなアルバム「belonging」のことを。
ジャケもめちゃくちゃいい
キースのヨーロピアンカルテットと呼ばれる、北欧の3人のミュージシャンとやっていたときのものです。
またまた外耳炎で一日寝込んでいるので、エンドレスでこれを聴いているのですが(またしてもヒマにまかせてブログ更新
今教えている音楽院のインプロのアトリエで、このアルバムのなかの「The windup」という曲をやっているのですが、大変に面白い!
冒頭のとてもノリやすく親しみやすいグルーヴ、続くとても複雑でめまぐるしくリズムの変わるテーマ、そしてまったくフリーのインプロ。。。とこの3つの対比が生み出す効果が素晴らしいコンポジションです。もう何度も何度も何度も聴いても飽きない。。。!!
じつはキースの曲はチックの曲より苦しんで考え抜かれて書かれていることが多いので、自分が作曲する時にインスピレーションになるのはこちらのほうだったりして。
逆に、キースの自由即興は天才的すぎて、チックのやつのほうが参考になったりとか。
いやいや、そうとうも簡単には言えないか。。。。でもジャズにおける作曲と即興の関係って、私は大好きです。
だって、クラシックの現代音楽だと、作曲者と演奏者ってぱきっと別れて分業制になってしまっていること、多いでしょう。
私にとっては、演奏と作曲、即興の関係はアイマイなほど面白い
線引きはしなければしないほど、野性の音楽に近い。。。というか。

キースジャレット著の「Inner views」のなかでCDと同タイトルの「belonging」という章があり、これは英語の辞書でひくと「属する」とかそういう意味なのですが、キースの本では「野性」=「獰猛な欲望」と訳されている。彼によると、「獰猛な欲望」とは動物のお母さんが子供を守るような欲望、要するに「こうしたい、ああしたい」という煩悩の人間的欲望とは全く別のものを指しています。

きっとこのアルバム「belonging」には彼のその意図が込められているのでしょう。
本当に、聴けば聴くほど、内容が深い。
冒頭曲「spiral danse」は時空に刻み込むかのような強烈なメロディー。
シンプルな、ひとつのメロディーで独り言で問いかけるようなタイトル曲「belonging」。
「blossom」では彼独特の、めちゃくちゃロマンティックなメロディーが聴ける。最後のほうのピアノの高音域での透明感といったらもう。。。これは世界中で彼にしか出せない
終曲「soltice」の最後、気難しい、もつれたメロディーラインを経たあとの雨上がりのような美しいVampに乗ったインプロ。。。とても短い場面だけど、本当に本当に美しい、心がぎゅっと掴まれる瞬間である。

このアルバム全曲に貫かれる溢れ出すようなメロディー感は、(とくにヤン ガルバレクがメロディーを吹くときの伴奏に回ったキースを聴いてみてください!)オーネット コールマンにとても影響を受けたらしいけれど、彼によるとメロディーとは「流れだす水」のようなものだということ。水を組み合わせることができないように、メロディーをパズルのように組み立てることは不可能と彼は言っている。メロディーを噴出するにまかせ、空に解き放つ。。。書いた物も、即興したものも全部。。。実にこのアルバムの背後にある哲学のような気がしてならない。なんて美しいコンセプトでしょう!!赤ちゃんの成長みてると、まっさきに覚えるのはメロディーだもんね。。。やっぱり音楽とはメロディーだわ