無知の涙

おじさんの独り言

ある午後の妄想

2008年10月07日 | 日常

子供の頃から1999年に世界が滅亡する---
そう思って生きてきた。

悔いのないように、好きなように生きていこう。
それが17歳の誕生日に立てた誓いだった。

その翌日に僕は高校を辞め、そのまま家を出た。
1999年までの3年間、僕は自由に生きるのだと。


だが、世界は滅亡しなかった。


1999年の夏-
僕はまるで祈るような気持ちで空を眺め続けた。


雨以外は何も降ってきやしなかった。


夏が終わり、僕は2週間あまり下痢になった。
絶対に精神的なものだ、と僕は思った。

家もない、金もない、仕事もない、家族もいない。
思えばこの3年間なにをしていたのだろう。
僕はそう考え、恐ろしくなって首をぶるぶると振った。

なぜ世界は滅亡してくれなかったのだろう。
そう思うと空き缶を握り締めながら涙が出た。

ノストラダムスを殺してやる!
と思った。

僕は急いで本屋に行き、ノストラダムスの住所を調べてみた。
ノストラダムスは既に死んでいた。


世界は滅亡しないし、
そう言った奴は既に死んでるし、
滅亡したのは僕自身だけであった。

収まらない怒りがこみ上げてきたが、
どうする事もできなかった。


滅亡しない以上は、生きてゆくしかない。
僕は3年ぶりに実家へ帰った。


妹にまでグーで殴られると思わなかったが、
なんとか家族と和解できた。

だが、親父は一つだけ条件を出してきた。
それは高校へ復学することだった。

そうして僕は20歳にして、高校2年生になった。
まわりのみんなは17歳だ。

お兄さん的な存在になってやろうと思ったが、
思いのほか僕の存在は拒絶された。

影でトリプルというアダ名までついた。

いちばん悔しかったのは、
ダブリの奴まで僕のことをトリプルと呼んでいたことだ。

ある日、僕に聞こえるように「トリプル!!」と言った奴がいた。

「そんな、サーティーワンのアイスじゃあるまいし!」
と僕は切り替えしてみた。

誰も笑わなかった。

ものすごい早さで僕は孤立していった。
だが一人ぼっちには慣れているのだ。

何もない日々。
単調で平坦。

そうして半年が過ぎる頃、ようやく僕にも一人友達ができた。

僕はそいつと色々な話をした。
これまでの経緯を僕は話した。

次の日には学校中に話が広まっていた。

僕のアダ名がダムスに変わった。



つづく??
いや、終わり。