歴史模擬授業第26回です。大正時代の最後、文化です。
(詳細は、12月23日の記事①をご覧ください)
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「さて、期間は短かったけど内容が濃かった大正時代も今回で終わります。
今回は、大正時代の文化です。」
「はい。」
「大正時代の文化を持って、文化史はほぼ終わりです。」
「そうなんだ。」
「もちろん、昭和時代以降も文化の歴史というものはありますが、ほとんど習いません。
昭和の文学などは国語では習いますが、社会では文化史は大正まで覚えておけば、ほぼオッケーです。」
「はい。そう考えると、なんとなーくなごりおしいな。」
「ではでは、最後の文化史にいきますね。
大正時代ってさ、どんな時代だった?」
「第一次世界大戦で、世界全体が戦争にまきこまれた。」
「ロシアで社会主義革命がおこった。」
「そのあとで、世界で初の平和を守る国際機関である国際連盟ができた。」
「そうだったね。よくおぼえているね。では国内は?」
「大正デモクラシーという民主主義の風潮が高まって、普通選挙まで行われるようになった。」
「大正デモクラシーでは、労働者や農民(おもに小作人)や女性・の人々など、
当時、不当な条件で働かされたり、差別を受けていた人々が真の「自由」と「平等」を
求めて、がんばったんだよね。」
「そうそう。そのような大正デモクラシーの風潮は文学の世界にまで影響していくんだよね。」
「文化は世相を映す鏡だもんね。」
「労働運動がさかんになっていた時代だから、労働者の生活をリアルに描いた文学もさかんになる。
そのような文学をプロレタリア文学と言います。プロレタリアとは労働者、という意味です。
(プロレタリアの正式な訳は無産階級)
プロレタリア文学の作者で有名なのは、小林多喜二(こばやしたきじ)。
彼は、団結して立ち上がっていく労働者と雇い主との戦いを描いた『蟹工船(かにこうせん)』を書きます。」
「そうだったんだ。おそらく今まで、数多くいる労働者という立場で描く作品ってほとんどなかったんだよね?
つまり、それだけ大正時代には労働者たちが強くなってきたんだね。」
「そういうことね。運動を起こすってことは、ある程度、力がないとできないからね・・。
もし力がなかったら、
個人の反乱程度で終わってしまって、運動にまでは発展しないはず・・。」
「たしかに・・。」
「あとは、明治時代の小説では、どのように社会の貢献すべきか、仕事をどのようにしていくべきか、
という悩みを中心に描く作品が多かったのに対し、
大正時代の小説では、仕事というより私生活を基にしたそれぞれの人間の生き方を追求していく作品が多い。
その中に、人間の生き方を厳しく追及し、人間の気がつかない生き方の矛盾や
エゴイズムを描いた芥川龍之介(芥川竜之介)がいます。
芥川龍之介の代表作は『羅生門』です。
この『羅生門』は高校に入学してすぐ習う学校が多い。でも、すっごくすっごく難しい!
内容自体も難しいうえに、主題がかぎりなく難しい!私も読んだんだけど、高校では全然わからなくて
芥川の何が良いんだろう・・と思っていたんだけど、大人になってもう一度読み直したら、
すっごく同感でき、芥川は天才だ!と感動しました。
今まで、いろんな人物の小説を読んできましたが、芥川ほど天才だ!と私が思う人はいません
(あくまで、私が思う、ですよ。)」
「そんなにすごい作品なんだ・・。」
「うん。ただ、子どものうちは芥川の良さはなかなかわからないと思う。
だから、芥川の作品が読めるようになったら、大人になったと思ってもよいでしょう。」
「はい!」
「あと、人間はみな「平等」である、愛で言いかえるなら「人類愛」を考える白樺派(しらかばは)という
文学の派閥の1つができます。
白樺派の有名な作者は、
武者小路実篤(むしゃのこうじさねあつ)、志賀直哉(しがなおや)、有島武郎(ありしまたけお)です。
武者小路実篤は人間の生命の力を信じ、人情あつく、理想を追求しました。
彼の有名な作品に「友情」「その妹」などがあります。
また、志賀直哉は、(簡単にいえば)人類愛を描いた「暗夜行路(あんやこうろ)」などを書きます。
そのほかにも生命について考えさせる「城の崎にて」なども有名。
志賀直哉は、高校の国語の時間に習うことが多いです。
教科書によって「暗夜行路」の一部だったり、「城の崎にて」だったりの違いはあるけど。」
「はい。また高校での楽しみが増えたのだ。」
「あとは、生活について。大正時代には、第一次世界大戦で日本は好景気になったね。
また、どんどん工業化が進み、都市での人口も増えてきました。そうすると、多くの人を
一度に運べるよう、交通機関も発達するよね。バスや、タクシー、地下鉄などができます。」
「え?もう地下鉄もできたんだ!」
「服も明治時代にはドレスや背広とかの動きににく洋服はあったけど私生活では着物だったのが、
洋服が主流になって、私生活でも気軽に着れる洋服も普及するようになってきました。
洋食も増えたのよ。」
「ほえー、どんどん今みたいになってくるんだね。」
「あと、電話・バス・水道もできた。また明治時代のガス灯にかわり、大正時代には電灯になります。」
「おお!」
「あと、新聞や雑誌、映画(当時は活動写真と呼ばれた)も普及して、人々が自分の意見を出す機会が
増えてきます。
また、一番入試に出やすいのは、1925年にラジオ放送が始まったことです。
よく、正誤問題で、「大正時代にテレビ放送が始まった、○か×か」みたいな問題がでるんだけど、
大正時代にはまだテレビはなく、ラジオのみなのでご注意を。」
「ほえー。」
「ラジオだと、一気に全国の人々に情報が即座に伝わるし、文字が読めない人でも情報が得られるのは
大きいよね。」
「新聞や雑誌・ラジオ放送などが、
大正デモクラシーでのさまざま運動をおこしやすい背景にもなったのかもね♪
人々の意見を発信するのに便利なツールだもの。」
「そういう風に予想することは良い傾向だよ。以上が大正時代の文化です。」
「すくなっ!」
「少ないです。
しかも、入試で出るのは、おそらく、芥川龍之介、志賀直哉、小林多喜二という作者名、
白樺派、プロレタリア文学、ラジオ放送ぐらいかな?」
「そうなんだ。」
「でも、だからと言って、その作品や作者が世の中で重要ではないという意味ではないので、
しっかり理解して覚えましょうね。」
「はい!」
「ではでは、これにて大正時代は終わります。次回は、長くて暗い昭和時代を行います。
起立、礼!」
「ありがとうございました。」
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わかりやすく解説していので、「こういう説もある!」という専門的なことを
引き合いに出されてもお答えできないことがあるかもしれません。申し訳ありません。
不快な気持ちになった方には申し訳ありません。