「最初に取り上げるマイルスが doo-bop とは、ひねくれ者め!」といわれそうだが、これは文句なしの愛聴盤なのだから仕方ない。
私はチャーリー・パーカーと一緒に演奏していた頃のマイルスから、エレクトリック・マイルスといわれた後期まで、みんなそれなりに好きだ。
何だかんだいってもモダンジャズの中心には常にマイルスがいた。否、現代音楽の中心だったといっても過言ではない。そんな語られ尽くした彼の功績を今更私が話しても仕方ないが、ヒップホップまで取り入れたこの「doo-bop」は、晩年にも係わらず彼の千里眼に衰えのないことを改めて感じさせた。
50年代後半、マイルスは当時新人だったビル・エヴァンスを自分のグループに招き入れた。エヴァンスは白人だから周りの非難(人種差別)は相当ひどかったらしい。そんな周りに向かってマイルスは「腕のいいヤツならオレは緑色の肌をしているヤツとだって組むさ」ときっぱりいい放ったという。
常に新しい音楽シーンをつくってきた彼は、人種や世代、ジャンルを超えた才能との協働がいかに大切かを知っていたのだ。
見習うべきこと多し。