SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

HARRY EDISON 「SWEETS」

2010年02月11日 | Trumpet/Cornett

一言でいってしまえば、「いい気分」にさせてくれるアルバム。
なぜなら全体を通して穏やかな春風を感じるからである。
これは1956年の録音盤だが音もいい。
ジョー・モンドラゴンのベースが、単調ながらブンブンと強力なリズムを弾き出している。
そのリズムに乗って、ハリー・エディスンのトランペットやバーニー・ケッセルのギターは言うに及ばず、ベン・ウェブスターのテナーまでがふわふわと空中を漂っている感じなのである。

そういえばこのアルバムは、ベン・ウェブスターの名演でも有名だ。
彼はリーダーになるとアクが強すぎて、時に敬遠したくなることも多いプレイヤーだが、脇役として参加するとものすごく感動的な演奏をする時がある。
ここでの彼がその典型だ。
彼はカンザスシティ・スタイルをベースに、まるで口笛を吹くかのような軽やかさでさらりと歌い上げる。
もっとソロをとる時間が長ければよかったのに、という人も多いようだが、私は彼の出番はこれくらいの長さがちょうどいいと思っている。
主役はあくまでハリー・エディスンなのだ、というベンの思いやりが感じられるからだ。

それにしてもタイトルにもなっている「スイーツ(ハリー・エディスンの愛称)」とは言い得て妙だ。
この愛称はレスター・ヤング大統領が命名したと聞くが、これだけミュートが甘く優しい音色を奏でるなんてちょっと意外な気もしてくる。
なにせミュートといえば、真っ先に思い出すのがマイルスである。
あの暗く寂しいハードボイルドタッチがミュートの良さなのだと長く思い続けてきた。
しかしハリー・エディスンのミュートは、もっとコミカルでクスクス笑っているように聞こえる。
この取っつきやすさ、親しみやすさが彼の魅力なのだ。
もっともっと多くの人に聴いてもらいたい名盤だと思う。
このライトグリーンのジャケットを壁に立て掛けて聴いていると、なおさら「いい気分」になってくるからお試しあれ。


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