SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

TRIO ACOUSTIC 「AUTUMN LEAVES」

2007年10月27日 | Piano/keyboard

この季節になると無性に聴きたくなる曲がある。
「枯葉」だ。何のひねりもなく当たり前すぎる話だが、それだけ名曲だということだ。
誰の演奏を聴いても、このメロディが流れると晩秋の寂しさが滲み出てきて切なくなる。これは曲そのものが持つ力だと思う。
希に曲のイメージを180°変えて演奏するジャズメンもいるにはいるが、大体において失敗している。やはり曲の力をうまく利用して演奏するに限るのだ。
この枯葉という曲、もともとはイヴ・モンタンがヒットさせたシャンソンだが、アメリカにおいてはビング・クロスビーやフランク・シナトラ、ナット・キング・コールらが歌い出しポピュラーな曲になった。
ジャズにおいては、やはりマイルスがキャノンボール・アダレイのブルーノート盤「サムシン・エルス」で演奏したものが決定的だった。ここでのマイルスの演奏が、この曲の力を最もうまく利用した好例ではないかと思っている。
この他にもビル・エヴァンスの「ポートレイト・イン・ジャズ」におけるピアノ演奏や、オスカー・ピーターソンとステファン・グラッペリの演奏などが永遠の名演奏として残っているが、おそらくジャズメンであれば、一度は演奏したことがあるはずの超スタンダードである。いうなればこの曲をどのように料理するかが、一流のジャズメンになれるかどうかの試金石になっているのだ。

で、このトリオ・アコースティックというハンガリーのグループだが、ここではダイナミックな枯葉が聴ける。
メンバーはゾルタン・オラー(p)、ピーター・オラー(b)の兄弟に、若いエミール・イェリネク(ds)とゲオルギー・イェセンスキー(ds)が加わった新進気鋭のトリオである。
とにかく演奏、録音共にものすごい迫力があり驚く。特にベースはゴロンゴロンいいながらスピーカーから飛び出してきそうな勢いがある。この艶めかしい音をどのくらいのボリュームで聴くか、そんなことまで神経を使わなければいけないアルバムなのだ。
ジャケットもなかなか大胆不敵。ありそうでなかったデザインに仕上がっている。
惜しむらくはグループ名がトリオ・アコースティックという何とも平凡で俗っぽい名前であることだ。