このユセフ・ラティーフの作品を難しく解釈し始めたらきりがない。
これを聴いた多くのジャズメンが東洋音楽に興味を持ったらしい。コルトレーンがその代表格のようだ。
しかし私はジャズメンではないので東洋音楽がどうのこうのといった話はどうでもいい。要するに聴いてみて感動するかしないかだ。
1曲目の「Plum Blossom」、ポコポコいうオリエンタルな打楽器のリズムに乗って、怪しげな木管楽器?の演奏が始まる。この最初の曲がアルバム全体のイメージを決定づけている。初めて聴いたときは正直面食らってしまったが、最近はちょっと快感に変わってきた。但しバリー・ハリスのピアノソロがなかったらこれをジャズとはいえないのではないかと思う。もちろん、この曲が最初にあるからこそフツーじゃないと感じるわけで、それがラティーフの狙いだとしたら作戦は見事に当たっていることにはなるのだが....。
本当のジャズは2曲目以降に始まる。
2曲目はオーボエによるブルース。ラティーフの演奏もさることながら、彼を支えるピアノ、ベース、ドラムスのトリオがすばらしく、それだけでも一聴の価値がある。
3曲目に入ってラティーフは初めてテナーを披露する。
確かにこの演奏を聴けば納得だ。コルトレーンはラティーフによく似ていることがわかっておもしろい。
自信溢れる吹奏は続く4曲目のバラードにも現れているが、この優雅さはコルトレーンにない懐の深さを感じる。
しかし何といってもこのアルバムのハイライトは5曲目の「Love Theme from "Spartacus"」だ。
この一曲でこのアルバムは名盤化したといっていい。彼の吹くオーボエは哀愁を帯びたバリー・ハリスの弾くメロディに乗って、はるか高い空に舞い上がるのだ。
とにかくラティーフのものすごい風格を感じる作品だ。
一歩間違えば陳腐で観念的な作品になりかねないテーマだが、彼は自然体でこのテーマと向き合っている。
様々な楽器がそれそれの曲で生かされているような気もする。
またルディ・ヴァン・ゲルダーによるリマスターはとてつもない迫力を生み出しておりオーディオ的にも大満足だ。
誰でも充分に感動できる名作だと思う。