実に伸びやかなトランペットだ。
これこそ23才で亡くなったブッカー・リトルその人の吹奏だ。
25才で亡くなったクリフォード・ブラウン、26才で亡くなったファッツ・ナヴァロ、44才で亡くなったリー・モーガンよりさらに若く旅立ったことになる。なぜ天才トランペッターはこうも早死にする人が多いのだろうか。
因みにここで共演しているスコット・ラファロも25才で亡くなった天才ベーシストだ。
このアルバムは夭逝した二人の天才が残した貴重な録音なのである。
リトルのトランペットは、まるで空に向かって声高らかに歌い上げるような響きである反面、ラファロのベースは勢いよく地を駈けるようなリズムを刻んでいる。このコントラストが実にスリリングであり、若々しさがみなぎっている。
この二人にウィントン・ケリー、トミー・フラナガンといった人気ピアニストが絡む。
ケリーのピアノは、彼独特の飛び跳ねるタッチによって二人の気持ちをさらに高揚させる効果がある。逆にフラナガンがピアノを弾くと、緊張感が解きほぐされ二人とも冷静さを取り戻す。どちらも甲乙つけがたいバッキングで、この聞き分けもリスナーの醍醐味の一つである。ロイ・ヘインズの安定感あるドラムスもいい。
曲は最後の「Who Can I Turn On」を除いてどれもブッカー・リトルの作である。
どれもこれもメロディアスでわかりやすい旋律を持った佳曲であるが、感動的とも思える彼のダイナミックな吹奏によって、全ての曲が大きなスケールを感じさせる。
これぞジャズトランペット、これぞジャズベース、といったベストの音がここに収録されている。
返す返すも惜しい人材を亡くしたものだ。