SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

JACKY TERRASSON 「JACKY TERRASSON」

2007年10月08日 | Piano/keyboard

一言でいえば歯切れのいいピアノトリオだ。
最近のジャッキー・テラソンはもはや中堅の域に達してきたが、このアルバムの発表時はまだまだ期待の大型新人だった。
彼の父親がフランス人だったこともあり、彼はパリを本拠地として活動してきた。私も彼を最初に知ったのはバルネ・ウィランの「パリス・ムード」での演奏を聴いてからである。
そのパーカッシブなピアノはデビュー当時から個性的だったし、そこにはインテリジェンスな風格さえ感じられた。
しかし何といっても決定的だったのはこのアルバムの衝撃である。
何がすごいか、それはドラマチックなアレンジが独特な世界を創っているからなのだ。
その極めつけは1曲目の「I Love Paris」と5曲目の「Bye Bye Blackbird」。
因みに「Bye Bye Blackbird」のアレンジはというと、ウゴンナ・オケグウォのウォーキング・ベースがまず最初に飛び出し、テラソンの自由奔放なピアノをコントロールするところから始まる。するとレオン・パーカーのシンバルがそれに釣られるように出てきてリズムを作り出し、三位一体となった正統派トリオの演奏になる。しかしそれもつかの間、パーカーのシンバルは次第にスピードを上げ全体をアップテンポにリードし始めると、テラソンの指はまるで水を得た魚のように鍵盤の上を泳ぎ回る。それが頂点に達すると元のスピードにスローダウンして静かに幕を閉じるといった具合だ。
これだけ大きなスケールでアレンジされたら、さぞかし疲れる作品ではないかと思われるかもしれない。しかしそれ以外の曲、例えば7曲目の「I Fall in Love Too Easily」での静けさや、続く「Time After Time」での洗練されたムードを聴けば誰でも彼の実力を感じるはずだ。彼は単なる見せかけだけのピアニストでないことがここでも証明されている。

ジャッキー・テラソンにはブラッド・メルドーにも共通する不思議な魅力がある。高い技術力に裏打ちされたある種の緊張感がそれかもしれない。
但しメルドーはニューヨークが似合い、テラソンはパリが似合う。この違いは大きい。