ビッグバンドに関してはシロウトに近い。
このデューク・エリントンにしろカウント・ベイシーにしろ、それほど多くのレコードは持っていない。
モダンジャズばかり聴いていたので、なかなかこうしたビッグバンドジャズを聴く機会がなかったのだ。
私はレスター・ヤングにしろジョニー・ホッジスにしろ、スモールコンボでその存在を知ったので、彼らがいかにビッグバンドの看板スターだったかなどは知るよしもなかった。ましてや彼らの全盛期の録音は古く、さぞかしひどい音ではないかという印象があって、それも敬遠する要因の一つであった。
しかし、しかしである。
このアルバムは新生エリントン楽団入魂の一枚、しかもステレオ録音ときた。
収録されている曲もベストオブベストといえる内容で、私のようなエリントン初心者にはもってこいだ。
最初に針を落としてまたまたびっくり。
「Take the "A" Train」の前半はエリントンによるピアノトリオではないか。しばらく聴き入った後、絶妙なタイミングで楽団のアンサンブルがなだれ込んでくる。この演出は涙ものだ。本物とはこういうものかと思わずにはいられなかった。
続く「 I Got It Bad (And That Ain't Good) 」は私の大好きなジョニー・ホッジスが、まるで一人舞台のように大きくフューチャーされていく。この粘り気ある艶っぽいアルト、これでますますホッジスファンになっていったのだ。
しかし何といっても圧巻なのは「Black and Tan Fantasy」。ミュートをかけたトランペットとトロンボーンによる怪しげな吹奏とスマートなクラリネットの対比が面白い。エリントンのピアノも実にブルージーだ。
若い頃の私と同じようにビッグバンドジャズに偏見を持っている方にぜひ聴いてほしい。
少なくとも私はこのアルバムで心を入れ替えた。
スティーヴィー・ワンダーの曲に「Sir Duke」という有名な歌があるが、私もようやくスティーヴィーと同じ心境になれたのが嬉しかった。