SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

ERNIE HENRY 「SEVEN STANDARDS AND A BLUES」

2007年10月21日 | Alto Saxophone

やや鼻づまりのようなアルト。
音のタイプでいえばジャッキー・マクリーンに近いかもしれないが、アーニー・ヘンリーの方が先輩である。しかし彼の名がマクリーンのように一般に広く浸透しなかったのは、彼があまりに早く亡くなったためだ。そのために彼のリーダーアルバムは驚くほど少ない。確か3枚だけだったと思う。
この作品は彼が自動車事故で亡くなる直前に吹き込まれたもので、それだけでも感慨深いものがある。

私が彼の名を知ったのはセロニアス・モンクの傑作「Brilliant Corners」での演奏を聴いたときだ。
そう聞けば「ああ、あのアルト奏者か」と思い当たる人も多いのではないかと思う。
「Brilliant Corners」では当時絶頂期だったロリンズもさることながら、アーニー・ヘンリーの存在が大きかった。
彼はモンク独特の音世界を見事に表現していた。
普通のジャズメンなら投げ出してしまいそうな難解なテーマも場面展開も、彼は平然とこなして見せた。ここが彼の真骨頂なのである。
今にしてみれば彼のことをエリック・ドルフィーに近いフリージャズの先駆けにように捉える人もいるようだが、彼のリーダーアルバムを聴くと必ずしもそうした前衛的な演奏を好んでする人ではなかったように思う。
要するに彼には柔軟性があったのだ。環境に合わせて変幻自在になれる人で、郷にいれば郷に従うタイプだったのではないだろうか。
彼が長生きしていたら一体どんなジャズメンになったか、全くもって皆目見当もつかない。

この作品での曲は全部いいが、特にといわれれば3曲目「I've Got The World On A String」が好きだ。
この曲はリタ・ライスの歌などでも知られているが、この明るさ、優しさ、明快さに心惹かれる。ウィントン・ケリーのピアノともピタリと合っている。
ここではアルト・サックスの良さが充分に味わえる。ぜひ聴いていただきたい。