SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

PAT MARTINO 「Footprints」

2007年10月01日 | Guiter

予想外のアルバムだ。
ばりばり弾きまくるパット・マルティーノもいいがこのくらい内向的な作品に愛着を感じる。
「What Are You Doing the Rest of Your Life?」「How Insensitive」「Alone Together」を聴くと、彼の胸の内がかいま見えるようで共感できるのだ。
特に「What Are You Doing the Rest of Your Life?」という曲の演奏はすばらしい。
この曲の耽美なイメージを作ったのは、ビル・エヴァンスとこのパット・マルティーノだと思っている。最近ではヘルゲ・リエン・トリオがデビューアルバムで取り上げ、ますますその深遠さを増しているが、考えてみればこれほどまでに哀しみに満ちた曲もない。同じような感覚を持つ曲といえば、同じビル・エヴァンスで有名な「You Must Believe In Spring」くらいのものだ。

ジャズで取り上げる曲は人によって様々な解釈がなされることが多く、もともとは明るく楽しい曲が一転して暗いイメージになったり、またその正反対のことが起きたりする。そうしたところがジャズの面白さであり醍醐味でもあるのだが、この曲に関してはなかなかそうはいかないようだ。主題がもともとシリアスで、そうした変化を受け付けない何かがあるのだと思う。
その原因は曲のタイトルかもしれない。
「What Are You Doing the Rest of Your Life?」は邦題でよく「これからの人生」と訳されているケースが多いが、この訳し方はまるでダメだ。曲の奥深い美しさが全く表現されていない。まるでこの曲を明るく演奏したかのようにみじめな有様だ。これだから日本語訳は嫌いなのだ。
英語ができるとかできないとかの問題ではない。要するに言葉から受けるイメージ感覚が大切なのだと思っている。
少しくらい間違っていたっていい。このパット・マルティーノに気持ちの上で同化すれば自ずと感動が得られるはずなのだ。
それが曲の正しい解釈である。