これも長年の愛聴盤、全くもって文句のつけようがない作品だ。
ジェリー・マリガンは「ミーツ~」と銘打った作品をいくつか残している。モンクやゲッツなどとのセッションは有名だが、このジョニー・ホッジスとの競演作は特別だ。何せ自分が憧れた大先輩との共演だから気合いの入れようが違うのだ。
ジョニー・ホッジスは言うまでもなくデューク・エリントン楽団の花形スターである。彼のアルトはあのチャーリー・パーカーも脱帽したくらいにそれ以後のサックスプレイヤーに大きな影響を与え続けた。
彼のアルトはその楽器の特性を超えて人間の身体の一部としての機能を持っていた。つまり彼のアルトはホッジスの人間性までも映し出す鏡のような存在だった。正しく彼の分身だといってもいい。
2曲目の「What's the Rush」でのホッジスを聴いてほしい。私の言っていることが決して大袈裟なことではないということがわかるはずだ。身体の底から絞り出すようなやるせなさが深い感動を呼ぶ。これは誰にも真似できない芸当だ。
このアルバムには決定的な魅力がもう一つある。
とにかく音がメチャクチャいいのだ。これが本当に50年代の録音かと思えるくらいだが、私の数あるアルバムコレクションの中でも10本の指に入る録音の傑作だといっていい。
ホッジスのアルトやマリガンのバリトンは色艶抜群だし、クロード・ウィリアムソンが弾く転がるピアノの高音域もきれいに録れている。またバディ・クラークのベースのゴリゴリ感も、メル・ルイスのシンバルワークも実に迫力があって嬉しくなる。
聴いていてこんなに快感を得られるアルバムも少ない。
やっぱりこれは名盤中の名盤だ。一人でも多くの人に聴いてもらいたい。