この哀愁感をどう説明したらいいのだろう。
1曲目から死にそうだ。さわるとすぐにでも壊れてしまいそうな儚さが見事に表現されている。
私はジーン・ディノヴィが大好きだ。なぜこんなにすばらしいピアニストがこれまでマイナーな存在であったか不思議なくらいである。
彼はチャーリー・パーカーとも共演した経験を持つ大ベテランだ。
ペギー・リーの傑作「SEA SHELLS」にも参加しているから、よくよく探してみれば若いときの彼ともあちこちで出会えるかもしれない。
しかしトラサルディのロゴが入った白いシャツを几帳面に着こなし、ピアノの前で優しくほほえむこの老人を見るにつけ、彼の場合は今が絶頂期であることを感じさせる。
彼の音楽を聴いていると、決して若い人には出せない音があることに気づくのである。そう、彼には他の人にはない薫り高き品格があるのだ。ここが彼の最大の魅力である。
この作品はマシュマロというレーベルから出ている。
ここからはジーン・ディノヴィの他にもヤン・ラングレンやカーステン・ダールなど、今をときめく人たちが数多く発売されている。上不三雄さんというオーナーに感謝したい気持ちでいっぱいだ。
ジーン・ディノヴィは、このアルバムの他にも「GOLDEN EARRINGS」がすばらしい出来だった。
まだ聴いたことのない人はぜひにといいたい。こういうのを格調高い作品というのだと思う。
日本人の感性にも合っている。名盤だ。