SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

ANN BURTON 「BLUE BURTON」

2007年08月09日 | Vocal

5曲目の「IT'S EASY TO REMEMBER」、6曲目の「YOU'VE CHANGED」、この2曲が愛聴曲である。
他の曲が決して悪いわけではないが、私にとってこのアルバムはこの2曲が全てなのだ。
「IT'S EASY TO REMEMBER」ではベースが主軸のスローナンバー。
これまで多くのジャズマンに愛され演奏され続けてきたこの曲は、ここに一つの頂点があるといえる。この曲はさらりと歌うことがコツであり、粘っこく引きずっては台無しだ。多くの場合、感情過多になりすぎて失敗するケースが多い中、アン・バートンは何のためらいもなくサビの部分までさらりと歌いきる。この清涼感がたまらなくいい。
「YOU'VE CHANGED」では、ドラムスのブラシが全体のムードメーカーだ。
いかにも涼しげな彼女の歌声とルイス・ヴァン・ダイクのピアノに、ピエト・ノールディクのハスキーなアルトが優しく絡んでいく。この絶妙な取り合わせがこのアルバムのハイライトになっている。

ヴォーカルはバッキングの善し悪しで決まるというが、これは正にその典型だ。
とにかくルイス・ヴァン・ダイク・トリオが見事なのだ。
このアルバムを聴くとおそらく10人に9人までが彼らのピアノトリオアルバムを聴きたいと思うようになる。
ルイス・ヴァン・ダイクはブルージーな感性の持ち主だが、彼のピアノの響き方が実にいい。ツボを押さえたように、ここぞというところで、これしかないというような音を出す。
またジャック・スコルズのベースもジョン・エンゲルスのドラムスも、しっかり自己主張をしながら自分の役目を果たしている。録音がいいからそういう風に聞こえるのかもしれないが、どうやらそれだけではなさそうだ。

私にとってオランダという国はピュアなイメージがある国だ。
それは多分にピム・ヤコブス・トリオとこのルイス・ヴァン・ダイク・トリオのせいである。